航空機の運用

はじめに

上の写真は、上越新幹線の通称『ダイヤグラム』と言われている発着ダイヤを表すグラフです。このグラフで新幹線全便の一日の運航状況が全て読み取れます
因みに、縦軸は停車駅、横軸は時刻を表しています。斜めの線が列車の進行を表し、この線の上に書かれている『1301C』などの番号がその列車に付けられたいわば「便名」に相当することになります。その列車の駅間の隙間がやや不揃いなのは、駅間の平均速度を勘案して駅間の斜めの線の傾きがある程度揃うように工夫してあるようです
停車する駅ではこの斜めの線が少しズレていますが、このズレがその駅の停車時間に相当します(恐らく上越新幹線では途中駅での停車時間は1~2分、終点の新潟駅での折り返し東京行き出発までの時間は15分程度に設定されていると思われます)
列車の乗務員、駅員、全体のスケジュールを調整している担当者などはこの『ダイヤグラム』で仕事をしていると言っても過言ではないと思います。例えば、どこかの駅でトラブルによる遅延が発生した場合、この『ダイヤグラム』を見て後続の列車をどこの駅で停車させればいいか直ぐに分かります。勿論、復旧する場合も同様に、各列車の運休計画、遅延時間も迅速に判断が可能です。いわばプロ仕様のダイヤと言えるかもしれません。参考までに、興味のある方は、最も過密なダイヤで運行しているJR東海道新幹線ダイヤグラム_2015年ダイヤ改正をご覧になってみてください。プロの凄さ!が理解できると思います

エアラインビジネスにおける各航空機の運用も、基本的には列車やバスなどの陸上輸送や、船舶による海上輸送と全く同じです。航空機の運用のプロも、お客様が日頃見慣れている発着ダイヤではなく、こうした『ダイヤグラム』をもとに仕事をしていると言っても過言ではありません

エアラインビジネスの場合、航空機の購入価格が桁違いに高額である為、航空機の稼働を極限まで高めないとビジネスとして成立しないことになります。因みに、日本航空が最近デリバリーを受けたエアバス製のA350XWBという航空機のカタログ価格は、シリーズによって違いはありおますが、約3億ドル(日本円で約325億円:108円/USD)⇒ 機体の償却費だけで1日約1千万円弱を見込まなければならないことになります。また、鉄道の場合、駅のホームは鉄道会社が所有しているのが普通であるのに対し、エアラインが使用する空港や空港内のターミナルは、通常エアラインとは別の事業体(国の所有を含む)が所有しており、エアラインが自由に使えるものではありません
従って、以下の様な各種の制約条件を如何に上手に?クリアーし、航空機の運用を効率的行うことが、エアラインビジネスの『肝』になると言えると思います

航空機の運用に係る各種制約条件

1.使用する空港の制約
発着枠:空港の滑走路の数、管制官の人数、空域の制約(近傍の空港が使用する空域の制約、軍の訓練空域の制約)などにより、空港ごとに最大の発着回数が決められています。混雑空港については各エアライン間で公平さが要求されるために必ずしも要求通りの発着枠を取得できるとは限りません。お客様の利便性を考慮し、既に運航している定期便の発着枠の既得権は原則守られますが、1990年代に政策的に規制緩和が行われた時代には、新規航空会社の参入を進めるために、新規枠の配分を新規参入エアラインに優先的に配布されました。尚、規制緩和にについて詳しく知りたい方は(航空規制緩和の歴史)をご覧ください。また最近話題になっている羽田空港の発着枠の政策的な方向性について詳しいことを知りたい方は(羽田空港発着枠の検討課題と現状_国土交通省)をご覧ください。尚、発着が特定の時間帯に集中しない様に1時間あたり、場合によっては3時間当たりの最大の発着回数にも制限が加えられることもあります

羽田空港_夜間
羽田空港_夜間

② 運用時間帯:日本では、地方空港は概ね夜間は使用できません。また主要空港である成田空港、大阪国際空港(伊丹空港)では周辺住民の騒音対策として夜間の発着が禁止されています(日本の各空港の運用時間帯の情報については国交通省の(空港情報一覧)をご覧ください
駐機スポット:航空機を駐機させるにはかなり広い面積が必要であり、ランプエリアを十分に確保できない空港は、駐機スポットの数の制約から他に乗り入れているエアラインとの発着時刻の調整が必要になることがあります
④ CIQ:国際線を運航する場合は、空港に於いて税関Customs/財務省管轄)、出入国管理Immigration/法務省管轄)、検疫Quarantine/人間の検疫は厚生労働省管轄;動植物の検疫は農林水産省管轄)を行う必要があります。管轄する部署の配置人員が十分に確保できない場合、遅延が発生する可能性があります(繁忙期における臨時便の運航、など)

出入国管理
出入国管理

セキュリティー管理:空港ターミナルの「制限区域」に入る場合は危険物の持ち込みを排除する為のチェックが義務付けられています。日本にあっては、この要員の確保に係るコストは、空港に乗り入れているエアライン間でシェアすることになっています

上記③~⑤の制限によって、空港への乗入れに際し時間帯の制約を受ける可能性があります

2.航空機の地上停留中の作業に係る制約
① 機内清掃とシートポケット内容物の補充する作業:航空機がスポットに入ったあと、お客様が降機を終わってから作業を開始し、次の出発便のお客様が乗機を始める迄に作業を終わらなくてはなりません

Cabine Cleaning
Cabin Cleaning

② ケータリング作業(飲食材料の補充):飛行中にお客様に提供される飲み物や食事を搭載します。国内線にあっては飲み物を中心とする補充で済みますが、15時間程度の飛行時間となる長距離路線を運航する場合には、各種飲み物の他に、メインとなる食事2食分と朝食などの軽食を搭載することとなり、かなりの量になります(⇒機内のスペースの確保⇒旅客席数の減)

Catering・Cargo Handoling
Catering・Cargo Handling

③ 貨物の取り卸し・搭載作業:現在エアラインで使われている大型の航空機には相当量の貨物搭載が可能であるため、お客様の手荷物以外にも多くの郵便物や貨物が搭載されており、発着毎にこれらの貨物の取り卸し・搭載作業が行われています

④ 燃料の補給:出発前に目的地到着までに必要となる燃料を補給します。この燃料には目的地までに消費する燃料以外に、もしもの場合(悪天候や航空機のトラブルなど)に備えて目的地ごとに指定される代替空港までの飛行に必要な燃料(場合によっては出発空港に戻るまでの燃料)、その他の予備燃料(空港混雑により待機する場合など)が含まれます

Fueling
Fueling

⑤ トイレの汚物回収、洗浄水の補充:この目的のための特殊車両で行います
⑥ 飲料水の補充:この目的のための特殊車両で行います

Lavatory Service ・Water Service Car
Lavatory Service Car・Water Service Car

⑦ 整備作業:航空機の運用に際し、航空法に基づき整備作業を実施する必要があります。(詳しくは(整備プログラム)をご覧になってください
毎日運航している航空機に対して行う整備作業(航空業界内では運航整備作業/Line Maintenanceと呼んでいます)の具体的な内容や必要人員数については、到着便作業・配置人員出発便作業・配置人員折返し便作業・配置人員をご覧になってイメージアップしてください(実際の作業時間、配置人員については必ずしも正確ではありません)

Line Maintenance
Line Maintenance

これらの作業以外に、定期的に行う整備作業とその機会に行う改修作業があります。これらは、夜間に長時間(5~10時間程度)駐機する機会に実施する作業(通常数百飛行時間ごとに計画的に設定)と、航空機を1週間から1ヵ月程度駐機させて格納庫内で大人数をかけて行う作業があります(詳しくは整備プログラムをご覧になってください)。私の経験ですが、これらの格納庫内で行う大きな整備作業・改修作業は、1機について年間平均18日程度引当ておくことが必要となります。これは即ち、20機保有しているエアラインは、そのうち1機相当分はこうした大きな整備作業・改修作業(航空業界内では重整備作業/Heavy Maintenanceと呼んでいます)を行っていることとなり、実際に毎日稼働できる航空機は平均して19機になることを意味します。こうした大きな整備作業・改修作業に引き当てる予備の航空機を保有していない場合、作業に必要な日数分 定期便を運休する必要が発生します

Heavy Maintenance
Heavy Maintenance

⑧ パイロットの業務:出発前に航空機を地上から点検すること(Walk_around Check)、操縦室内でチェックリストに基づいて計器や各種操縦に必要な機能が正常であることを確認すること、整備士から整備作業に係る報告を受けること、などの業務を行います

パイロットの飛行前の準備作業
パイロットの飛行前の準備作業

⑨ CA(客室乗務員)の業務:お客様が乗機する前に客室内の飛行前点検、機内の収納エリアに危険物が隠されていないかなどのチェックなどを行います
⑩ ランプ・コーディネイターの業務:地上に居て到着・出発作業に携わる人達の作業の進捗管理を行います(必要により出発遅延の決定も行う)。作業が順調に進めば出発5分前という情報を関係者全員に周知することなどを行います

上述の、航空機の到着から出発に至る迄の各担当部門が行う作業の相関関係を図示したものが「標準作業工程表」と言い、ここで示された地上停留時間は航空機の運用を行う際の最小限の地上停留時間DGT/Standard Ground Timeといいます)となります(これより短い折り返し便の設定は特別の場合以外は行いません)。以下は国内線の標準的なケースです(エアラインや航空機の型式によって異なることが普通です)

航空機の到着・出発における標準作業工程表
航空機の到着・出発における標準作業工程表(国内線)

尚、国際線については、①~⑨の業務量が増加するため、一般にもう少し長い停留時間が必要となります

3.航空機の型式、客室仕様
航空機を路線に投入する場合、まずその航空機の航続性能がその路線の飛行距離より長い事が必要です。また競合する他社との競争上の観点から、その路線の旅客需要に見合った客席数(First Class、Executive Class、Premium Economy Class、Economy Class)であることと併せ、旅客サービスの為の飲食類が提供できる客室内の装備が必要となります。
① 航空機の航続性能と最大離陸重量
航空機の航続性能は、航空機の空気力学的な抵抗(一般に新しい型式の航空機ほど性能が良い)、エンジンの燃費性能、燃料の搭載量、などによって決まります。また、長距離路線は飛行時間は長いものの着陸回数はそれほど多くはないのに対し、短距離路線は逆に飛行時間は短いものの、発着回数が多くなります
航空機の用途によって要求される性能を実現するには、航空機の設計の段階で取り入れなければ実現することはできません。要求される設計基準について詳しいことを知りたい方は(3_耐空証明制度・型式証明制度の概要)をご覧になってください。参考の為に、現在日本航空で保有している機種の中で、長距離国際線の路線と国内路線の両方に使用されているボーイング社製の777という機種の性能の違いを日本航空のサイトにある情報を拝借してみました;

777・長距離型と短距離型の比較
777・長距離型と短距離型の比較

上記の二機種は、777という型式名から想像できるように航空機の基本構造は変わりませんが、長距離用と短距離用という用途の違いから相応の設計の違いが見て取れます;

777-300ER(長距離型) 777-300(短距離型)

* 最大離陸重量 : 340.2 ton          237.0 ton
* 航続距離   : 14,340 km           3,550 km
* 機体の長さ/幅:    73.9m/64.8m         73.9m/60.9m

上表から分かる通り、長距離型は航続距離を延ばすために燃料を多く搭載できるように最大離陸重量がかなり大きくなっています。また幅が大きいということは、翼が長くなっている為ですが、これは長距離を効率的に飛行する際の空気抵抗を減らすためです。また、短距離型については上表の数字からは分かりませんが、離着陸回数が多くなることから、頻繁に使う主脚(Landing Gear)や高揚力装置(Flapなど)が強化されています

航空機が運用される時に徴収される着陸料、及び航空路を飛行する際に徴収される航行援助施設料、駐機料などは、一般にこの最大離陸重量を基に計算されます(⇔ 運航コストに大きな影響があります)。これは日本の高速道路料金がその建設費や車体の重量によって道路の傷み具合が違うことから決められている理屈と同じですね!

尚、着陸料の計算式については、最大離陸重量の他に、空港周辺の騒音を低減させる為に機種別にICAO基準に基づいて測定された離陸測定点と着陸進入測定点での騒音値をもとに高騒音機(古い機種)程付加料金が高くなる体系になっています。また離島の空港、あるいは利用状況が芳しくない空港で路線開設、増便を促すためのインセンティブとして着陸料の割引を行うことも行っています。現在の着陸料などの状況については、国土交通省が発行している(着陸料等告示_AIP)をご覧になってみてください

昨今オリンピックに向けての増枠で話題となっている羽田空港の着陸料、及びあまり馴染みのない航行援助施設利用料の設定については、国土交通省が一元的に行っていますので、同省の政策的な方向性について興味のある方は以下の資料をご覧になってください;
羽田空港の着陸料:羽田空港発着枠の検討課題と現状
航行援助施設利用料:今後の航行援助施設利用料のあり方_国土交通省

② 客室仕様
客席と旅客サービスに必要となる装備は「客室仕様」と呼んでいます。長距離型の客室仕様の場合、席数を減らして飲食物提供に必要なスペースを設けるため、座席数がかなり減ってしまいます。777の長距離型と短距離型の客室仕様の違いを日本航空のサイトからコピーしたものが下図です。長距離型は、飲食物の収納、飲食物提供の準備作業のための大きなスペース(Galleyと呼んでいます)が設けられていることが分かります;

777・長距離型と短距離型の座席配置の比較
777・長距離型と短距離型の客室仕様の比較

席数については、以下の様に大きな違いがあります;
777-300ER(長距離型):244席(First Class/8席、Executive Class/49席、Premium Economy Class/40隻、Economy Class/147席)
777-300(短距離型):500席(J  Class/78席、Economy Class/500席)

以上より、長距離国際線用の航空機を国内線に使用することはコスト面からも収入面からも適切でないことが分かります

航空機の稼働を上げるには?

1.「標準作業工程表」を変更し、DGTを短縮する
国土がそれほど広くない日本にあっては、国内線の飛行時間は数十分から4時間未満と考えてよいと思います。また、国内の地方空港の大半は夜間の発着ができないことがあり一日の稼働可能時間はせいぜい8時~22時の14時間程度しか期待できません。こうした状況で稼働を上げるにはDGTを短縮するしか方法はありません
DGTを短縮するには「標準作業工程表」の各部門の作業時間を短縮する(あるいは省略する)こと、作業の重なりを許すこと、などが考えられます。このための具体的な工夫の例は以下の通りです;
「機内清掃とシートポケット内容物の補充」作業を、お客様が降機するペースに合わせ、後部担当のCA(客室乗務員)に担当してもらう(機内清掃は粗ゴミ拾い程度 ⇒ 旅客サービス水準の低下!)
「燃料の補給」作業をお客様が降機中から始める(⇔ 火災発生時に備え、CAのDoor side配置が必要になります)

<具体的な事例>
* 米国で数百機のB737を運航しているサウスウェスト航空ではDGT15分を実現しています。ただ、実際のスポット周辺でのサービス状況の観察、サウスウェスト航空担当者のインタビュー等を通じてわかったことは、日本とは違い米国では飛行ルートの選択に係るパイロットの自由度が高く、遅延した場合でも飛行ルートを変えて飛行時間を短縮することが可能な場合があること、また到着・出発に係る地上作業者がマルチタスク(色々な作業ができる)に対応し、かつ動線が短い(駐機スポットの直ぐ傍で待機している)こと、更に数百機の保有機が全てB737シリーズで全ての作業者が作業を熟知しておりミスが少ないこと、などがこの様な短いDGTで運用できている背景にあると思われます

* 1996年、B737-400を使ってJAL100%子会社のLCC(JAL Express)を立ち上げたとき、JALで使われていたDGT35分を10分間短縮して25分でダイヤを組みました。特に遅延が目立ったということはありませんでした

*正確な時期は覚えていませんが1990年代、、タイのLCCが運航するバンコック=チェンマイ間の路線を視察する機会がありました。1機を使ったシャトル運航でしたが、早朝から満席に近い運航を繰り返して(予約上の確認のみ)おり、私が搭乗した最終便は2時間以上の遅延で運航されていました。安い運賃であった為か、あるいは定時性にはあまりセンシティブでない国民性の故か、待たされている満員の旅客は全く平静であったことが印象的でした

2.航空機の運用の仕方に着目した稼働の向上策
国内線については夜間帯は空港の制約から概ねどこかの空港に駐機しています。一方、国際線については、主としてお客様の利便性(目的地に到着してからすぐにビジネスや観光ができること、あるいは外国空港での乗継が便利であること、など)を優先したダイヤが作られるために昼間帯に空きが発生することがあります。以下はこうした航空機が使われない空きを使って稼働を上げることができる例です;

日本航空の羽田発着のサンフランシスコ線のJL002便は、出発時刻は19時50分、サンフランシスコ到着は現地時間13時10分になります。その後2時間40分サンフランシスコ空港に駐機して、帰りのJL001便は現地時間15時50分にサンフランシスコを出発し、翌日の19時に羽田に到着いたします。つまりサンフランシスコを往復するのに足掛け2日かかります(飛行時間は20時間30分)。従って、このサンフランシスコ線を毎日飛ばすためには航空機が2機必要になります。一方、この路線引き当ての2機の航空機のうち1機は、毎日朝から19時50分まではこの航空機には空き発生しています。この空きを使って羽田=上海線(JL81便/羽田発09時20分⇒JL82便/羽田到着16時45分:往復飛行時間は6時間)を運航させることができます。サンフランシスコ線だけを2機で運航した場合、航空機1機・1日当たりの稼働時間は10時間15分にとどまりますが、これに上海線を組み合わせることによって13時間15分に向上させることが可能となります( ⇒ 更に上海線引き当ての航空機はいらなくなります)
ただ、注意しなければならないことは、客室仕様は、当然基幹路線であるサンフランシスコ線が優先されますので4クラス仕様、一方上海線(通常2クラス(Executive Class、Economy Classで販売している)は販売可能な客席数が少なくなります。また最大離陸重量が大きいので着陸料、航行援助施設利用料が高くなりコスト面でもややマイナスになります

航空機の稼働向上策
航空機の稼働向上策

羽田に駐機する国内線は、地方空港の運用時間帯の制約で、概ね22時頃までに到着しています。翌日の羽田出発便も地方空港の運用時間帯の制約、お客様の利便性の関係で8時過ぎまで空いている航空機もあります。私が航空機運用の担当だった時代、この空きを使って国内線機材によるグアム線(往復飛行時間:7時間30分)の運航を行っていました。この夜行便の対象は学生さんなど若い人が往復とも機中泊とすることで滞在費を節約できるメリットがあり、結構利用されていました
ただ、注意しなければならないことは、客室仕様の他に、国内で使われる航空機の燃油費には燃料税(26円/1リットル;沖縄、離島路線などでは減額されています)が掛かっているのに対し、国際線で使われる航空機の燃料は無税となっております(ICAO CHAPTER 4:詳しくは条約・航空協定の歴史参照)ので、この燃料の課税処理の為に税関当局の承認が必要となることです

3.整備作業実施に係る航空機の稼働向上策
整備作業については、「2.航空機の地上停留中の作業に係る制約;⑦ 整備作業」で述べた様に、発着に係る整備作業以外に「定期的に行う整備作業とその機会に行う改修作業」があります。定期的に行う整備作業とは、一定の飛行時間や飛行サイクル(発着回数)、経過日数によって実施が義務付けられている個々の作業(「整備要目」といいます)を実施しやすさを考えてまとめたもの(⇔整備要目の集合)を意味しますが、これを「整備パッケージ」と呼んでいます(詳しくは4_整備プログラムをご覧ください)。整備パッケージと整備要目との関係についてイメージしていただくには下記の表が分かり易いと思います;

整備要目と整備パッケージの関係
整備要目と整備パッケージの関係

上表で「C整備」と呼ばれている整備パッケージは作業量が非常に大きい整備パッケージで格納庫内で1週間から2週間かけて行うことが普通です(4から5年に一度計画される大きな改修を実施するための整備パッケージは1ヶ月位の期間が必要です)。「A整備」やそれより短い間隔で行われる整備パッケージは、通常数時間から15時間くらいの短い停留時間で実施されることを想定しています。つまり、航空の稼働を下げることなく、定期便が到着して次の出発までに作業を終えるのが原則です
① A整備を実施するための航空機の運用
A整備は定期便の間の夜間の駐機中に行うと言っても、抱き合わせに行われる改修作業や、検査中に発見されたトラブルを処理するためにある程度余裕を持った停留時間を予め確保しておく必要も発生します。この場合、「A整備を予定している航空機については、早めに到着する便を割当て、翌日の出発便についても、できる限り遅く出発する便を割り当てることなどが考えられます
以下の図は、とある航空会社の過去のダイアグラムから作成した「機材パターン」と呼ばれるものです。整備を主に行う空港(整備基地とも呼びます;下図の各行の下の線が羽田駐機を表します)で整備計画を立てるときに使われるものです(CASE_Aの場合は8時間50分、CASE_Bの場合は15時間50分の整備機会が確保できることが分かります);

整備機会の検証
整備機会の検証

尚、「A整備」の実施時期は、前回「A整備」からの累積飛行時間が実施期限(整備パッケージの表の場合、仮に500飛行時間にしています)を超えることは航空法上許されませんが、余りに余裕をもって計画すると、A整備の実施回数が増えることとなり、できるだけ実施期限近くで実施することが整備コストの面で有利になります。因みに[実際に「A整備」を実施した時の累積飛行時間]÷[実施期限]を「Check in Rate」と言います。例えば400飛行時間で「A整備」を実施したとすれば、この時ので「Check in Rate」は0.8となります(←航空機の運用を行っているプロから見れば「計画が甘い!」と言われるかもしれません!)

尚、運航している航空機に大きな故障が発生した場合、考え方は「A整備」の実施体制と同じと考えてよいと思います。大きな故障と言えばエンジン・トラブルが代表的ですが、この場合も「A整備」との違いは突発的に発生するか、予め計画できるかの違いであって、欠航や遅延を最小限にする為の航空機の運用方法は変わりません

② 「C整備大きな改修作業」を実施するための航空機の運用
こうした大きな作業は、航空機を1週間から1ヵ月程度停留させて格納庫内で大人数をかけて行う作業となります。自社で整備を行う場合、格納庫を必要数持っている必要があると同時に、この作業に必要となる多数の整備士を確保していなければなりません。従って、航空機の稼働を高めると同時に、格納庫と多数の整備士の稼働を高める必要が同時に発生します
このやや複雑な問題を解くには、問題自体をシンプルにして考えるのが分かり易いと思います。仮にこのエアラインが20機保有していたとすれば、既に述べた通り、その内の19機が毎日稼働し、残り1機分は入れ代わり立ち代り「C整備や大きな改修作業」を実施していると考えてよいということになります。その場合格納庫は1棟あればよく、この種の大きな作業に必要な人員も1機分で良いことになります(これを「C整備や大きな改修作業」の「生産ライン」といいいます)。従って、航空機の運用で考えておくべきことは、それぞれの「C整備」の実施時期をできるだけ高い「Check in Rate」を守りつつ、2機が重ならない様に計画することになります

「C整備や大きな改修作業」を整備会社に委託しているエアライン(LCCはこういうケースが多い)は、自社の都合の良いタイミングで整備を実施することは難しくなりますが、考え方は自社整備の場合と一緒です。整備の実施タイミングでイニシアティブを持つためには複数の委託先を選定して置くなどの対応が必要となります

③ その他の稼働向上の方策
整備要目と整備パッケージの関係は、「整備要目と整備パッケージの関係」の表をよく見れば分かるように、整備期限(飛行時間、飛行サイクル、飛行日数)を守らなければならないならないのは、それぞれの整備要目です。整備パッケージは、エアラインが自社の航空機の運用に便利なように組み合わせを考え、航空当局に申請し認可を得たものに過ぎません。それぞれの整備要目を期限内に確実に実施する体制さえ構築できれば大きな整備パッケージで整備を行う必要はありません
*事例1:私が日本航空の航空機運用の担当であった時代、B767の「C整備」要目を二分割して運用したことがあります。このケースでは目立った効率向上が得られなかったため、数年で運用を止めてしまいました
*事例2:サウスウェスト航空では、1990年代に私が同社を視察した時には、「C整備」を4分割した整備パッケージを作り、それぞれのパッケージを1日プラスアルファで自社で実施していました。B737という小さな航空機であり、且つ数百機の単位で保有していた為と考えられます

必ずしも航空機の稼働向上に結び付くとは言えませんが、日本の様に旅客繁忙期がある程度限定的(年末年始、ゴールデンウィーク、夏季繁忙期)である場合、この期間のみC整備や大きな改修作業を計画せず、ここに引き当てている航空機を定期便の増便や臨時便設定に引き当てることがあります。この時期は需要が大きい為に旅客単価、及び搭乗率が高くなっていることがあって、営業収入の増に大きく貢献することになります。ただ、増便することによって、パイロットやCAの必要数も増えることとなるので、限界はあります

以上

B737MAXの墜落事故について

はじめに

昨年10月29日、インドネシアのLCCであるライオン航空のB737MAXが離陸後すぐに墜落しました。また、今年3月10日にはエチオピア航空の同型機がやはり離陸後すぐに墜落いたしました。この二つの事故の原因に類似性があることが分かり、3月13日には全世界で飛行中の約370機が、各国の航空当局から飛行禁止の命令が下されるという、近年には稀な事態となりました
このB737MAXという航空機は、2017年5月に引き渡しを開始した後、既にデリバリーされている機体を含め百社以上から約5,000機の発注を受けているベストセラー機であり、現在ボーイング社で月産52機のペース(⇒今年末には月産57機となる予定)で生産されています。因みに、この最新鋭機の技術的な仕様は以下の通りです;

737MAX Technical Specs
737MAX Technical Specs

多くの航空会社が導入しつつあり、導入する各社は今後の路線便数、航空機材計画の中心的な役割を果たすことが予定されており、今回の飛行禁止命令は全世界で注目されています。また、日本国内でも2020年からANAが30機の導入を計画しています。新聞等での報道もありますが、最近入手したAviation Weekの記事に現在までの事故の解析及びボーイング社が考えている対策が載っていましたので概略ご紹介をいたします(詳しく知りたい方は”B737MAX Accidento Chaos_25MAR’2019 Aviqtion Week & Space TechnologyB737MAX Accidento Chaos_25MAR’2019 Aviqtion Week & Space Technology”をご覧ください。尚、上表”Technical Specs”を含め、ボーイング社のウェッブサイトからも必要な情報を転載しています

事故の概要

1.ライオンエア610便墜落事故;

http://toboe.onenote.co.jp/wp-content/uploads/2019/04/Lion-Airの事故機と墜落までの飛行ルート
ライオンエアの事故機と墜落までの飛行ルート

2018年10月29日午前6時20分、ジャカルタ郊外のスカルノ・ハッタ空港を離陸したB737MAX(2018年8月受領)は、離陸後約10分で消息を絶ちジャカルタ北部の海上に墜落、乗員・乗客189名全員が死亡しました。墜落付近の海域で、Flight Data Recorder(パイロットによる航空機の操作や機体の位置、気圧高度、速度、など機体の運動状態、その他多くのデータを記録しています)Cockpit Voice Recorder (操縦室内の会話を記録しています)が回収されています。インドネシア航空当局から、「Flight Data Recorder からの情報で機体のAOA(迎え角:以下 AOAと表記します;Angle of Attack)センサーのデータが左右で20度食い違っていたこと、副操縦士から管制官に飛行高度を確認するように要請があり、飛行制御に問題があるとの報告があったこと」が発表されています

AOA(迎え角)とは・センサーの位置
AOA(迎え角)とは・センサーの位置

2.エチオピア航空302便墜落事故;

エチオピア航空機と事故現場
エチオピア航空機と事故現場

2019年3月10日午前8時38分、アジスアベバのボレ国際空港を離陸したB737MAX(2018年11月受領)は約6分後に墜落し、乗員・乗客157名全員が死亡しました。墜落機のパイロットは、墜落数分前に管制官に対して運航上のトラブルを報告し、空港に引き返す許可を求めていました。墜落現場付近で、Flight Data Recorder と Cockpit Voice Recorder が回収されており、エチオピア航空当局からの依頼でフランスが解析を実施しています

事故機の飛行記録から事故原因を推定する
両事故機の対地速度と上昇・沈下速度の比較
両事故機の対地速度と上昇・沈下速度の比較

上表は、ライオンエアの事故については、回収されたFlight Data Recorder から得られたデータを使用していますが、右のエチオピア航空の事故については、ADS-B(下記”参考1”参照)というシステムから得られるデータを使用しています。尚、上表で比較を行う場合、縦軸のスケールが違うことに注意してください
上表で明らかなように、墜落前の両機の飛行状況は非常に似通っています。また離陸直後の速度が低い状況下で短周期で上昇・沈下を繰り返しており、極めて不安定な飛行状態であったことが分かります

<参考1> ADS-Bとは
ADS-Bという名称は、”Automatic Dependent Surveillance-Broadcast”の頭文字を取っています。このシステムを使って、ATC Transponder(航空機に対して質問電波を発信すると航空機が持っている今の情報を返信してきます)を装備した航空機について以下の様な情報が入手できます;
①飛行機の登録番号、②飛行機の位置情報(経度、緯度)、③飛行機の速度(水平速度、上昇・下降速度)、④飛行機の高度(GPSからの情報と気圧高度計情報)、⑤飛行機の進行方向、⑥その他

FAAのADS-Bシステム概念図
FAAのADS-Bシステム概念図

また、ライオンエアのFlight Data Recorder から、事故前日と、事故当日(⇒墜落)の機体の水平尾翼の操作状況と水平尾翼のPositionの記録を読み取ったものが以下のグラフです;

水平尾翼の操作、動きの記録
水平尾翼の操作、Positionの記録(Aviation Week 2018年12月10-23 Editionから転載)

ライオンエアでは事故前日に、同じ機体で水平尾翼の異常な動きが一時的に発生し、すぐに正常な飛行に戻ったことが読み取れます。この情報はパイロットから地上整備士に報告され、事故当日出発前に点検・整備が行なわれたことがエチオピア航空から発表されています。ただ、適切な整備が行われたかどうかは現在までのところ分かりません
事故機は出発後すぐに、水平尾翼が MCAS(下記”参考2”参照)というシステムで自動的に小刻みに”Nose Up”側に動かされているのに対し、パイロットは適宜手動で”Nose Down、Nose Up”側に動かしています。その後、MCASが自動的に”Nose Down”側のみの動きを続けパイロットはその動きを止めようと”Nose Up”側にトリムを行っていますが、最終的に墜落前には水平尾翼の”Nose Down”側のトリム量は相当大きな値になっています(⇒地上に向かって急降下?)

737MAX Cockpit内の水平尾翼マニュアル・トリム関連装備
737MAX Cockpit内の水平尾翼マニュアル・トリム関連装備

こうした情報から、MCASによって水平尾翼が”Nose Down”側へ異常なトリムを繰り返し、パイロットの手動操作(水平尾翼の手動トリム+昇降舵)ではこれをコントロールできなかったことが事故の一つの原因ではなかったかと推測できます

<参考2> MCASとは
MCASという名称は、”the Maneuvering Characteristics Augmentation System “の頭文字をとっています。B737MAXから装備されているソフトウェア(B737NG以前のB737シリーズには装備されていません)で、名称の意味から判断すると、パイロットの操縦操作をサポートするシステムの様です
MCASは、フラップを出していない状態でマニュアル操縦で上昇を行っている(自動操縦を行っていない)時に、ピッチングの安定性を向上させるためのシステムです。因みに、機体のAOAの情報は、機体の両サイドにあるAOAセンサーの一つから得ており、一フライト毎に信号を受け取るセンサーを左右入れ替えています。

ボーイング社は多くの737シリーズを販売しており、これらのシリーズ間でパイロットが同じ様な感覚で操縦できるようにするため(例えば、航空会社によっては、B737NGを操縦した人が、翌日B737MAXを操縦することは頻繁に起こると考えられます)であり、B737MAXの型式証明(型式証明に係る詳しいことは「3_耐空証明制度・型式証明制度の概要」を参照してください)を取得するときにFAAからも要求されていたものです
同じB737シリーズでこの様な追加的なシステムが必要になった原因は、B737MAXから装備されることになった新しい高性能エンジン(CFM Leatp1)が、迎え角が大きい時にそれまでのエンジン(CFM56シリーズ)より大きな”Nose Up”のモーメントを発生させるからであると説明しています

737NGと737MAXのエンジン位置比較
737NGと737MAXのエンジン位置比較

こういう新しいシステムを導入しているからには、このシステムに誤動作が発生した場合、パイロットがどの様な操作を行えば正常な飛行状態に戻せるかに関して十分な訓練を行なう必要があると考えられます

現在検討されている対策

ライオンエアの事故以降、ボーイング社は事故の解析を行い、以下の様な対策を行う準備を進めています;
1.MCASの改修について
新しいソフトウェア・パッケージ(EDFCS:Enhanced Digital Flight-Control System)を開発し、B737-7をテストベッド機としてテストを行っています。従前のシステムからの変更のポイントは以下の3点です;①MCASを自動起動するときのロジックの変更、②AOA情報の入力方法改善、③水平尾翼のトリム・コマンドの制限
この変更によって;㋑システム全体の冗長性(Redundancy/想定外事象に対する対応力)の向上、㋺AOAセンサーからの間違った信号入力に対する水平尾翼トリム量の制限、㋩MCASによるトリム量を制限することによって水平尾翼の本来の機能を維持することが可能になると説明しています

ボーイング社としては方針は定まったものの、上記方針全体を完全に具体化するに至っていません。例えば、上記㋺のAOAセンサーの件については、追加的なセンサーを設ける方法以外に、現有の2台のFlight Control Computerに入力されている左右のAOAセンサーの信号をMCASに入力する方法も検討されています
また、上記㋩の水平尾翼のトリム量については、MCASからの新しいトリム入力に対して、水平尾翼のトリム量は1ユニットのみに制限すること、などを考えています。因みに現在のMCAS(事故機に装備)では、AOAセンサーが決められた”Nose Up”の範囲(専門用語で”閾値”といいます)を超えると、1秒当たり0.27° “Nose Down”方向に動かし、9.3秒間で、最大トリム量は2.5ユニットまで動かせるように設計されています

2.パイロット、整備士が使用するマニュアルの変更について
ボーイング社は、現在以下のマニュアル類の変更を検討しています;
①Flight Crew Training Manual(パイロットの訓練に使用するマニュアル)
②Airplane Flight Manual(パイロットが操縦するときに何時でも参照できるようにしている操縦時必携のマニュアル)
③Flight Crew Operation Manual(パイロットが操縦するときに何時でも参照できるようにしている操縦時必携のマニュアル)
④Quick Reference Handbookのspeed trim check list に新しい”注”を加える(出発時、飛行中のトラブル発生時にパイロットが参照するマニュアル)
⑤Airplane Maintenance Manual(整備士が整備を行う際に使用するマニュアル)
⑥Interactive Fault Isolation Manual(トラブルの修理を行う際、トラブルの原因を迅速に特定する為に使用するマニュアル)

3.AOAセンサーの不具合に対する対策
左右のAOAセンサーの情報が食い違っていた場合に、コックピットの最も重要な計器にその表示を行うこと( DISAGREE primary flight-display alert:参考3)
尚、この機能はB737NGでは標準装備になっていましたが、B737MAXではオプションとなっており、事故を起こしたライオンエアのB737MAXでは、このオプションは採用されていませんでした

<参考3> この警告表示を表示する条件
左右のAOAセンサーの値が10°以上ズレて、且つそれが10秒以上続いた場合に警告が表示されます

今後の推移

“はじめに”でも述べた様に、既に370機のB737MAXが航空会社に引き渡され、3月10日までは飛行を行っていた訳ですから、航空会社によってはこの機材が支えていた航空路線を維持するのは大変な負担になっていいるはずです。また、パイロットの資格は殆どの国で型式限定になっているため、他の型式の航空機で路線運営を代替することは簡単にはできません
一方ボーイング社としても、今のところ月産52機の生産を維持していますので、次々と完成していく機体を置いておく場所にいずれ困ってしまうはずです

こうしたことから、この原稿を書いている時点で、ボーイング社は可能な範囲で既に改修の提案(SB:Service Bulletine/SBに関する詳しい説明は7_Hardware に係る信頼性管理をご覧ください)を始めています(MCASの改修提案 by Boing
また、B737MAXの型式証明を行った米国のFAA(Federal Aviation Administration:連邦航空局)も面子にかけて運航許可に向けてボーイング社と協力作業を行っていると思われます

従って、かなり早期(1~3ヶ月?)にボーイング社のSBがFAAによってAD化(改修命令)され、この改修が済み次第、米国での運航が再開されるのではないかと思われます。続いてFAAとの協力関連が強いカナダ(ボンバルディア社がある為)、やEU諸国(エアバス社がある為)でも運航許可を出すものと思われますが、中国や事故のあった国であるインドネシアやエチオピアは、そう簡単にはいかないような気がします

また、今回の事故によって痛手を受けた航空会社は、B737MAXのオプション契約分をエアバス機(A320neoなど)に切り替える動きが出てくる可能性は高いものと思われ、今後の航空機商戦は予断を許さない状況が続くと思われます

A320neo vs B737MAX
A320neo vs B737MAX

今後、AD(Airworthiness Directives@米国;耐空性改善通報@日本)が発行され次第このブログに追加的に情報を記載していきたいと思っています。また、運航再開以降になると思われますが、ライオンエアの事故機に関してはインドネシア航空当局から、エチオピア航空の事故機に関してはエチオピア航空当局から正式な「事故報告書」が発行されるはずです。これらの事故報告書の内容についても適宜追加的にブログに記載していこうと思っています

Follow-Up:2019年4月6日、737MAXを2割減産発表 ⻑期停⽌に備え

Follow-Up:2019年4月12日、190412_737 MAX SOFTWARE UPDATE

・・・その後の進展状況_①・・・

2019年4月15日、Aviation Week_April08-21_Fixing the MAXにエチオピア航空、ET302便のFlight Data Recorderの解析が出ていましたので、その要約を報告します;

ET302 Preliminary FDR Data_説明用
ET302 Preliminary FDR Data_説明用(画面をクリックすれば拡大画面が見られます

上のデータには19個のパラメータ(①~⑲)について、出発から墜落に至るまでの時系列の推移がグラフになっています。尚、時系列の単位は、UTC(世界標準時/日本はUTC+9時間)で表示されています;
凡例:05:37:00:5時37分:0秒;横軸1目盛で3秒の間隔

ET302便のFlight Data Recorder の解析;

05:37:45:正常に出発;10秒後位からエンジンンの出力UP(②参照)
05:38:39:離陸(⑨参照)
05:38:45:左右のAOAセンサーの値が乖離(⑫参照/左74.5°Nose Up、右15.0°Nose Up)
<参考> エチオピア航空当局による事故後の調査で異物が当った形跡は無かった
05:38:45:左のAOAの過大なNose Upの信号により、左の操縦桿のStick Shakerが起動(③参照;その後ずっと起動したまま)
<参考> 起動したStick Shakerの動画(ネット情報):https://youtu.be/NtQqb7rstrQ

05:38:49~05:39:18:手動によるNose Up、Nose Dowmのトリムを繰り返す(④参照)
05:39:21:Auto Pilot “ON”(⑯参照)
05:39:24~:Auto Pilotによる自動トリム(⑬参照;ほぼNose Down側)
05:39:45:離陸を継続しフラップ引き込み開始、15秒後に引き込み完了(⑲参照)

05:39:57:Auto Pilot “OFF”(⑯参照)⇒ MCASが自動的に起動し、MCASによるトリムがが始まる(⑬参照)
05:40:00~05:40:09:左のAOAセンサーの誤った入力信号によりNose Down方向にトリムが行われ、水平尾翼のPitch角が4.6ユニットから2.1ユニットに変化し(⑭参照)、機体は上昇から降下に変わった(①参照)
 05:40:09:パイロットの操縦桿にあるトリムスイッチによりNose Up側に操作され(④参照)、水平尾翼のPitch角が2.4ユニットに戻した
05:40:20:左のAOAセンサーの誤った入力信号(⑫参照)で、再びMCASによりNose Down方向にトリムが行われ(⑬参照)、水平尾翼のPitch角が0.4ユニットまでNose Downまで下がった(⑭参照)
05:40:27~05:40:37:パイロットの操縦桿にあるトリムスイッチによりNose Up側に操作され(④参照)、再び水平尾翼のPitch角が2.4ユニットに戻った(⑭参照)
05:40:42~15:40:51:MCASによりNose Down方向にトリムが行われ(⑬参照)たものの、Pitch角は変わらなかった(⑭参照)

15:40:51:パイロットがMCASの電源を切った(MCAS電源のON/OFFは上表のパラメーターには入っていません。記事後半にON/OFFした事が書いてありますので、④のデータの推移から筆者がタイミングを判断しました)

05:41:46:Voice Recorderより)機長が副操縦士に対してマニュアル操作でNose Upにできるか?」と聞いたところ、副操縦士はできない」と答えた
05:41:46:この時点の左の対気速度は340kt(ノット;時速630キロ)、右はそれより20~25kt速かった(⑪参照)。(Voice Recorderより)Over Speed Warning が鳴り、パイロットは管制官に空港への引き返しを要請し、許可を得た
05:43:11:水平尾翼のPitch角が2.1ユニットまでNose Down方向に下がり(⑭参照)、パイロットが2度トリムスイッチによりNose Up側に操作した(⑬参照)結果、水平尾翼のPitch角が2.3ユニットに戻った(⑭参照)

05:43:21:再びMCASの電源を入れた(MCAS電源のON/OFFは上表のパラメーターには入っていません。記事後半にON/OFFした事が書いてありますので、④のデータの推移から筆者がタイミングを判断しました)

05:43:22:水平尾翼が自動的にNose Down方向に動き、5秒でPitch角が1.0ユニットに下がった。その後急激に速度を上げつつ(⑪参照)、高度が下がり(⑩参照)、約25秒後に地上に激突

関係者の現時点でのコメント抜粋;

1.Flight Data Recorder、Voice Recorder の解析を担当しているエチオピア航空当局(ボーイング社、FAA/連邦航空局、NTSB/連邦事故調査委員会、EUの航空当局、フランスの航空当局も協力して事故調査を行っています)は、事故機のパイロットはボーイング社のマニュアル通りの操作を行っていたと述べています(⇔この件は、ボーイング社による事故の賠償金額に大きく影響するはず)

2.ボーイング社では;
A)パイロットがMCASの異常事態に際し、操縦桿にある手動トリムでの対応を継続し、迅速なMCASの停止操作を行わなかったために事故に至ったと考えている
B)ボーイング社の「水平尾翼が暴走した時に行うべきチェックリスト(「Runaway Stabilizer Procedure」/B737NGと同じ!)」では、「MCASの電源」を切ってからマニュアルトリムを行うことになっている

3.FAAは、一連のB737MAXの事故のケースを見ると、Part121エアライン(大型の商用機を運航するエアライン)のパイロットは異常な飛行状態失速、背面飛行からの回復、対気速度の計器が信頼できなくなった時、など)から回復する訓練をシミュレーターで行う必要があると考えている。しかし、現在ではエアラインが保有しているシミュレーターの能力には問題があると考えている。因みに、米国のエアラインは、こうした異常飛行の訓練に対応できるB737MAXのシミュレーターを持っていない

Follow-Up:2019年4月25日、ボーイング機運航停⽌の影響広がる 再開めど⽴たず

Follow-Up:2019年4月27日、⽶航空⼤⼿、ボーイング機運航停⽌で⽋航コストかさむ

Follow-Up:2019年5月4日、ボーイング、開発でパイロットの意見求めず_米紙報道

・・・その後の進展状況_②・・・

2019年5月5日、Aviation Week_April22-May05に以下の様な記事が出ていましたのでご紹介します;

MCAS改修の内容がかなり明確になってきました

MCASのソフトウェアの新旧を比較したものが以下の図になります;

MCASソフトウェア_新旧比較
MCASソフトウェア_新旧比較(画面をクリックすれば拡大画面が見られます

改修のポイントは;
1.左右のAOAセンサーの、① 左右の迎え角にで5.5°以上の乖離があった場合、② 突然迎え角の値が跳ね上がった(spike)場合、③ 迎え角の変化が尋常でなかった(unreasonable)場合、MCASによるコントロールを停止する
2.パイロットによるピッチ・コントロール(Nose-Up、Nose-Down の操作)は、MCASのコントロールに優先する。またMCASによる水平尾翼のコントロールは、閾値(しきい値:予め設定された値)を超えれば停止する
3. MCASは、AOAの迎え角が変わった時、一回だけ水平尾翼のコントロールを行う。また、パイロットが手動でトリムを行った場合、5秒後にMCASがコントロールを再開する最初のソフトウェアのルールを廃止した

4.パイロットが操縦する際、最も重要な表示装置であるPFD(Primary Flight Display)のイメージは、改修実施後に以下の様になります;

New PFD Image
New PFD Image(画面をクリックすれば拡大画面が見られます

上記のイメージの説明;
* 左側のPFDのイメージはノーマルなケース、右側のPFDのイメージはAOAの情報が異常であった場合の表示です
* 両方のイメージで、左の帯状のスケールは対気速度(kt:マイル/時間)を表し、右側の帯状のスケールは気圧高度を表しています。対気速度の帯の右側にある赤と白のまだらの細い帯状の表示は失速の警告が出る大気速度の範囲を表しています
* AOAの迎え角が大きく乖離した場合(右側のPFDイメージを参照)、右下に「AOA Disgree」の表示が出ていることが見て取れます。また、機体の速度は169ktで失速速度145ktよりも十分速いにも拘わらず、左の失速の警告が出る範囲になっているのが分かります(⇔失速の警告が出ても失速する心配が無いのが分かる)

5.FAAの当局者によれば、上記改修は5月下旬~6月初旬に承認される見込みとのこと。ただし、この承認後米国のエアラインは早期に運航再開することが考えられますが、米国外のエアラインの運航再開は見通せません(←各国の航空当局の判断)

ボーイング社の今後の新機種開発計画に対する影響(識者の意見)

ボーイング社は、米国で多く使われているB757/B767の後継機種の開発計画(NMA:New Midmarket Airplane)を持っていましたが、今回のB737MAXの事故によって、計画の進捗は明らかに遅れています
今回の事故で明らかになったように、B737MAXの機体設計は明らかに新しい高性能のエンジンを搭載する条件を満たしていません(バイパス比の大きいエンジンを搭載するには機体と地上とのクリアランスが小さすぎる)。また、既にこのクラスの受注競争においてもA320NEOに遅れを取っていることも明らかになっています。従って、ボーイング社としては、2025年~26年にはNMBの投入が是非とも必要となると思われます(⇔B737MAX8、9、10の差し換え需要を含めて/筆者の意見)

Follow-Up:2019年7月15日、ボーイング機の運航再開、20年に延びる可能性 米報道

Follow-Up:2019年7月19日、ボーイング、運航停止で補償費用5200億円 年間利益の約半分

以上

 

条約・航空協定の歴史

はじめに

20世紀初頭に登場した航空機が、第一次世界大戦を経てその有用性(主として高速性)が広く認識されるようになり、軍事用のみならず商用にも広く利用されるようになってきました。その後、第二次世界大戦前後の急速な技術的進歩(高速性+大量輸送能力)によって国境を越えた商用目的の輸送にも極めて有用であることが一般的な認識となりました(詳しくは「1_航空機の発達と規制の歴史」参照)

しかし、国境を越えた旅客・貨物の輸送を行うには、まず主権(裁判権、関税自主権、国内法の適用、etc)の及ぶ範囲外国機が自国の領土内で飛行することに伴う安全性の担保(航空機本体の安全性、操縦する人の技量、etc)、自国機が外国の領土を飛行することに伴う安全性の担保(飛行ルートの安全性、使用する飛行場の安全性、各種飛行援助施設の整備、etc)、などについてしっかりした取り決めが必須となります。従って、国際間の航空輸送を行うには、他の輸送システムとは違って、上記に係る共通の取り決めを多国間の条約によって保障する必要があります

また、航空輸送をビジネスの面で捉えた場合、ビジネスの機会は基本的に国家間で平等であるべきことは自明のことです。しかし航空輸送を行うためのインフラ(航空輸送ビジネスの規模、国自体の経済規模、etc)は、国により格段の差があり平等なビジネスの機会を保証するには自由競争に任せることは必ずしも適切ではありません。特に第二次世界大戦が終わった時点では、航空輸送ビジネスの主役になるべき先進国は、米国を除き戦災で経済が破綻状態になっていました。こうした背景から、国際間の航空輸送ビジネスは、他の輸送ビジネスとは違って、二国間の条約や国際協定によって幾つかの規制を行ってバランスを取る必要がありました

以下に、航空に係る条約や国際協定について、具体的な事例を基に説明をしていきたいと思います

シカゴ条約

1944年11月、シカゴで第二次大戦の戦勝国を中心として、52ヶ国が参加して開催された国際民間航空会議(Convention on International Civil Aviation)で合意に至った多国間の民間航空輸送の基本的な取り決めを「シカゴ条約」と呼んでいます。正式名称は「国際民間航空条約」といいます

条約の骨子
輸送権領空主権空港使用関税航空機の国籍事故調査、などに係る国際間の共通ルールの設定
* 上記を管理・運用する国連の専門機関として「国際民間航空機関ICAO/International Civil Aviation Organization)の設立 ⇒ 1947年4月に設立されました
日本は、サンフランシスコ条約で独立を果たした後、1953年10月に加盟しました。現在192ヶ国がこの条約の締約国(1918年4月19日現在のICAO締約国リスト)となっています。ICAOの中心的な意思決定・執行機関は理事会で、選挙で選ばれた36の加盟国から構成され、現在日本は理事国として活動しています

条約の狙い
航空機の管理システムを確立し、運航の安全確保、航空機の技術的な問題に関する締約国家間の協力を図ること
② 航空運送に関わる以下の2種類の協定の制定を締約国に促すこと
国際航空運送協定路線、輸送力に関する協定の締結)
国際航空業務通過協定(上空通過と技術着陸のみを行う場合の協定 ⇒ この協定を選択する場合は別途二国間協定が必要

条約の効果
締約国の航空法は基本的にほぼ同じ内容となり、自国の航空法で規制できない外国航空機の領空内の運航(領空通過、離着陸)について安全が保障されることになりました。因みに、日本の航空法には以下の通りこの条約を遵守する義務が掛かれています;
航空法・第一条:この法律は、国際民間航空条約の規定、並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続に準拠して、航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因する障害の防止を図るための方法を定め、並びに航空機を運航して営む事業の適正かつ合理的な運営を確保して輸送の安全を確保するとともにその利用者の利便の増進を図ること等により、航空の発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする

シカゴ条約の主な内容
Chapter-1一般原則と条約の適用範囲);
① 条約締約国の領空の主権を認める
② 条約締約国の領空通過、着陸は協定の締結、又は許可取得が必要
<参考>
第一の自由:他の当事国の領域を無着陸で横断飛行する特権
第二の自由:運輸以外の目的のため、他の当事国の領域に着陸する特権
第三の自由:航空機の国籍のある国の領域で積み込んだ旅客、郵便物及び貨物を、他の当事国の領域で積み卸す特権
第四の自由:航空機の国籍のある国の領域に向かう旅客、郵便物及び貨物を、他の当事国の領域で積み込む特権
2国間の旅客・貨物の輸送を行うには上記の第三、第四の自由が必要になります

第五の自由:第三国の領域に向かう旅客、郵便物及び貨物を、他の当事国の領域で積み込み、または第三国の領域からの旅客、郵便物及び貨物を、他の当事国の領域で積み降ろす特権(以遠権例えば、日米間の航空協定の中で、日本の航空企業が、ニューヨークからサンパウロ(ブラジル)間の運航を行い、米国からの旅客、郵便物及び貨物をニューヨークからサンパウロに運ぶこと、また逆に、ブラジルからの旅客、郵便物及び貨物をサンパウロからニューヨークに運ぶ権利のことを以遠権といいます

Chapter-2条約締約国の領空における飛行);
条約締約国同士では定期便以外の領空通過、技術着陸を事前の許可無く行うことができます
定期便については、「国際航空運送協定」、あるいは「2国間協定」がない限り領空通過、着陸を行うことができません
*国際航空業務通過協定:第1及び第2の自由についての取り決め
*国際航空運送協定:第1~第5の自由についての取り決め
③ 各条約締約国は、他の締約国による自国内地点間の運航、運送(カボタージュ/Cabotage ⇔ 国内運航の権利を行うことを拒否することができます。但し、全ての締約国に対し等しい例外許可条件を設ければ許可することが可能
使用する空港を指定することができます
⑤ 貨物・旅客の出入国管理・通関・権益に関する法規は当該国のものを遵守しなければなりません
⑥ 航空に適用される法規も、航空機の国籍の如何に関わらず当該国のものを遵守しなければなりません
⑦ 料金については自国機と差別することはできません

Chapter-3航空機の国籍);
航空機は登録国の法規に従って登録を受けた国の国籍をもっています
② 締約国全てに対して、航空機の登録情報の開示、及び航空機に登録国の表示を義務付けています
<参考> 航空機登録番号の割当て

航空機登録番号
航空機登録番号

Chapter-4航空輸送を促進する手段);
① 締約国は、航空機で使用する燃料、潤滑油、予備部品、貯蔵品、装備品については免税措置を行う義務があります
② 締約国は、航空機の国籍に係らず、遭難した航空機の救援措置を行う義務があります。また、遭難したと思われる航空機の捜索活動に協力する義務があります
③ 締約国は、重大事故(死傷者を伴うもの、航空機、施設に欠陥を示唆するものがあるもの)が発生した場合、ICAOが勧告する方式(ICAO Annex 13:Accident and Incident Investigation)に従って事故の調査を行う義務があります
尚、重大事故が発生した場合、航空機の登録国にも調査に立ち会う権利を付与されると共に、随時調査内容の報告を受ける権利があります
④ 締約国は、ICAOの勧告に従って、国内に空港・無線施設・気象施設・他、の航空施設を作る義務があります
⑤ 締約国は、通信手段・符号・信号・証明、その他運航上の実施方式や規則に関わるICAOの標準様式を採用する義務があります
⑥ 締約国は、航空地図、チャート(例:Aeronautical Charts_USAICAO EN-ROUTE CHART_日本の刊行に際し、国際的な取り決めに協力する義務があります

Chapter-5航空機が備えるべき要件);
締約国は、航空機を運航する際、以下の書類を常に搭載している義務があります;
① 航空機の登録証明書、② 航空機の耐空証明書、③ 各乗務員のライセンス、④ 航空日誌(ログブック)、⑤ 航空機局免許状
② 搭乗している旅客の氏名乗機地目的地を記載したもの
③ 搭載している貨物の積荷目録及び細目申告書(軍需品、軍用機材は搭載してはなりません)
Chapter-6国際標準
① 航空運送を容易にする為に統一が有用と考えられる事項は最大限の協力を図ること(例:航空機、航空従事者、航空路、等)
耐空証明については国際標準に一致しない場合は、その差異の詳細が裏書されること
航空従事者についても国際標準に一致しない場合は、その差異の詳細が裏書されること
Chapter-7 ~22 省略

国際民間航空条約・付属書(ICAO ANNEX) の構成
以下は、ICAO理事会で採択された基準や推奨手順のタイトルです。それぞれのタイトルの意味に係る詳しい説明は「ICAO ANNEX_各タイトルの説明」(英語)をご覧ください。尚、それぞれのタイトル毎の内容は相当量あり、ICAOのサイトで出版されています(下記①の例:ICAO ANNEX1 Personal Licensing  );
Personnel Licensing(航空従事者技能証明)
Rules of the Air(運航上の規則)
Meteorological Service for International Air Navigation(航空気象)
Aeronautical Chart(航空地図、チャート)
Units of Measurement to be used in Air and Ground Operation(航空機の運航に必要となる情報の単位)
Operation of Aircraft(航空機の運航:商業輸送、ジェネラルエイヴィエイション、ヘリコプター)
Aircraft Nationality and Registration Marks(航空機の国籍及び登録記号)
Airworthiness of Aircraft(航空機の耐空性)
Facilitation(国際空港に必要とされる施設、機能)
Aeronautical Telecommunications(航空通信)
Air Traffic Service(航空管制)
Search and Rescue(行方不明機の捜索・救難業務)
Aircraft Accident and Incident Investigation(航空機事故調査)
Aerodromes(飛行場)
Aeronautical Information Services(航空情報業務)
Environmental Protection(環境保護)
Security-Safeguarding International Civil Aviation Against Acts of   Unlawful Interference(セキュリティー対策)
Safety Management(安全管理)

二国間航空協定_一般

「はじめに」で述べた通り、国によって航空輸送を行うためのインフラに大きな差があり、結果として全ての国が同じ条件で協定を結ぶには無理があります。因みに;
商用航空輸送の先進国では、巨大な航空会社が既に存在し、高いビジネス上の競争力を持っているため自由化を求めます(例:米国)
中継貿易を国策としている国は一般に、自由化によってのみ他の政策との調和が図れるため自由化を求めます(例:シンガポール、アラブ首長国連邦、など)
* 一方、空輸送の後進国では、自国の航空会社が発展途上にあり、ビジネス上の競争力が脆弱であるため、自由化には消極的になるのが普通です

バミューダ協定
第二次世界大戦終了後の1946年、戦勝国であるものの戦災で経済が破綻状態となってしまったイギリスと、戦勝国で唯一実質的に戦災が無く、経済が絶好調であった米国との間で、シカゴ条約の下で最初の航空交渉が行われ、両国の間で二国間航空協定が締結されました。交渉が大西洋上のイギリス領バミューダで行われた為、通称「バミューダ協定」呼ばれています
この協定は、以下の基本的な権利関係をベースとしているため、以後の二国間航空協定の見本となりました;
互恵平等の原則
運航路線、便数の相互指定
運航する航空企業の特定(指定航空企業)

協定の中で取り決めが行われる主な内容;
参入路線、便数:経済力や国土の大小、人口の多寡に関わりなく均衡が図られることが普通です
運賃:両国の認可が必要な場合が多い(基本的に発地国建てであるため、為替の変動により内外価格差ができます)。また、IATAの協定運賃(詳しくは「エアラインの営業とは」をご覧ください)を採用する場合もあります
路線運営を行う航空会社:両国で同数の航空会社を指定する(“指定航空企業”)ことが多い
 航空自由化(オープンスカイとは、上記の参入路線・便数、運賃、路線運営を行う航空会社、などの制限を撤廃することです

以下、日本に係る典型的な二国間航空協定を取り上げ、それぞれの協定の特徴、歴史的変遷について概略を述べてみたいと思います

日米航空協定

1951年にサンフランシスコ平和条約が締結された後、日本も国際線の運航が可能となり、まず最初に最も重要な日米間の運航を行うために日米間の航空交渉が行われました。その結果、1953年に日米航空協定(正式名称:日本とアメリカ合衆国との間の民間航空運送協定)が締結されました。主な内容は以下の通りです;
第1条:シカゴ条約の遵守
第4条:1又は2以上の指定航空企業の指定
第5条:相互に第1~第4の自由を認める(一部路線で以遠権を認めている)
第7条:相互に運航する航空機の耐空証明を認める
第13条:運賃は両国の認可が必要

付表(参入路線・便数)
<日本側の権益>
日本=(中部太平洋の中間地点)=ホノルル=サンフランシスコ=以遠地点
日本=(北太平洋及びカナダの中間地点)=シアトル
日本=沖縄=以遠地点 ⇔ 敗戦後施政権は米国にあった
<米国側の権益>
米国=(カナダ、アラスカ、及び千島列島の中間地点)=東京=以遠地点
米国(属領を含む)=(中部太平洋の中間地点)=東京=以遠地点
那覇=東京(←沖縄は米国の施政権下にありました)

1954年国際線初就航時のタイムテーブル

上記を見ればわかる通り、敗戦国日本の実力を反映して、以遠権(第5の自由)について米国に有利な協定になっています。その後、日本経済の成長に合わせ11回の修正(詳しくは日米航空交渉の歴史(1959年~1998年)参照)が行われた後、2009年12月に至り、オープンスカイ協定日米オープンスカイ合意の概要参照)が結ばれました

内容を要約すると以下の通りです;
1.自国内地点、中間地点、相手国内地点及び以遠地点 のいずれについても制限なく選択が可能であり、自由 にルートを設定することができる
2.便数の制限は行わない(ただし、航空企業は通常の 手続きにより希望する空港の発着枠を確保する必要があります
3.参入企業数の制限は行わない
4.コードシェア同一国・相手国・第三国の航空企業とコードシェア 等の企業間協力を行うことができる
5.航空運賃の設定については、差別的運賃等一定の要 件に該当するものを除き、企業の商業上の判断を最大 限尊重するとともに、可能な限り迅速な審査を行う

日露(日ソ)航空協定

日本にとってロシアとの航空交渉(ソ連邦崩壊前はソ連との航空交渉)は、2国間の輸送量の取り決めと言うよりは、大圏コース(最短距離の空路)に近いロシア領空(シベリア上空~モスクワ上空)を通過して日本とヨーロッパ各国との間の路線運営を行う権益の取り決めを行うということでした。
ロシア領空を通らないルートは、アンカレッジを経由して北極上空を通過することとなりますが、このルートは距離が長くなるため、時間がかかり(片道数時間の差がでます)燃料費も増加することになります。また、飛行時間が延びるということは高価な航空機の路線占有時間が長くなるために航空機材効率が悪くなります。戦後、日本とヨーロッパ諸国との経済関係は飛躍的に発展し、それに伴って旅客・貨物需要も急速に増加してゆきました。こうした背景から、日露間(ソ連邦崩壊前は日ソ間)の航空交渉は以下の通り頻繁に改正を繰り返しました

尚、日露(日ソ)航空協定で特徴的なことの一つに、通常の航空協定で外国航空会社に課せられる着陸料、駐機料、航行援助施設使用料、等の他に、シベリア上空通過に高額の料金が課せられることです。これは上記の飛行時間の短縮に伴う燃料費減等のコスト削減、旅客利便性の向上、航空機材効率の向上、などに見合うものと考えられますが、シカゴ条約の精神に反するとも考えられます。尚、この上空通過料金は、航空協定とは別の商務協定で決められています

日本とソ連との間で最初に日ソ航空協定が締結されたのは1967年3月3日です。この航空協定の主な内容は以下の通りです
第2条:第1~第4の自由を相互に認める
第3条:日ソ間の運航を行う航空企業の指定
第7条:運航回数、機種、輸送力に係る合意の必要性
第8条:米ドルによる送金の自由
第9条:航空施設利用に関わる互恵主義、燃油費等の非課税
第12条:駐在員数の合意の必要性
* 運賃に関わる取り決めは、この協定に含まれていません

付属書 Ⅰ ;
*日本の就航路線:東京=モスクワ=第三国内の諸地点
*ソ連の就航路線:モスクワ=東京=第三国内の諸地点
*指定航空企業:(日本/日本航空ソ連/アエロフロート
付属書 Ⅱ ;
*安全運航に必要な情報の提供義務
*ICAO、WMO(世界気象機関)の標準方式、手続きを出来る限り採用すること(但し、ソ連邦内の航空管制に使われる高度の指示はメートル法を使用)
*情報の提供、機長との情報交換、等における英語使用の義務

以後、1969年~1994年の間、主として「付属書Ⅰ」に関して多くの交渉と改正が行われました。また、ソ連邦崩壊に伴い、1994年からは名称が日露航空協定に変わっています。詳しくは日露(日ソ)航空協定の歴史(1969年~1994年)をご覧ください

その後、2011年12月1日に、翌年3月末日からの夏季スケジュール以降、以下の内容で合意し、大幅な自由化が図られました;
1.日本側企業に係る運航の枠組み;
シベリア上空通過便に係る制約の大幅緩和通過便数の大幅拡大など)
コードシェアの大幅拡大(あらゆる種類のコードシェアを可能とする;コードシェア便数の上限撤廃)
③ 日本・ロシア間の中間地点の設定(ロシア内の経由地)
2.ロシア側企業に係る運航の枠組み;
① 成田路線のロシア側輸送力の拡大
② 日本側の①~③をロシア側にも設定

日中航空協定

日本と中国との航空協定は、第二次大戦後中国を代表することとなった中華民国(台湾)と1949年に台湾を除く中国全土を掌握して誕生した中華人民共和国(以下“中国”と呼びます)との間の国際政治における地位の変遷によって大きな影響を受けました
日本と中華民国は、1955年3月15日に航空業務に関する日本国と中華民国との間の交換公文を交わし、日本と台湾、香港、ベトナム、韓国などの都市を結ぶ路線運営について協定を結び、相互に運航を開始しました。この路線を運営する航空企業として日本側は日本航空、 中華民国(台湾)側は中華航空が指定されました

1971年10月、国連総会で、アルバニア(当時は共産圏)が提案した「中華人民共和国に中国代表権を認め、中華民国(台湾)を国連から追放する決議」が採択されました
また、1972年2月21日のニクソン大統領の電撃的中国訪問に始まる米中国交回復の流れに沿って、日本も1972年9月29日に田中角栄首相が中国を訪問し、日中共同声明(日中戦争の戦後処理についても言及していますのでちょっとご覧になることをお勧めします)に調印しました。この声明の中で、日本は中華人民共和国を中国の唯一の合法政府であることを認めています。また、貿易、海運、航空、漁業等の事項に関する協定の締結を目的として、交渉を行うことに合意しています

1974年4月20日、日中共同声明を受けて概略下記内容の日中航空協定が締結されました;
第2条:第1~第4の自由を相互に認める
第3条:日中間の運航を行う航空企業の指定(1~2社)
第10条:運賃の認可制
第11条:日本円、人民元による送金を認める

付属書;
*日本の就航路線:東京=上海 AND/OR 北京=(南回りヨーロッパ線の寄港地)
*中国の就航路線:北京=東京=太平洋線

この条約発効に伴い日本航空による日本=台湾路線は運休。替わって日本アジア航空(日本航空の100%出資子会社;乗員を含む主だった社員は日本航空から移籍しました)により、1975年8月から日台路線の運営が行われるようになりました。また、中国民航(中国側の指定航空企業)と中華航空が主要空港(成田空港)で“鉢合わせ”をすることが無いように、日本アジア航空と中華航空は、例外的に羽田空港を使用することになりました

その後、日中間の経済関係が強まることに合わせて、寄港地点の増加、指定航空企業にANAを追加(1992年、福岡=大連線就航)が行われました。また、日台路線にはANAの子会社エアニッポンが参入(1994年、福岡=台北線就航)しました。

2007年になって、日本航空による日台路線の直接運航が認められることとなり、2008年4月に日本アジア航空は日本航空に統合され、日本航空が日台路線の運営を継承しました。尚、エアニッポンは2012年4月にANAに吸収合併され、路線運営もANAが継承しています

日中路線については、その後数次にわたる付属書の改正を行った結果、2012年8月8日の国土交通省の報道発表によれば、以下の内容で日中が合意しています;

【合意の概要】
1.日中間の段階的なオープンスカイの実現
① 北京及び上海、成田及び羽田を除く、日中間輸送のオープンスカイ(航空自由化)の実現(合意時に直ちに実施)。
② 上記4空港に係る航空自由化については引き続き検討。
③ 北京、上海、成田関連路線の増便に適切に対応できるよう枠組みを拡大(合意後直ちに実施)する。

2.羽田路線の増便
(1)羽田空港の昼間時間帯
① 2013年3月末から下記を実施
・羽田=上海(浦東空港/上海中心部に近い空港):日中双方2便/日ずつ。但し、将来的に上海(虹橋空港)の国際枠が増加する場合には、上海(浦東空港)から上海(虹橋空港)への振替が可能
・羽田=広州:日中双方2便/日ずつ

② 国際線の発着枠が3万回から6万回に増加する段階から下記を実施
・羽田=北京:日中双方2便/日ずつ

(2)羽田空港の深夜早朝時間帯
2013年3月末から下記を実現
・羽田=中国内地点:日中双方2便/日ずつ

尚、2012年 年7 月30 日時点における日中双方の乗入れ地点、参入している航空企業についてはを日中路線の運航状況ご覧ください。日中両国にとって巨大な市場に育っていることが分かると思います

日本サウジアラビア航空協定

サウジアラビアは、日本にとって最大の原油供給国であり、また政治・宗教面で中東地域の盟主的存在でもあるものの、航空需要の観点からはそれ程重要な路線では無い為、極めて標準的な航空協定となっています
協定の交渉は、2006年11月に第1回交渉を行い、2007年2月に第2回交渉で概要が固まり、その後文言調整等を経て2008年年8月には協定が署名されました。協定の重要なポイントは以下の通りです;

航空協定の主な内容;
第3条:航空企業の指定(企業の名称は協定、付属書には明記されていません)
第4条:第1~第4の自由
第12条:運賃の認可制;運賃調整に関わる国際的な仕組の利用(IATA運賃:詳しくはエアラインの営業とはを参照)
第14条:送金の自由(交換可能な通貨で)
第16条:ICAO標準の遵守義務

付属書の内容;
日本の路線
日本国内の地点=中間地点=ジェッダ(イスラム教の聖地)、リヤド(首都)、ダンマン
サウジアラビアの路線
サウジアラビア王国内の地点=中間地点=大阪、名古屋
両国の指定航空企業は路線運営に当り、起点は自国内、他の地点は省略することが可能

おわりに

これまで述べてきたように航空協定とは、安全運航互恵平等の原則を基に国際間の商用航空輸送を円滑に行うために考え出された仕組みです。經濟先進国と発展途上国との間では、自ずと自由競争を制限する幾つかの制約(乗入れ地点、運航便数、運賃、第1~第5の自由、他)を設ける必要があります。国際商用航空輸送のルールの起点となったシカゴ条約の締結から70年以上が経過し、多くの先進国間では程度の差はありますが既にオープンスカイ協定が結ばれ(オープンスカイ協定の進捗について_国土交通省)、制約の多くが撤廃されました。しかし、二国間の航空需要が未成熟である国と日本との間では、未だに航空協定が結ばれていない国も少なからず存在します
* 参考:2018年11月19日・20日、 外務省において,日本・クロアチア航空協定に関する第1回政府間交渉が開催されました

一方、オープンスカイ協定を結んだ国同士でも、第5の自由(以遠権)については、自国の航空企業を守るためにある程度制限があることが普通です。また、カボタージュを認めている国はEU域内の国同士を除き殆どありません。因みに、EU域内の国々の国内線はカボタージュを認めたために弱肉強食の世界となり、Ryan Airや easyJetという大規模なLCCに国内線の輸送がとって代わられました。ただ、外国からの旅客の国内区間の輸送に関してはコードシェアを活用することにより国内航空企業を生かした運送が可能となっています

日本の航空企業にとっては、多くの旅客・貨物需要のある国々とはオープンスカイ協定によって国際線の運営が経営上極めて厳しい状況になってきつつあります。これまで空港発着枠の制約から外国社の乗り入れを謂わば合法的?に制限することができましたが、関西空港、中部空港の24時間運用、成田空港の運用時間帯の拡大(早朝、深夜)、羽田空港の新たな着陸ルートの運用開始、などにより受け入れ便数枠が年々拡大してきています(参考:国際線直行便運航状況_2018年冬ダイア)。日本の航空企業の国際線運営にとって、「High Yield(高単価)旅客の積み取りを優先」し、「搭乗率を高めるためのLow  Yield(低単価)旅客の積み取り」という単純なイールド・マネージメント(詳しくはエアラインの営業とは参照)だけでは、供給シェアがじり貧となり外国社を含めた相対的な地位の低下が避けられません。こうした経営環境の中で、日本航空の新たな国際線LCC(ZIPAIR Tokyo/ジップエア・トーキョー;2021年運航開始)設立という戦略が生まれたのではないかと推測しています。日本航空のOBとして密かに?応援したいと思っています

以上

エアラインの営業とは

エアラインビジネスと旅行業の違い

一般の人にとって、エアラインビジネスと旅行業の区別はつきにくいと思われます。航空機を使って旅行をするという意味では、エアラインのチケッティング・カウンターに行っても、旅行会社のカウンターに行っても航空券を買うことは可能です。しかし、法的な責任については以下の通り厳格に区分されています;

<法規制上の位置付け>
エアラインビジネスは主として航空法(詳しくは“航空法抜粋”参照)の適用を受け、航空運送事業として、以下が義務付けられています;
輸送の安全確保の責任
運賃、及び料金の設定と国土交通大臣への届け出(認可ではない!)
③ お客様とエアラインの権利・義務関係に係る運送約款(例:ジャル国内線運送約款ジャル国際線運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けること
④ 国土交通大臣への事業計画の届け出と実行の責任

旅行業とは、報酬を得て、
* 運送又は宿泊のサービス
* 旅行者のため代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等のサービスを行うことであり、旅行業法(詳しくは“旅行業法抜粋”参照)の適用を受けます。旅行業を行う者は、国土交通省の外局である観光庁に登録を行う必要があり、且つ、旅行業務の取扱いに関し旅行者と締結する旅行業約款(例:ジャルパック旅行業約款を定め、観光庁長官の認可を受けなければなりません

尚、大手のエアラインは、自社グループの中に旅行業を行う子会社を持っているところが多く、両者の区別が分かりにくくなる原因になっているものと思われます

航空券販売の歴史

航空券販売の歴史は、航空会社の競争環境と深い関係があります。従って、1980年代後半から国策として行われた「規制緩和」が、航空券の販売方法の変遷に大きな影響を及ぼしたことは言うまでもありません。規制緩和に係る詳しい説明は“航空規制緩和の歴史”をご覧ください

1.DC8/B707/B727の時代(1960年代まで)
① この頃、航空券の販売は航空会社自らが実施していました。従って、お客様の利便性を確保するため、日本国内や海外の主要都市、主要ホテルには大きなコストをかけてエアラインのチケッティング・カウンターを設置していました
② クラス別の正規運賃が主流であったため、 実収単価は非常に高く、搭乗率(Load Factor)は多少低くても採算がとれる環境にありました
③ 国際線の運賃は、多くの主要な航空会社が加盟する国際民間航空連盟(IATA“International Air-Transport Association”)の協定運賃であり、航空会社間の価格競争はそれほど厳しいものではありませんでした
④ この時代、ビジネスのお客様が主流であって、観光は限られた人の贅沢なものとされていました

2.B747の登場(1970年代)
1970年に登場したB747によって、提供可能な座席数の飛躍的な増加(1機当たり2倍以上!)が図られたことで、席当りコストが低下したものの、ビジネスのお客様や贅沢な観光目的のお客様では席が埋まらない事態が起こりました
この状況を打開する為に考え出された販売方法が安価なパック旅行」です。実収単価が多少下がっても席当たりコストが低いために航空会社として利益が出せることから、観光需要の掘り起こしに大きな効果をあげました。B747の導入を積極的に行ったJALが開発したジャルパックが特に有名です

大量販売の為にエアラインは旅行会社に大量の席を安くまとめて卸し、旅行会社は、宿泊、その他の地上サービスをこれに付加することによって、実質的に自身で値決めを行って販売することが可能になりました

3.大競争の時代(1980年代)
日本経済の飛躍的な発展に合わせ、各エアラインは先を競って大型航空機(B747、DC10、L1011)の導入を行った結果、提供座席数の急増に伴うエアライン間の競争が激しくなりました
一方、国民全体の可処分所得の急速な増加に伴い、旅行費用の大幅な低下と相俟って、国内、海外を問わず観光が庶民の身近なレジャーとして定着することになりました。国内線や近距離国際線だけでなく、戦争直後にヒットした歌謡曲「憧れのハワイ航路」が、庶民の手の届く旅行の対象になりました。しかも飛行機で、、、この時期は私がダイヤ関係業務の担当であった時代に重なりますが、臨時便と併せ、一日当たり7機のB747がハワイ向けに飛ぶ日があったことを思い出します

旅行会社は、膨大な観光需要に支えられて全国各都市に支店を展開した結果、その利便性から個人のお客様の航空券販売の取り扱いも一般的になっていきました。旅行会社は、個人のお客様に販売した航空券の券面額の9%程度の手数料が手に入ることから、単価の高いビジネスのお客様の獲得にも本腰を入れるという、本末転倒の事態も起こってきました

更に、エアラインが団体旅行用として旅行会社に卸した大量の席の売れ残りを、個人のお客様に安価に提供するという、所謂“エアオンリーが市場に出回ることとなりました。これは明らかに航空法がエアラインに課している認可運賃の仕組みを壊す脱法行為ではあるものの、安い運賃を求めるお客様の支持があり取締りは難しいものでした。一方において、航空券の“定価販売”は有名無実となり、エアラインが直販を行っていた日本国内や海外の主要都市、主要ホテルのチケッティング・カウンターはその存在意義を失うこととなりました。因みに、私が赴任した台湾では、1995年に広い面積を占めていたチケッティング・カウンターを閉鎖し、当時人気の高かった「本間ゴルフ」の店舗として貸し出したことを思い出します

4.厳しいリストラの時代(1990~2,000年代)
1990年代、日本経済はバブルが崩壊し未曾有の危機に直面しました。航空需要も低迷し、航空ビジネスは以下の様な対応策で再構築を行うことを迫られることとなりました;
航空機の “ダウンサイジング/Down Sizing
B747、MD11サイズの航空機を運航している路線を、より小さなサイズの航空機(B767/200~250人)で運航することを意味します
この時期に経営企画室にいた私は、既に大量に購入契約を結んでいたB747-400をより小さい新機種の777に契約を切り替えることに苦労していたことを思い出します
② 人件費コストを削減する為に、外人パイロットの導入有期雇用CA(客室乗務員)の採用を行う
③ お客様の“囲い込み”を狙ったFFP(Frequent Flyer Program/マイレージ・プログラムとも言います)の導入を行う(⇒ご利用の多いお客様に実質的な値引きを行うことになるので、実収単価の低下を齎すことになります)

④ 運賃に係る規制緩和が行われたことで、下記の様なLCC(Low Cost Carrier/格安航空会社) が登場しました;
* ジャパン・エアチャーター(Japan Air Charter):日本航空100%保有のチャーター専門子会社で、DC10を使用し、外人パイロットの採用タイ人CAの採用を行いました
* ジャル・エクスプレス(JAL Express/JEX):日本航空100%保有の国内線子会社で、B737-400を使用し、外人パイロットの採用有期雇用CAの採用を行いました
* スカイマーク(Skymark):新しく生まれた航空会社で、B767を使用し、外人パイロットの採用有期雇用CAの採用を行いました
* エア・ドゥ-(AirDo):北海道を中心とした路線に特化する新しく生まれた航空会社で、B767を使用し、外人パイロットの採用有期雇用CAの採用を行いました

⑤ エアラインが価格決定権を取り戻す為に以下の対応を始めました;
* 旅行会社による航空券販売に支払う手数料を廃止し、代わりにエアライン自身によるネット販売(ウェッブ販売に重点を置く
* 運賃に係る規制緩和を積極的に活用することにより、各種の割引運賃を設定する

2010年の日本航空の破綻、新しく生まれたLCCが破綻し、大手エアラインの資本系列に入るなどの爪痕を残しつつ、再びエアライン・ビジネスが活況を取り戻しつつあります

運賃戦略

航空運賃に関する戦略を論ずる場合、まず以下の様な基本的な事項を押さえておく必要があります;
1. 運賃に関わる規制
国内線の航空運賃に関しては、1990年代に行われた大幅な規制緩和(詳しくは航空規制緩和の歴史を参照してください)の結果、運賃そのものについての規制は殆ど無くなったと言えますが、国土交通大臣への事前の運賃の届け出義務は残っています。また、差別不当な競争を齎す恐れがある運賃設定に関しては国土交通大臣が変更命令を出すことができるようになっています
国際線の航空運賃に関しては、国家同士の条約、協定などが必要となるため、国土交通大臣に認可権を残してあります
詳しくは航空法105条、及び航空法施行規則215条、216条をご覧ください(運賃関連の法規制

2.価格弾力性(Price Elasticity)
運賃を決める場合に、その路線の需要の動向を見極めなければ利益を極大化させることはできません。運賃を下げれば需要は増え、運賃を上げれば需要は減るという一般則だけでは運賃を決めることはできません。ここで登場するのが以下に示す「価格弾力性」という指標です;

価格弾力性 = -(需要の変化率 ÷価格の変化率)

計算例:価格を10%下げた時、需要が15%増加した場合;
価格弾力性=-{+15÷(-10)}=1.5

価格弾力性が“1”以下である場合、価格を下げると損をすることになります
価格弾力性 が“1”だった場合、価格を下げても意味がないことになります
価格弾力性 が“1”以上であった場合、価格を下げるとそれ以上に需要が増加することになります。言い換えれば、運賃を下げることによって下げた割合以上に総収入が上がることになります。LCCの低価格戦略はこれを狙っていることが分かります。一方、高コストの航空会社は価格を下げる余力がない為、「運賃を下げると客数は増えても赤字」になり、運賃を下げないと「お客様が競合他社に取られ赤字」になるというジレンマに陥ります
従って、LCCと比べ高コストのエアラインは、運賃以外のサービス(客室の快適性向上、CAのホスピタリティー、定時性、など)で競争力を高める必要があります
一方、繁忙期にあっては、供給を増やしても価格を下げる必要が無い(価格弾力性が“1”)ので、供給余力のあるエアラインが断然有利になります

3.運賃戦略の実際
価格弾力性という指標は、あくまでマーケットの状況を価格を変数として定性的に説明するものでしかありません
実際の各種運賃(次項参照)の設定や、それらの運賃種別ごとの予約コントロールは;
路線毎の需要状況:ゴールデンウィーク、夏休み期間、年末年始などの繁忙期、閑散期、各種のイベント、キャンペーンなどの実施計画、などで大きく変動します
② 路線ごとの供給計画:競合他社の供給計画(想定)と自社の供給計画(臨時便を含む)のバランスにより需給状況は大きく変動します
③ 過去の路線運営に係る経験(暗黙知)

などをもとに最適化しています。これが所謂“イールド・マネージメント”です。搭乗率と実収単価の二兎を追う、ある意味“虫のいい話”なので、それだけ一筋縄ではいかない難しいマネージメントとも言えるかもしれません
最近起こしたJALのオーバー・ブッキングによるフライト・キャンセルの事例(181122_予約超過で福岡⾏き⽋航 ⽇航、400⼈影響)も、イールド・マネージメントのリスクの一つとして、オーバー・ブッキングによるフライト・キャンセルがあり得ることの認識と、これに対応する適切な対策を準備しておく必要があることを示唆しています
<参考> JALは1967年から長い間使っていた旅客系基幹システムの「JALCOM」をAI機能が強化されているクラウドベースのシステム「Altea」に変更し、収入増加を実現しています(詳しくは、日経クロステック記事参照:181101_JAL旅客系システム刷新で「半期で130億円増収」

運賃の種類

1.エアラインが提供する国内線運賃
① クラス別普通運賃;
有効期間が長く、予約の変更やキャンセルの自由度が高いという特徴があります。また、緊急に利用エアラインの変更をしたい場合でも、追加的な費用なしに空港での簡単な手続き(“Endorsement”/裏書)で可能なので、ビジネスのお客様などには便利な運賃です

② 割引運賃:
割引率の違いにより、売り出し開始時期、有効期間、予約キャンセルの自由度により大きな差を設けています。エアラインは単価の高い普通運賃に、こうした各種の割引運賃を組み合わせてイールドマネージメントを行っています
<参考>現在の国内線各社の運賃は、以下のように驚くほど多様になっています
*JAL国内線運賃一覧
*ANA国内線運賃一覧
*Skymark国内線運賃一覧
*Airdo国内線割引運賃

各種運賃を組み合わせてエアラインが利益を上げる仕組みを、わかりやすく説明すれば以下の図の様な構図になります(簡単の為それぞれの運賃を購入するお客様の人数の要素を省いてあります);

運賃の種類と実収単価
運賃の種類と実収単価

2.エアラインが提供する国際線運賃
① クラス別普通運賃:国際民間航空連盟の協定に基づいた運賃(別名“IATA運賃”);
運賃に関わる自由化の協定を国家間で結んでいる場合を除き、未だに国際線運賃のベースとなってる運賃です。その理由は;
国際線のビジネス旅客は、他エアラインとの連帯運送(乗り継ぎ、利用航空会社の変更に伴う“Endorsement”)が頻繁にあることからエアライン間の清算をスムースに行う必要があり、エアライン間で共通の運賃協定は非常に有用性が高いこと、また現在殆どの国際線を運航するエアラインがIATAに加盟(現在290社)しており、ここでは、特定国・特定エアラインの利益に偏らない全会一致主義が貫かれているためです。因みに、IATAでは以下の様な機能を果たしています;
* IATAの運賃調整会議の主催
* IATA加盟エアライン間の運賃清算を行うクリアリング・ハウスの運営
* 主要な混雑空港における発着枠調整会議の主催

<参考> 独占禁止法との関係;
運賃協定は、明らかに独占禁止法が原則禁止する価格カルテルに相当します。利便性が高い点を考慮し、従来世界レベルで独占禁止法適用除外とされてきましたが、近年、EU、オーストラリアは適用除外を止めており、代わりに“Flex Fare”という自由度の高い料金設定を可能にしています
一方、米国はオープンスカイ政策(詳しくは航空規制緩和の歴史をご覧ください)とセットで反トラスト法(米国の独占禁止法)適用除外を認める政策を取っています。尚、オープンスカイ協定を結んでいる国とはIATA運賃の適用も可能となっています

クラス別普通運賃:アライアンス内協定運賃
アライアンス内のエアライン間で協議の上設定される(勿論、二国間の条約、協定で認められることが前提)もので、航空会社独自の多種多様な運賃(キャリア運賃)の設定が可能になっています。ただこの運賃では、アライアンス内のエアライン同士以外の連帯運送は簡単にはできません

③ クラス別普通運賃:二国間協定運賃
二国間の条約、航空協定等で指定された航空会社間が対象となる運賃です。この指定されている航空会社間で協議の上決定される運賃です。勿論、IATA協定運賃の採用も可能となっています

3.チャーター便の運賃
チャーター便とは航空機1機丸ごと貸切ることですが、運賃について航空規制の対象にはならず、航空会社の貸切に係るコスト(航空機の減価償却費、パイロット・CAの人件費、整備費、燃料費、着陸料、駐機料、空港関連人件費、その他間接費)を基に用機者との間の交渉で運賃が決まります。昔、DC8型機が機種更新される時期に、余剰となったDC8型機を使ってスリランカに宝石の買い付けを行うチャーター便が何度も催行されたことを思い出します。また皇室、政府要人などのVIP輸送に関してもチャーター便が使われていましたが、1992年に政府専用機としてB747-400が2機導入されてからは殆ど催行されていません

4.旅行会社が提供する運賃;
航空会社は、旅行会社にホテル、等の地上手配を組み合わせることを前提とした包括旅行運賃を設定(航空会社による国土交通大臣への届け出が必要)し、一定席数まとめて提供しています
かつては団体での旅行を前提とした「団体包括旅行運賃」として旅行会社に売られていましたが、個人旅行が主流となってきたことから、1994年に個人包括旅行割引運賃(Individual Inclusive Tour Fare/IIT/)の導入が行われ、団体包括旅行運賃は廃止されました
<狙い>
航空会社は安い運賃の席を卸すかわりに、お客様を集めるのが難しい閑散期にまとまった席数分の収入が保障されます
一方、閑散期に多くの席を販売してくれる旅行会社には、以下の様なインセンティブ(販売奨励施策)を付加することも行っています;
① 販売席数に応じたキックバック(⇔実収単価が多少下がります)
② 繁忙期の席数割り当て増(⇔繁忙期におけるエアラインの実収入が多少下がります)
このインセンティブによって、旅行会社は席を安い料金で仕入れ、新たな需要を生み出す安い旅行商品を作ることが可能になります。ただこの仕組みは、エアラインにとっては、ある意味航空券の“先物取引”の性格を持っており、実収単価の高い普通運賃のお客様を取りこぼすリスクも孕んでいます。従って、前項で説明した“イールド・マネージメント”を精度高く行うことがが不可欠となります

最近は、国内、国際ともに多くのエアラインが路線ごとに鎬を削っており、旅行会社は複数の航空会社間で競合させたうえで仕入れを行うため、繁忙期を除けば、旅行会社にとって「買い手市場」となる場合もあり、大手のエアラインにとっても中々厳しい値決めが必要(仕入れ価格は航空会社によって異なる)となる場面もあります
大手エアラインの子会社の旅行会社はエアライン選択の自由度が無い為、こうした買い手市場には参加できないものの、エアラインのブランド力を背景に単価の高い旅行商品を売り込めるというプラス面もあります

旅行社は、エアラインが提供する包括旅行運賃、インセンティブの他に、③ 地上手配から得られる各種のキックバック(下図の“KB”)を併せて、普通運賃からは説明できない程の安いパック料金の設定を行うことがあります。その仕組みを、わかりやすく説明すれば以下の図の様な構図になります(簡単の為、それぞれのエアライン、ホテル、お土産屋などの利用人数の要素を省いてあります);

旅行会社の運賃の構造
旅行会社の運賃の構造

共同運送

コードシェア(Code Share)
航空会社同士が、それぞれの便名を付けて共同で運航を行う形態のことをコードシェアといいます。これを日本語では“共同運航”または“共同運送”と呼んでいますが、法規制上の区別はありません。
ただ、航空会社によっては、航空機とパイロットを提供する側の便を“共同運航便”、提供を受ける側の便を“共同運送便”と使い分けているケースもあります。いずれの場合も、航空機の運航責任は航空機とパイロットを提供する側にあります

ニューヨーク線・コードシェア状況_2018年12月3日
ニューヨーク線・コードシェア状況_2018年12月3日

上の羽田空港・ニューヨーク線の出発便案内で、ANAが777で運航するNH0110便は、シンガポール航空、タイ国際航空、ユナイテッド航空と、それぞれのエアラインの便名でコードシェアを行っています。同じように、JALが777で運航するJL0006便は、アメリカン航空、ブリティッシュ・エアウェイズ、マレーシア航空、ラタム航空、ラタム航空ブラジルと、それぞれのエアラインの便名でコードシャアを行っています
アライアンスを組むエアライン同士で行われているこうしたコードシェアは、搭乗率の向上や実収単価の向上に大きく寄与しており、LCCに対する極めて有効な対抗策として、近年大手のエアライン同士で大々的に実施されるようになりました

国内線についても、JAL、ANA、それぞれのグループ内子会社や提携エアラインとの間で、路線需要に合わせること、運航頻度を確保すること、などの目的でコードシェアを行っています。また、アライアンスを同じくする外国エアラインの国内区間のコードシェアも外人観光需要の増加に合わせ最近は増えてきました

国内線のコードシェア便
国内線のコードシェア便

上記の通り、国際線、国内線ともに、現在の共同運送の形態は、コードシェアが主流になっていますが、これまでのエアライン・ビジネスの歴史の中で以下の様な共同運送の形態も存在していました;
ウェットリース(日本における定義):日本の航空会社同士で、航空機・乗員を借りて自社便として運航する形態航空機の運航責任は借りる側にあります(⇒運航責任を果たすために、借りる側が貸す側と同じ機種を運航していることが必要となります)。現在でも国内線のグループ会社、提携会社同士で行われることがあります
運航委託(日本における定義):外国エアラインの航空機・乗員を借りて自社便として運航する形態。航空機の運航責任は航空機・乗員を提供する外国エアライン側にあります。現在では行われていません
スペース・ブロック:他社便の一部の席をブロックし、他社便名のままで自社の旅客を運送する形態で営業協力便ともいいます。ウェットリース、運航委託、コードシェアなどが一般化する前はこの形態が普通に行われていました。米国や欧州への乗り入れ空港が限られていたため、乗り入れしていない空港への乗り継ぎ客の席を確保する為に国際線では屡々行われていました

アライアンス

現在、多くのフラッグ・キャリア(National Flag Carrier/国を代表するエアライン)や大手のエアラインが参加しているアライアンスは、国際線エアライン・ビジネスのやり方を大きく変えたといってもいいと思います。一方、LCCは低価格によってお客様を獲得する戦略なので、通常アライアンスには加盟しません
1.アライアンスの目的
エアライン同士が、以下の様な高品質で共通なサービスの提供を行うことにより、コストを下げ、実収単価の高いビジネス旅客の囲い込みを行う
① FFP(Frequent Flyer Program/マイレージ・プログラム)におけるマイルの共通化(FFP協定)
② 空港での高品質のサービスの提供とコストダウン:空港のVIPラウンジの共有、 空港でのチェックイン・カウンターの相互利用
③ コードシェア便の相互提供による路線網の拡充と自社路線集約によるコストダウン
④ 運賃協定による価格競争力の強化(運賃のプール制、など)

2.メガ・アライアンス
現在、以下の三つのメガ・アライアンスには、それぞれ多くのエアラインが加盟しており、それぞれのアライアンス内の加盟エアラインだけで世界中の都市をほぼカバーしています。尚、アライアンス加盟に伴い、エアラインは共通“Logo”の表示が義務付けられます
スターアライアンスStar Alliance
発足:1997年5月
加盟航空会社:28社
主な加盟エアライン:ルフトハンザ航空、ユナイテッド航空、ANA、シンガポール航空、タイ国際航空
就航地(ウィキペディアより):192ヶ国、1330空港
保有機材数(ウィキペディアより) :4657機
年間輸送旅客数(ウィキペディアより):6億4千万人

ANA StarAliance Logo
ANA Star Aliance Logo

② ワンワールドOne World
発足:1999年2月
加盟航空会社 :13社
主な航空会社;ブリティッシュエアウェイズ、アメリカン航空、JAL、カンタス航空、キャセイ航空、カタール航空
就航地 (ウィキペディアより):152ヶ国、992空港
保有機材数(ウィキペディアより) :3324機
年間輸送旅客(ウィキペディアより)数:5億7千万人

JAL OneWorld Logo
JAL One World Logo

スカイチームSky Team
発足:2000年6月
加盟航空会社 :20社
主な航空会社:エールフランス、KLMオランダ航空、デルタ航空、大韓航空
就航地 (ウィキペディアより):187ヶ国、1064空港
保有機材数(ウィキペディアより) :2819機
年間輸送旅客数(ウィキペディアより):5億5千万人

3.アライアンスの枠を越えたエアライン同士の提携
最近、アライアンスの枠を肥えた提携が始まっています
ワンワールドに加盟しているJALと、スカイチームに加盟している中国東方航空が提携しました。詳しくは以下の日経新聞の記事をご覧ください:180727_中国東方航空と共同事業
ワンワールドに加盟しているJALと、スカイチームに加盟しているガルーダ・インドネシア航空が提携しました。詳しくは以下の日経新聞の記事をご覧ください:180906_日航とガルーダ、共同運航など包括提携を発表

スターアライアンスに加盟しているANAとスカイチームに加盟しているアリタリア航空が提携しました。詳しくは以下の日経新聞の記事をご覧ください:180322_ANA・アリタリアと共同運航

以上

航空規制緩和の歴史

航空規制とは

「航空規制の緩和」というと競争が盛んになって「運賃が安くなるんだろう」程度の認識しかないのが一般的です。しかし、規制緩和が企業間の競争原理を働かせるという意味では正しいのですが、エアラインにとって安全の確保が何よりも大切であることや、空港整備、航空管制システムの構築、などのインフラが国家レベルの巨額の投資を必要とすることから、他の事業の様な自由競争に任せれば適正な競争が行われてゆくという訳にはいきません
また、国際線に関しては上記に加え、自由競争に任せれば、国力の差によって弱小国のエアラインなどは生き残れなる可能性が高くなります
こうしたことから、各国の規制当局(日本の場合は国土交通大臣)は以下の分野毎に規制緩和を慎重に行ってきました

航空規制の分類
1.参入規制:就航路線に対して国による規制を行うこと(航空会社は就航したい路線に参入できないことがあります)
2.需給調整規制:路線ごとの供給量(便数x席数)に対して国による規制を行うこと(航空会社は路線毎の供給量を勝手に増やすことができません)
3.運賃規制:路線毎の運賃に対して国による規制を行うこと(航空会社は需要、及び競争環境に応じた運賃の自由な設定が出来ません)
4.混雑空港における発着枠の規制:空港の時間帯別の発着可能便数以内に収まる様、発着時刻に制限を課すこと(競争制限にはなるものの安全上容認される規制ですが、定期便に関しては、お客様の利便性を勘案し、過去保有している発着枠の権利がある程度認められます)
5.技術規制:航空機の安全確保のために規制を行うこと(過度の規制でない限り、安全最優先の観点から容認されます)
6.航空会社設立認可:航空会社設立に一定の条件を課すこと(航空会社に運送責任を全うさせる為に必要と考えられる規制は容認されます)。また、外国資本による航空会社設立については、国家間の互恵平等の原則が適用され、少なくとも出資率の制限が加わる(日本の場合、外資は3分の1未満)ことはどこの国でも行われています(⇔国益優先)

航空規制緩和とは、こうした規制項目毎に、企業間の競争状況(著しく競争が歪められないように)、空港、航空管制のシステムの整備状況、などを勘案しつつ徐々に自由競争に近づけていくことです

米国の航空規制緩和

第二次世界大戦終了後、米国は圧倒的な経済力と航空機開発・生産能力を背景に、民間航空輸送の最先端を走っていました。従って、国内線だけでなく国際線においても、以下のように航空規制緩和を先導してきました

国内線における規制緩和の流れ
1.1940年代から“CAB/Civil Aviation Bureau”によって行われていた規制;
路線参入は1930年代に免許を受けた者に限る( “祖父条項/Grandfather Clause”と言います)
② 1969年以降は、既存会社の新規路線参入も事実上不可能であったと言われています(“ルート・モラトリアム/Route Moratorium”と言います)

2.1978年、航空会社規制緩和法が成立し、参入規制、運賃規制が撤廃され、同時にこれらを行ってきたCABという組織が消滅しました。この結果、沢山の新規航空会社が誕生しました

3.1979年~82年のオイルショックにより、燃油費が高騰し他結果、多数の航空会社が合併、乃至倒産によって消滅しました

4.オイルショックから立ち直った米国は1980年代前半は好景気に恵まれ、競争による実質運賃の低下が実現しました

5.1980年代後半から、1990年の湾岸戦争にかけて景気が後退していった結果、航空会社は再寡占化の方向に向かい、アメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空の3メガキャリア体制が確立しました規制緩和政策後の米国航空会社数の推移

国際線における規制緩和の流れ
1.バミューダ協定:1946年に米英間で結ばれた二国間協定で、その後の二国間協定の雛形 となりました。英国は第二次世界大戦の戦勝国であるものの、経済力及び航空事業の規模では米国との間で雲泥の差があり、対等の競争を実現するために、米国側の輸送量を制限することになる「二国間の輸送量均衡の原則」で協定が結ばれました

2.ケネディ大統領により、反規制主義を謳った「国際航空運輸政策に関する声明」が出されました。また、1978年、アルフレッド・カーンにより「合衆国が国際航空交渉に関して取るべき態度声明(規制緩和推進)」が出されました

3.1980年、「国際航空運送法」が成立しました。この中で、参入規制、運賃規制を大幅に緩和、②規制緩和の海外輸出(包囲理論)、③規制反対の国とは二国間協定を締結(規制撤廃)、などの原則が謳われました

4.大型M&A(Mergers & Acquisitions)ブームの到来:1985年、カール・アイカーン(米国の億万長者;乗っ取り屋)によるトランスワールド航空の買収、1989年年 チェッキー・グループによるノースウェスト航空の買収、などが行われました。しかし、英国航空によるユナイテッド航空の買収計画は米国政府の承認が得られずに失敗しました(⇔国益優先)

5.1990年1月、米国との自由型の航空協定締結を条件に外国航空会社に国際線未就航の米国都市乗り入れを解放しました

6.クリントン政権では、再び規制の方向へ転換しました。1993年、ユナイテッド航空によるロンドン線運航計画が却下され、ノースウェスト航空による同線の運航計画も却下されました

大手エアライン、生き残りの足跡
米国は、上記のように可能な限り自由競争を原則とする政策をとってきたため、コスト競争に敗れれば、“即破産!”の道を歩むことになります。尚、各社共通で被った強烈な経済的なインパクトは;
A.2001年の同時多発テロ以降の航空需要の低迷と燃油費の高騰
でありまた、これを乗り切るために殆どの会社が;
B. チャプター11(通称“破産法”;日本では“会社更生法”、“民事再生法”がこれに相当しますが、内容は日本と同じではありません)基づく再建を米連邦政府に申請しました。米国ではパイロット、CA(客室乗務員)、整備士は極めて強力な職種別組合に加盟しており、労働条件の変更は極めて難しく、これがチャプター11による再建(⇔コスト削減)を目指す原因になっています
また、利益性の高い路線権の獲得、重複する路線の整理統合などの目的で;
C. 企業の買収、経営統合を行うケースも目立ちます

1.デルタ航空
Aにより業績が急速に悪化し、2005年に「Bを申請しました。この結果2006年以降は業績を回復させています
ノースウェスト航空は、Aにより業績が急速に悪化し、2005年に「Bを申請しました。この結果2007年以降業績を回復させましたが、2010年にはデルタ航空に買収Cされています(買収金額:177億ドル)

3.ユナイテッド航空
1985年、経営難にあえいでいたパンアメリカン航空の太平洋路線を買収(C)しました(1991年にパンアメリカン航空は倒産しました)。Aにより業績が急速に悪化し、2002年に「Bを申請しました。一旦再建したものの、2009年には再び「Bを申請し、再建を行いました
2010年にはコンチネンタル航空との経営統合C」を行っています

4.アメリカン航空
Aのインパクトに関しては、コスト削減を徹底する中で乗り切ることに成功しましたが、2011年には遂に 「Bを申請し再建を果たしました
2012年に、USエアとの合併交渉を開始しましたが、米司法省が反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴し交渉は一旦頓挫しましたが、その後、ニューヨーク、ワシントン等の混雑空港で LCC (格安航空)に二社の発着枠を譲ることで司法省との和解が成立したため、2013年に合併完了Cしました

5.サウスウェスト航空
1971年に創業。Aのインパクトに対しても社員のレイオフを行っていません。従業員の給与水準は大手エアラインと比べ高い水準を維持しており、また事故率の極めて低い会社として有名です。路線網の拡大の為に「Cも行っています

欧州の航空規制緩和

欧州の航空規制緩和は、欧州共同体の統合の深度(EC/European Community⇒EU/European Union)に合わせて以下のように行われました;

1.ローマ条約(1958年)で 欧州委員会による「欧州共通の航空政策の提言」が行われたものの、 航空、海運は当面除外されました

2.1979年の第一次メモランダム、1984年の第二次メモランダム、1988年のパッケージ-Ⅰ、1990年のパッケージ-Ⅱ、によって二国間協定下での規制の柔軟化、競争の促進が徐々に行われてゆきました

3.1993年のパッケージ-Ⅲによって、①二国間の輸送力割り当ての完全自由化、②運賃規制は二重不承認主義(double disapproval/少なくともどちらかの国が承認すれば申請された運賃は認められる)、③参入規制が完全に撤廃、が実現しました

4.1997年より、④国内路線参入規制(カボタージュ)が撤廃され、これによってEU域内の完全自由化が完了しました。また同時に、共通免許規定(パイロット資格、航空機の型式証明、等)が制定され、技術規制に関してもEU域内では完全に一国と同じ扱いになりました
⇒ この結果、EU内の国同士の路線は“国内線と同じ扱い”となり、EU内の中・小の航空会社の生き残りは非常に難しくなりました

最近の欧州航空会社の状況
航空規制に関してEU域内の統合が図られたことにより、厳しい競争が始まりましたが、現在までの大手エアラインの状況は以下の通りです;

1.ブリティッシュエアウェイズ:1987年に民営化
2.ルフトハンザ航空:規制緩和、航空不況、等の厳しい経営環境の中で競争力を強化し、破綻に瀕した航空会社を吸収し現在に至っています

3.スイス航空:2001年の同時多発テロ以降の航空需要の低迷と燃油費の高騰で業績が急速に悪化し、2002年に倒産。スイス航空の子会社だったクロスエアが、スイス政府などの援助により、スイス航空の資産を受け継ぎました
4.サベナ・ベルギー航空:2001年の同時多発テロ以降の航空需要の低迷と燃油費の高騰で業績が急速に悪化し、同年に倒産しました
5.オーストリア航空:2009年9月、ルフトハンザ航空が株式の90%を取得しその傘下にはいりました

6.エールフランス・KLMオランダ航空:2004年に両社の間で持株会社方式で経営統合が実現しました
7.ライアン航空:1985年に設立し、“激安”運賃で欧州航空界を席巻しました(例えば、ロンドン-パリ間の料金“0.99ユーロ”など)。ヨーロッパのLCCの中では最大の路線ネットワークを展開しています

8.アリタリア航空:2008年3月、一旦エールフランス・KLMによる買収を受け入れたものの、4月になって労働組合の強い反対により振り出しに戻りました。2008年8月、イタリア政府による収益を見込める航空事業会社と清算対象会社に分割する提案に同意し、約1,800億円の負債を抱えて会社更生手続きに入りました。2009年1月アリタリア・イタリア航空(完全民営化)として発足しましたが、その後も経営難が続きました
2013年8月、中東のエティハド航空が49%の株式取得しました
しかし、その後もLCCにシェアを奪われたことなどにより、2017年5月に再び経営破綻に陥り、売却手続きを開始しましたが、人員整理・賃金削減を従業員組合が拒否していること、ルフトハンザ航空など出資に興味を示す航空会社との条件の折り合いがつかないことなどにより、2018年現在、未だ決着していません。また、2018年3月の総選挙で第一党に躍進したポピュリズム政党「五つ星運動」の党首が、外国企業への売却に対して反対の立場を表明しており2018年現在再建の行方は混沌としています

日本の航空規制緩和

45-47体制:1970年代
45-47体制とは以下の政府方針を意味しており、一般にどの航空会社も犯すことができないという意味で「航空憲法」と言われてきました。以下をご覧になるとわかると思いますが、実質的に厳しく競争を制限する内容となっており、まだ歩き始めたばかりのエアラインの健全な育成を政府として強力にバックアップする内容となっています;

日本航空・東亜国内航空・全日空
日本航空・東亜国内航空・全日空

1.昭和45年閣議了解(1972年7月1日/主に参入規制
① 日本国内航空と東亜航空を合併させ、東亜国内航空を発足させる。この会社には当面ローカル線のみの運航を認める
② 需要の多いローカル線は2社で運航させるが、過当競争は排除する
国際線定期便は日本航空が一元的に運航する
④ 近距離国際線チャーター便は日本航空と全日空が運航する

2.昭和47年運輸大臣通達(1972年7月1日)
[事業分野]
① 日本航空:国際線国内幹線(札幌、東京、大阪、福岡、那覇)
② 全日空:国内線近距離国際チャーター便
③ 東亜国内航空:国内ローカルル線、一部路線のジェット化の認可
[輸送力の調整(共存・共栄の為の競争の制限)]
増便の認可基準を以下の通りとする
④ 国内幹線: 搭乗率65%以上
⑤ 国内ローカル線:搭乗率70%以上
⑥ 国内幹線への大型ジェット機の投入制限(日本航空と全日空の大型ジェット機の投入は1974年以降とする。但し沖縄線は1972年から投入する)
[協力関係]
幹線に於ける運賃のプール制と先発企業による後発企業(東亜国内航空)の育成

45-47体制の修正の動き:1983年~85年
45-47体制の中で力を蓄えてきた全日空が、国際線への進出を強力に要請していく中で、以下のように徐々に規制緩和の動きが始まりました。ただ、全日空の国際線進出については、航空大国である米国との条約、航空協定などの厳しい交渉(⇔交渉は常に“Give & Take”)が必要となると同時に、国際線の権益をほぼ独占してきた日本航空の反対があった為、そう簡単ではありませんでした;
* 1983年8月 日本貨物航空株式会社の設立認可(出資会社:全日空、川崎汽船、山下新日本汽船、日本通運、昭和海運、ジャパンライン)
* 1984年6月 全日空ハワイチャーター便の認可(ハワイ路線は日本航空のドル箱路線であった)
* 1985年4月 日米暫定協定締結
* 1985年5月 日本貨物航空、東京=サンフランシスコ線開設
* 1985年6月 国内線新規旅客割引運賃の導入
* 1985年7月 臨時行政改革推進審議会で事業分野の見直しを含め、競争政策導入を答申
* 1985年9月 運輸大臣は「今後の航空企業の運営体制のあり方について運輸政策審議会に諮問

45-47体制の崩壊:1980年代後半
運輸政策審議会「今後の航空企業の運営体制のあり方についての審議経過に合わせ、以下の様に規制緩和⇒競争促進に政策の転換が始まりました;

[運輸政策審議会中間答申](1985年12月)
昭和45年閣議了解と昭和47年運輸大臣通達の廃止
* 1986年3月 全日空東京=グアム線定期便開設認可

[運輸政策審議会答申“今後の航空企業の運営体制のあり方について”](1986年6月)
国際線の複数社制
日本航空の完全民営化(日本航空株式会社法の廃止、政府保有株の放出)JAL_民営化国内線に於ける競争促進施策の推進
④ 航空交通容量の増大
*1986年7月 日本航空の羽田=鹿児島線開設認可

[航空局長通達(航空企業の運営体制について)]
国内線における新参入基準の設定(新たに2社参入路線、3社参入路線の旅客需要基準を設定した)
*1986年7月 日本エアシステムの羽田=那覇線、東京=ソウル線開設認可

規制の原則撤廃への道:1990年代
米国や欧州に於ける大幅な航空規制緩和の流れを受けて、日本の航空政策も規制全般に当たって規制緩和の方向に大きく舵を切りました。また、羽田空港、成田空港、関西空港など基幹空港の整備が進み、発着枠の余裕が生まれてきたことも規制緩和の動きに拍車をかけました;

[運輸政策審議会答申“今後の国際航空政策のあり方について”](1991年)
新運賃制度の導入:新Yクラス運賃(Y2);国際乗り継ぎ運賃;ゾーン運賃;基準運賃改定方式;国際貨物運賃につき包括的に幅を持って認可する制度の導入
多様な運航形態の導入:外国人パイロットの導入促進;運航委託;ウェットリース;コードシェア;チェンジ・オブ・ゲージ

航空審議会答申“我が国航空企業に於ける競争促進政策の推進について](1994年)
③ 技術規制の見直し:定例整備の海外委託;パイロット訓練のシミュレーター化促進)
運航形態規制の見直し:ウェットリース、共同運送、コードシェア
国内線競争促進施策の推進:後発企業への一定の便数の確保
運賃規制の緩和:一定の範囲内の営業割引運賃の届け出制

JEX・Skymark・Airdo
JEX・Skymark・Airdo

[運輸省見解発表(1996年12月)
⑦ 交通分野に於ける需給調整規制を原則廃止
* 国内航空路線の需給調整規制は、生活路線の維持方策、空港制約のある空港に於ける発着枠配分ルール等の方策を確立した上で1999年度に廃止

運輸政策審議会に“需給調整廃止に伴う環境整備方策について”諮問(1997年4月)
[運輸政策審議会・航空部会答申](1998年4月)
参入制度:路線毎の認可制から事業毎の認可制(路線設定は原則自由)
運賃制度:現行の許可制から事前届出制(上限、下限運賃撤廃)
⑩ 政策的に維持すべき路線の維持方策
⑪ 生活路線の運航費補助
⑫ 継続的に競争させる為のあり方を公開で検討
発着枠の回収・再配分 ⇒ 後発の航空会社にも一定程度発着枠を配分することができるようになりました

第二世代LCC
第二世代LCC

<チャーター便規制関連>
1982年に制定されたルールでは、以下の3種類のみが認可の対象となっていました;
① 団体貸切(Own Use ):団体が一括して費用負担(⇔単一用機者要件)
② 団体貸切(Affinity):団体構成員が費用負担(⇔単一用機者要件)
③ 包括旅行(Inclusive Tour):地上手配を含め旅行会社などが航空機を貸し切りにすること

2007年年5月16日に閣議決定された「アジアゲートウェイ構想」を受け、包括旅行について以下のルールの撤廃を行いました(⇒定期便以外にチャーター便を設定することにより、より柔軟に旅客需要の積み取りが可能となりました);
* 外国社による複数国の包括旅行を催行する場合、その外国社の所属国で50%以上の日程を消化すること(50%ルール
* 同じ曜日の運航が連続3週を越えないこと(定期ダイヤルール
第三国による包括旅行の催行を禁止するルール

以上により、路線参入基準が撤廃され、運賃の設定も実質的に自由となったため航空会社間の自由競争が可能となり、LCCなど新規航空会社の参入が相次ぐ結果となりました。現在は、大手航空会社も含め厳しい競争が行われており、お客様にとって大幅な利便性向上が実現していると思われます

以上

 

エアラインというビジネス

はじめに

エアラインというビジネスは、言うまでもなく「航空機」という輸送手段を使って、「お客さま(貨物も含む)」を A地点からB地点に運んで収入を得るビジネスです。また別の言い方をすれば、上の写真にある航空機の座席(または、貨物スペース)をお客様に売るビジネスということもできます
輸送業という意味では、このビジネスは鉄道事業やバス事業と同じで;
 商品の貯蔵ができないということが最大の特徴です。つまり、お客様(または貨物)を搭載しないで輸送したばあい、収入はゼロでコストが確実にかかります。これはある意味「生鮮食料品」など、貯蔵すると腐って価値を失う商品(Perishable Commodity)の販売と同じと考えられます。運賃に「定価」が無いと言われるのも、この特徴からきています

また、公共交通機関であるということから、
 極めて大きな社会的な責任を負うこととなります。従って、
安全輸送の責任;事故を起こした場合、刑事処罰(過失傷害、過失致死、等)、損害賠償責任、行政処分(免許停止、事業改善命令、等)の対象になることに止まらず、社会的な制裁(マスコミの追求、被害者の罵詈雑言!、など)も甘受しなければなりません。事故防止の為の巨額な安全投資が必要となることも、このビジネスの特徴です。尚、エアラインの安全投資について詳しく知りたい方は「安全運航を守る仕組み」をご覧ください
定時性確保の責任:定時性を維持するための予備の人員、予備の航空機、予備の部品、などが必要となります
事業継続の責任:会社都合による路線からの撤退や運航便のキャンセルが簡単には出来ません

一方、エアライン・ビジネスと他の運送事業との決定的な違いは;
③ 安全性に対するお客様の関心が非常に高いということが言えます(事故率から見ると一番安全な乗り物であると言われてるにもかかわらず、、、)
事故率については、航空機メーカーが構造設計・システム設計を行う場合、深刻な事故(Fatal Accident)を起こす確率を10億分の1以下とすることを義務付けられています。ただ、現実の深刻な事故の確率は年々改善されてはいますが、ヒューマンエラー、その他想定外の事象によりもっと高くなります(参考:事故統計
お客様が空中を飛ぶことに対し、漠然とした不安感を持っています。事故に結びつかないような軽いトラブルに対しても、その対応を誤まればお客様を失うことに繋がる、こうしたことから技術的なトラブルに対する PR活動が必須となります。また、近距離路線の場合、地上輸送にお客様を奪われることもある程度覚悟しなければなりません(新幹線の路線が開設されると、競合する近距離路線ではお客様の航空会社離れが必ず発生します)
国内・外の航空機事故が大々的に報道され、事故の悲惨さに接する機会が多いことも特徴の一つです。特に、事故現場の悲惨な光景や、被害者家族の悲嘆にくれる映像が繰り返し報道され、事故の悲惨さが一層強調されることで、他社(国内、国外)の事故であっても確実にお客様の減少に結びつきます。従って、エアライン各社は事故抑止に関しては運命共同体とも言えます

ジャーマンウィングA320墜落事故_2015年3月
ジャーマンウィングA320墜落事故_2015年3月(乗員・乗客全員死亡)

また、エアライン・ビジネスは、他のビジネスと比べ、
需要の変化に機敏に対応できないことが、経営のかじ取りを非常に難しくしており、厳しい競争環境の中で一歩間違えれば倒産の危機に瀕することにもなります。その主な理由は;
航空機の調達はリードタイムが非常に長い(新造機の場合、通常3~5年のリードタイムが必要です)。従って、急激な需要の増加というビジネスチャンスに対応するためにはリース機や中古機の活用が必要となりますが、遊休の航空機がいつも市場にあるとは限りません
パイロットの確保が簡単ではありません。パイロットの養成には長い時間が掛かるため、自社パイロットの養成は長期計画に基づいて行われており、急に増・減させることは困難です。また、資格が機種別になっており、機種の限定変更には相応の時間が必要になります。パイロットをリースに頼ることも行われていますが、求める人数、技量のパイロットを確保することは、そう簡単ではありません(参考:140429_つまずいたピーチ航空_パイロット不足が成長の足かせに
空港の容量には限界があります。空港の容量とは、発着枠(総量及び時間帯別)、駐機スポット数、旅客ターミナル面積、などを意味します。特に国際線においては混雑空港における増便は非常に難しく、また、一旦減便すると、今まで持っていた発着枠の権利(Grandfather’s Right/既得権条項)を失うリスクが発生します。その他、
空港のCurfew(飛行禁止時間帯)、国際線においては、CIQ(税関、出入国検査、検疫)の受け入れ容量などに関する制限もあります

運送事業に関しては、安全を第一とする事業運営や交通インフラの健全な競争環境を整えるために、国土交通省は、
各種の規制を行っています。航空自由化の流れの中で、安全にかかわる規制を除き緩和されつつあります

国際線の運航に関しては、
⑥ 相手国との間で条約や航空協定を結ぶ必要があります。国力の違いによってエアラインの実力に大きな差が生ずるので、輸送量(就航便数、航空機のサイズ)の均衡を図る必要があるためです。最近は、航空自由化の流れの中で先進国間では輸送量の制限を設けない、あるいは緩めた条約・協定を結ぶ国が多くなりました

経営上の重要な指標

通常のビジネス同様、最終的には貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)に代表される財務諸表から導かれる各種の経営指標が、経営の舵取りに必須であることは言うまでもありません。しかし、エアライン・ビジネスにとっては、以下の様なエアライン・ビジネス特有の経営指標が経営の舵取りには必須となっています;

A.営業活動に係る経営指標(収入面)

営業として当たり前のことですが、できるだけ高い運賃で、できるだけ沢山のお客さまにご利用いただければ儲かることは当たり前ですが、当局に認可された運賃(コストに相応の利益を上乗せした運賃)があった長閑な時代と違って、現在は国内・国際を問わず強力なライバル・エアラインが存在し、運賃やサービスで厳しい競争が当たり前になっています。従って、以下の経営指標を日常的にチェックし、経営の舵取りを行うことが必須となっています;

① 搭乗率:(搭乗者数)÷(供給座席数) --- 「%」表示が普通
極めて簡単な指標ですが、メディアなどではこの搭乗率だけで経営の良し悪しを判断していることが多いようですが、この数値は運賃を下げれば簡単に上昇するので、以下の指標と併せて検討しなければ意味がありません

② シェア(Share);競合するエアライン間で、お客様の摘み取りの状況を比較をするときの指標です
シェアには以下の二つの指標があります;
需要シェア:路線全体の旅客需要(搭乗者数;参入している全社が対象)と各社の旅客需要(搭乗者数)との比;
需要シェア(A社)=旅客需要(A社)÷  旅客需要(路線全体)

供給シェア:路線全体の供給座席数(当該路線に参入している全社が対象)と各社の供給座席数との比;
供給シェア(A社)=供給席数(A社)÷  供給席数(路線全体)

③ 競争力:競合するエアライン間で、お客様の摘み取りの効率を比較をするときの指標です
競争力(A社)=搭乗率(A社)÷ 搭乗率(路線平均)
例えば、A社の搭乗率が75%、競合する他社を含む路線平均搭乗率を80%とすれば;、
A社の競争力:75% ÷ 80% = 0.94 ⇒ A社の競争力は低い

参考:競争力とシェアとの関係
競争力(A社)= 搭乗率(A社)÷ 搭乗率(路線平均)
={旅客需要(A社)÷ 供給席数(A社)}
÷ {旅客需要(路線全体)÷ 供給席数(路線全体)}
={旅客需要(A社)÷ 旅客需要(路線全体)}      ⇒需要シェア(A社)
÷ {供給席数(A社)÷ 供給席数(路線全体)}   ⇒供給シェア(A社)
つまり、
競争力(A社)= 需要シェア(A社)÷ 供給シェア(A社)

④ 実収単価:航空券には正規運賃の他、各種割引運賃、団体運賃、等があります。これらを加重平均して計算した搭乗旅客一人当りの平均運賃のことを実収単価といいます。つまり、
各種の航空券の価格:Pn
航空券の種類別の搭乗者数:Nn
とすれば、
実収単価: Pa=Σ(Pn x Nn) ÷  ΣNn
例えば、普通運賃(20,000円)の年間旅客数が300,000人、割引運賃(12,000円)の年間旅客数が100,000人であったとすれば;
実収単価=(20,000x300,000+12,000x100,000)
÷(300,000+100,000)=18,000円

⑤ 路線収入:路線毎の全収入を意味します。この路線収入を全路線について合計をとったものが、そのエアラインの収入になります。エアラインは、この路線収入を極大化することが経営の最大の目標となることは言うまでもありません
路線収入は路線毎の実収単価と搭乗旅客数(旅客需要)の“積”となります;
例えば、実収単価:18,000円、旅客需要:400,000人の場合とすれば;
旅客収入=18,000x400,000=72億円

路線収入を極大化させるには、競争力を上げ、且つ実収単価を上げることがベストであることは明らかですが、例えば運賃を下げるか、あるいは割引運賃の提供座席数を多くすれば競争力を上げることは簡単ですが、必然的に実収単価は下がってしまいます。従って、競争力と実収単価とは相反する関係にあります
この相反関係の中で、最適な組み合わせを見つけ出すことをイールド・マネージメント(Yield Management)といいます。具体的には、路線ごとの需要特性(季節変動、鉄道・バスとの競合状況、他エアラインとの競合状況、過去の実績、他)を把握して運賃の種類別の最適な組み合わせを見つけ出すことと定義することができます

昔は、営業のスペシャリストが長い経験と知恵でこの判断を行っていましたが、エアラインの規模が大きくなるにつれ人間の能力では追いつかなくなってきつつあります。最近大手のエアラインでは、このイールド・マネージメントをコンピューターを使って行うようになってきました
日本航空でも、2017年に約50年使った営業の基幹システムをハードとソフトの両面で刷新しました。最新のAIを使った新システムの導入には約7年間の期間と800億円の投資が必要だったといわれています

B.Break Even Point(損益分岐点)

収入と費用が等しくなるところは、 Break Even Point(損益分離点)といいます。
損益分岐点以上の収入があれば利益、以下となれば損失が発生することになり、経営上最も重要な指標となります。なかでも、損益分岐搭乗率(Break Even Load Factor)は、日々の営業活動で営業の第一線で働いている人が最も意識する指標であり、また経営者にとっても収支の健全性をチェックする意味で、常に意識していなければならない経営指標です

損益分岐点:収入(実収単価x搭乗者数)=費用(席当り費用x全席数)
両辺を(実収単価x全席数)で割ると、
搭乗者数÷全席数=席当り費用÷実収単価
Break Even Load Factor

C.コスト管理に係る経営指標(支出面)

1.航空機の稼働に係る経営指標:航空機の稼働率
航空機はエアライン・ビジネスにとっては必須であるものの、非常に高価な資産です。因みに、ボーイング社の最新の旅客機である787 Dreamliner であれば約230億円、エアバス社の最新のA350XWB であれば約300億円もします(参考:Airbus and Boeing Average List Prices 2017)。勿論、為替レートによって円表示価格は変わります。また、航空会社の交渉力(発注機数やエアラインの規模が大きな力を発揮します)が大きければ一般に開示されない値引きもあります。新規開発機種を最初に発注するエアライン(「launch Customer」といいます)は、更に大幅な値引きがあることが普通ですが、これは発注した新機種が、必ずしも人気機種になるとは限らないからです。大手エアラインはこうした「launch Customer」になることが多く、相当安い価格で入手しているといわれています。因みに、三菱航空機が新しく開発しているMRJの「launch Customer」はANAです

こうした高額の資産(航空機)を使ってビジネスを行う場合、その保有に係るコストを常に意識しておかねばなりません。保有に関わるコストの代表的なものは「減価償却費」です。減価償却費とは、使用を続けることにより経済的な価値が低下する(減価)ことを考慮し、その資産の購入費を資産の寿命をもとにした期間に亘って分散して計上することが認められている費用のことです(減価償却費は実際の支出を伴わないことから企業の内部に留保されれば、旧式となった資産を更新する財務的な裏付けとなるものです)

減価償却費の償却期間は、収支状況の悪い年に期間を延長して費用を減らし、逆に収支状況のいい時に期間を短縮して利益を圧縮するといった会計操作を防ぐために、資産の種類毎に経済的寿命を考慮して国の基準が決められています
航空機の場合「減価償却資産の耐用年数等に関する財務省令別表_航空機関連」によれば、787 Dreamliner、A350XWBの場合、最大離陸重量が200トン以上であるため、償却期間は10年、定額償却を行うとすれば、

787 Dreamliner;
230億円 ÷ 10年 = 23億円/1年 ⇒ 630万円/1日
A350XWB;
300億円 ÷ 10年 = 30億円/1年 ⇒ 820万円/1日

となります(尚、平成19年税制改正で、残存価額という概念が撤廃されています)。保有しているだけで、これだけ巨額の費用を負担することとなれば、当然航空機は可能な限り高い稼働を達成しなければならないことは明白です。エアライン・のビジネスの経営状況を評価するときに、航空機の稼働状況を重視する所以はここにあります

尚、冒頭でも述べたように、エアライン・ビジネスは、お客様に客席を提供するビジネスでもあります。従って、客室仕様が旧式になり、競合他社の客室快適性に劣後する状況になった時は、航空機を最新鋭機材に更新するか、客室仕様を最新のものに改修する必要が出てきます。客室仕様の全面的な改修は極めて高額の投資を伴い、改修実施後の減価償却費の負担も考慮して経営判断をしなければなりません

 

2.パイロットの効率に係る経営指標パイロットの平均稼働時間
パイロットの計画が経営にとって何故重要かについては、以下のポイントに要約することが可能です;
コストの側面
パイロットの人件費が極めて高いこと。因みに、パイロットのリース会社として有名な PARC Aviation に届いているエアラインの求人情報(PARC Aviation)を見ると、給与はかなり高いことがわかります(注:求人内容詳細に給与が入ってない場合もあります)
パイロットの養成費用が極めて高いこと(養成途中で非稼働となる部分の人件費;シミュレーター、その他訓練施設;地上教官の人件費;運航技術要員、運航管理要員、労務管理要員人件費、経費など)

事業計画とパイロットの計画を整合させることの難しさ
パイロットの養成は長期計画にならざるを得ない(新人の採用→パイロット資格取得→副操縦士資格取得→機長資格取得)にも拘らず、
*航空需要は景気の動向に敏感であり極めて短周期で変動する
*自社需要は競合他社の動向の影響を受けるものの予測が困難である
*航空機の導入・退役計画があると機種限定の変更訓練による非稼働のパイロットが増加する、など計画には変動要素が沢山あります
事業計画とパイロットの計画の整合が取れないと、パイロットの不足(→事業計画の縮小、または外人乗員の採用)、またはパイロットの過剰(→非稼働部分人件費増)を招くことになります

労務問題の難しさ;
以下の理由により、一般にパイロット組合の交渉力が非常に強くなります(←欧米先進エアラインでも同じ状況)
*パイロットのストライキは、直ちに定期便のキャンセルにつながること
*経営側が権利として認められているロックアウトは、公共輸送を担う立場から実質的に行使できないこと
*パイロットの要求事項のうち、乗務手当・パーディアム等の諸手当は世間の理解を得るのが難しい要求項目のため、経営側が世論のバックアップを得ることが難しいこと
安全運航に絡むパイロット組合の要求事項は、世論の支持が得やすいこと
安全運航に絡めて要求される乗務割基準は乗員の疲労に関わることから、重要な労働条件であるものの、譲歩すれば大幅なパイロット必要数の増加に繋がるため、経営側としては中々譲歩できない要求事項となります(過去、訴訟に発展する事例も多い)

上記 ①~③ 全てが集約される経営指標がパイロットの平均稼働時間であり、これを規制が要求する上限の稼働時間(飛行時間制限、勤務時間制限)に近づけることが経営にとって死活的な目標となります

3.その他の大きなコスト要因に係る経営指標
第1項、第2項に比べ、コストをマネージできる部分が少ないのですが、以下のコスト要因も経営として間違いのない判断をしていかねばなりません;
(1)整備関連費用
航空機は、安全運航を達成する為に必須の作業項目(整備要目)が法的に決められており、これを着実に実施していく必要があります(詳しくは“4_整備プログラム”をご覧ください)。この作業を着実に実施するために必要なものは;
整備を実施する整備士の確保(資格、等詳しいことは“5_航空整備に関わる人の技量の管理”をご覧ください)が必要となりますが、必ずしも全て自社で行う必要は無く、委託するという選択肢があります(委託の条件、等詳しいことは“6_認定事業場制度”をご覧ください)。自社で整備する場合は整備士の人件費・経費、整備施設に係る減価償却費がかかります。また、委託する場合は委託費としてカウントされます。選択に係る経営判断のポイントは、整備品質とコストとなります

実施しなければならない作業項目のうち、運航に供されている航空機の駐機中に行われる作業は、特に整備のために運航を止める必要はありませんが、運航を長期間止めて整備する項目(重整備と呼びます)については、この整備のための引当機が必要になります(イメージとしてはマイカー車検整備中の代車のようなもの)。古い航空機、新しい航空機、機種、などで違いがありますが、これらを取り混ぜて、約5%の引当機が必要(⇔1年間365日の内、365日x5%→1機当たり年間18日は重整備のために運航できないことを意味します)というのが私の経験です。これは、航空機を20機保有していれば、その内1機は重整備引当機として確保する必要があることになります(→稼働できる航空機は19機となります)。これはとりもなおさず航空機の保有に係るコストの内5%は整備のために必要となることを意味します。極めて巨額ではありますが、必要不可欠であるということから、経営の舵取りとはあまり関係のない費用となります

航空機は多くの部品で構成されており、定期的に交換される部品、故障のために交換される部品、等があり、エアラインとして部品交換のために航空機を運航から外すことは極力避けなければなりません。従って、こうした部品はスペア部品として保有しなければならないことになりますが、どの程度のスペアを持つか(スペア・レベルといいます)は、定時性整備の持越し基準(整備によるキャンセル率と関連)をどうするかという経営判断の範疇に入ります。エンジンや降着装置など高額な部品の保有は高額な保有コストを招きますが、同じ機種を多く持つことでスペア部品の保有コストは相対的に低くすることができ、大手のエアラインに有利になる傾向があります

(2)間接費
エアラインでは、パイロット、CA(客室乗務員)、整備士、などが航空機を飛行させる為に直接必要となりますが、これらの仕事をサポートする要員(一般に、人事、企画・計画、総務、など)も大変重要です。また、コンピューター・システムの導入・運用に係るコストもエアライン・ビジネスにとって極めて重要、且つ金がかかるものですが、これらの分野は近年アウトソース化が進んでおり、LCCが容易に創業できる要因になっています

(3)空港でのハンドリングに係るコスト
空港における旅客ハンドリングや、空港における航空機のハンドリングは、既にエアラインにとっては自前で行う業務ではなく、委託が第一の選択肢になります。ただ、お客様に直接コンタクトする業務については、コストとサービス品質のバランスを見極めることがエアラインの経営にとって重要になります。近年、主要航空会社がアライアンス(ワンワールド、スターアライアンス、スカイチーム)を構成し、レベルの高いサービスをお客様に提供しようとしているのもこうした理由によるものです

以上

地方創生とエアラインビジネス

幕藩体制が崩壊した明治維新後の日本は、経済の発展と歩調を合わせるように人口の大都市集中が起こり、先の大戦後は益々その傾向が顕著になっています。戦後、経済基盤と人の地方分散を狙った様々な政策が実行されましたが、残念ながらこの傾向に歯止めをかける状況にまで至っていません。また昨今話題となっている大都市在住の若年層の高い失業率や貧困の問題、地方都市の人口減と高齢化の問題は人口の大都市集中と無縁ではないと思われます

考えてみれば、肥大化した大都市人口のかなりの部分が地方都市出身者であり、彼らはふるさとに残した親、親戚、友人との強い絆を持ったまま、大都市の一角にその住まいを構えているのではないでしょうか。宅配便の発達で“物”の交流については著しい進歩がありました。しかし、地方都市出身者や地方に残した人々が本当に求めているものは“人”の自由な交流ではないでしょうか。地方都市と大都市圏を結ぶ“人”の交流を阻んでいるものは、言うまでも無く交通費と所要時間の問題です。遠いふるさとを訪ねたいと思った時に、隣町に行く様な気軽さで行ける事になれば、その心理的な距離は著しく近くなるに違いありません

戦後、国と地方が一体となって努力してきた結果、既に各地方都市には立派な空港が整備されています。また航空自由化の進展によって幾つかの新しい航空会社が誕生し、既存の航空会社や、新幹線との競争が激しくなり、航空運賃の低下がある程度は実現しています。しかし競争が厳しくなればなるほど採算性が重視されることは経済の原則です。この結果、競争による運賃の低下や発着便数の増加は需要の多い幹線や準幹線では顕著になっているものの、せっかく整備した地方空港への便については必ずしも競争による恩恵を受けているとは言い難いのではないでしょうか

いま日本の航空輸送の大半を担っているジェット機は、そのスピードと大きな旅客収容能力によって経済性を発揮しています。従ってジェット機を需要の少ない路線や短距離路線に投入すれば必然的に経済性は悪化し、結果として地方都市への路線運営は後回しになってしまいます。これに対し、ターボプロップ機は500キロメートル程度の圏内であればジェット機に比べ経済性が高く、またこの圏内であればスピードの違いも目的地への飛行時間に与える影響はそれほど大きくはありません。従って500キロメートル圏内の比較的小規模な需要の路線にターボプロップ機を投入すれば、便数頻度や発着時間帯の面でジェット機に対する優位性を発揮することは充分に可能であると考えられます
また、空港へのアクセスの面では、大都市圏の基幹空港は利用者が多く競争原理が働くために利便性が高く航空会社は特別な配慮も行っておらずまたその必要もありません。しかし多くの地方空港では、そのアクセスに問題があり鉄道輸送との競争において圧倒的なスピード差があるにも拘らず劣勢に立たされているのが現状であると思います。本来空港へのアクセスにおいては何らかの地上輸送と接続し一貫した輸送体系を築くべきですが、ジェット機を使用する場合その大きな旅客収容能力と低い便数頻度によってこの一貫した輸送体系を築くのを困難にしています。これに対しターボプロップ機は、旅客収容能力がバス1~2台分であり主要な鉄道のターミナル駅とバス輸送と接続することにより、言わば鉄道の駅を“空港化”することが可能であると考えられます

シナジー効果

大都市圏と地方都市との間には以下の様な環境の差があります;

① 土地・建物等の不動産価格の差(⇔余剰不動産の差)
② 人件費単価の差(⇔失業率の差)
③ Living Costの差
④ 産業誘致に対する自治体の優遇措置(熱意)の差
⑤ 子育て環境の差
⑥ 高等教育施設の質、量の差
⑦ 遊戯施設、文化施設の差
⑧ 自然環境の差

これらの差は人の流れを作り出すポテンシャルを持っており、500キロ圏内の人の移動時間(30分~1時間)、移動コスト(5千円~1万円)をうまく結びつければ新しいビジネスを生み出すことができる

新しいビジネス(ビジネス・モデル)の例
1.通勤型“出稼ぎ”支援ビジネス
地方都市から大都市圏に週間1往復の通勤を行う(金帰月来)。ウィークデイは大都市圏の簡素な宿泊施設(単身者用)に宿泊し、週末は地方都市の自宅で過ごすライフ・スタイルを可能にする「通勤費」プラス「宿泊施設提供」を一体化して提供するビジネス
*地方都市から大都市圏への通勤費:52週x2x(5千円~1万円)、及び単身用宿泊施設から会社までの交通費の大半を会社負担とすることを想定する ← 通勤時間が1時間30分を越す比較的遠距離通勤を行っている会社員の会社支給の通勤費と大差ないと考えられる
*割引の週間通勤定期(52回/年)運賃を設定する。この定期を使って家族の一員も大都市圏に出かけることを可能とする
*成長軌道に乗り始めた日本の経済を勘案すると、大都市圏で人手不足となる企業が増加する可能性が高い
*2020年のオリンピックに向け、首都圏で土木・建設作業者の不足が懸念されてい

*地方都市で介護が必要となる老親を抱えている社員が増加傾向にあり、これらの社員に「退社」、「嫌がる老親の大都市への呼び寄せ」、「老親介護の放棄」以外の選択肢を提供する
*地方出身の若い夫婦の子育てを親の実家で行うことが可能となる
*地方都市における税収(県民税、市民税)が増えると同時に人口減に歯止めが掛かる為、地方自治体から何らかのバックアップが期待できる

2.スマート・オフイス提供ビジネス
IT関連企業に代表される様な、インターネット環境さえ整えれば場所を問わない企業にネット環境を整えたオフイス及び簡素な宿泊施設を賃貸するビジネス
*対象企業の社員は大都市圏から週間1往復程度の通勤、及び大都市にある本社で行われる諸会議に参加することを前提として企業、社員の心理的なバリアーを下げると共に、本社とオフイス間の距離に起因する効率低下を防止することが可能
**企業が負担する通勤費:(52週+諸会議回数)x2x(5千円~1万円)
**割引の週間通勤定期(52回プラス諸会議回数/年)運賃を設定する。
**一般にIT関連企業は業務量のPeak/Valleyが激しく、業務のPeak時には労働 準法を越える残業が行われているとも言われているが、このスマート・オフイスを使うことによりこうした悪しき労働環境を改善していくことが可能となるほか、比較的大きなプロジェクトを、所謂“合宿環境”の中で効率的にグループ業務を行うことにより納期遵守、短縮、等が期待できる
*地方都市における税収(固定資産税)増、通勤社員による消費増、及びスマート・オフイスを賃貸した企業が地方採用の社員を雇用する可能性があり、地方自治体から何らかのバックアップが期待できる

3. 都市生活者への農地提供ビジネス
地方都市周辺の耕作放棄地及び空き家を廉価で賃借し、10アール(100平米)程度の単位で宿泊施設付きで賃貸するビジネス
* 最近、大都市在住者の中に農業を志向する人が増加している。しかし住宅密集地では猫の額の様な菜園ですら確保することも難しく、また賃貸料も高い。また、車での移動を前提とし大都市周辺地区で比較的広い面積の農地を確保する方法も、農地の賃貸料が高い(都市圏への野菜提供農業が盛ん;住宅地に転用できれば高く売れる)為に余り行われていない。一方、地方都市では農業放棄地が急速に増加しつつあり、こうした農地の確保には全く問題無い
*個人負担の交通費:5回程度x2x(5千円~1万円)←根菜類、穀類、果樹、手間の掛からない野菜栽培を想定。
*収穫物の輸送は50キログラム/1回まで無料サービス
*人力では負担の大きい付帯業務(耕す、元肥漉き込み、等)は遊休の大型農業機械を使って比較的安価で委託可能:1アール当り5千円程度?/1年(除く肥料代)
*地方都市周辺の耕作放棄地の有効活用、種苗・肥料・殺虫剤、等の売上増、遊休大型農業機械の有効活用が期待でき、地方自治体、農協などから何らかのサポートが期待できる

4.大都市圏と地方都市を結ぶ路線に特化したビジネス
以下の様な大都市圏と地方都市との間に存在するやや特殊な旅行需要に焦点を絞った旅行ビジネス;
①墓参り、法事、等に伴う帰省
②大都市圏の地方出身大学生の帰省、保護者等親族の大都市圏への旅行
③大都市圏在住の小・中・高校生を対象とした春休み、夏休み期間の田舎生活体験ツアー(廃校活用、高齢者農家による民宿、等;滞在期間:1~2週間)
④地方都市の若年層を対象とした格安のテーマパーク、コンサート参加ツアー(夕方発、空港での仮眠)
⑤地方都市在住の文化愛好者を対象とした展覧会、コンサート(クラッシック)参
加ツアー
⑥子育てを親の居る故郷で行う(父親は大都市圏で単身生活。週末に故郷を往復する)
⑦早朝・深夜便を使った日帰り観光(宿泊費節約)

*割引回数券の設定(①、②対象;高速バスと鉄道運賃との中間の運賃設定)
*チェックイン貨物の無料化(②の保護者等親族の旅行の場合;50キログラム以内)
*団体割引運賃の設定(③、④)
*テーマパーク料金込みのパック料金の設定
*地方都市の活性化に繋がる為、地方自治体のサポートが期待できる

<参考>宅配便ビジネスの隆盛に伴い新たに生まれたビジネス・モデル、新規需要、等
*料金代引サービス活用によるビジネスの活性化:各種通信販売ビジネス、メーカーのアフターサービス(修理品回収、返品、補修部品送付)
*各種産直ビジネス
*航空ビジネスとの連携:自宅⇔空港間の手荷物輸送、全国宅配ネットワーク活用による航空貨物部門との連携(ANAカーゴとヤマト運輸とのパートナーシップ)
*重い道具が必要なスポーツ活動との連携:ゴルフ、スキー・スノーボード、サーフィン

以上