6_認定事業場制度

-はじめに-

航空機を設計する段階、それを基に航空機を製造する段階、完成した航空機の耐空性(安全性)を保証する段階、最終的に航空会社がその航空機を購入してお客様を乗せて運航に供する段階、これら全てのプロセスで規制当局がきちんと審査・検査を行なって安全を担保していることは、“2_航空機の安全運航を守る仕組み_全体像”の所で説明いたしました。
その中で、規制当局が全ての審査・検査に関わると言いつつも、人的リソースが限られていること、及びそれぞれのプロセスの中で行われている作業の専門性を考慮することから、審査、認可等の合理化の一環として事業場認定制度ができていることを説明いたしました。勿論、この制度は航空先進国の米国、欧州諸国のみならず世界中で殆ど同じ制度が取り入れられています。この制度はパイロットの資格制度と併せ航空輸送の安全を守る仕組みの中でも要の一つとなっているものなので、以下にこの制度をもう少し詳しく、分かり易く説明したいと思います

事業場認定制度に係る法規制は、航空法第20条及びこれに基づく航空法施行規則(→認定事業場に関わる法規制)に定められています。また、法に基づいて審査、確認、検査、証明、承認、などを行うに当たっての具体的な手順、基準等については、航空局からサーキュラーが発行されています。以下はこのサーキュラーの重要と思われる部分を整理したものです

-全体の枠組み-

1.事業場認定の区分は、以下の様に7つに分けられています;
 航空機の設計及び設計後の検査の能力 —– 設計の段階
 航空機の製造及び製造後の検査の能力 —– 製造の段階
 航空機の整備及び整備後の検査の能力 —– 運用の段階
 航空機の整備又は改造の能力     —– 運用の段階
 装備品の設計及び設計後の検査の能力 —– 設計の段階
 装備品の製造及び完成後の検査の能力 —– 製造の段階
 装備品の修理又は改造の能力     —– 運用の段階

2.認定は上記7つの区分を、更に航空機は型式別装備品の場合は型式及び種類別に認定を行なう仕組みになっています
<参考> 認定事業場取得の例
* 三菱航空機(株)の例:三菱航空機・航空機設計検査の追加認定を取得
* 機体整備に関わる事業場認定書の例:事業場認定書
* 現在の認定事業場一覧(国土交通省):現在の認定事業場一覧

3.国土交通大臣は事業者の申請に基づいて、技術上の基準に適合することを審査した上で事業場ごとに認定を行います

4.認定事業場は、認定を受ける前に“業務規定”を定め、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。これは、事業場自らが自律的に法規制、及びその精神に基づいて作業を実施することを約束する意味があります

5.事業者に“業務規定”に対する違反行為があった場合、又は認定に係る能力が技術上の基準に適合しなくなった場合、国土交通大臣は認定の取消し、是正措置などを命ずることができることになっています

6.認定の有効期間は2年とし、継続するためには再審査が必要となっています

以下に規制当局が、申請のあった事業場を審査するポイントを説明していきますが、内容は相当専門的、且つ複雑、多岐に亘っています。その背景には、パイロットの技量管理などと違って、認定の対象となる事業場では実に多くの人々が組織として業務を行なっていることにあります。業務に携わる多くの人がそれぞれ間違いなく業務を行っていかなければ安全な運航は実現できません。一方、航空輸送が始まってから100年以上の歴史が積み重ねられた中で、個人や組織の犯すミスに起因する悲惨な事故が沢山発生しました。複雑、多岐に亘る仕組みには、この事故の教訓が沢山詰め込まれていることを理解することも必要だと思います

ただ複雑な様に見えても全体を貫く考え方は意外にシンプルかも知れません。私なりに基本的な仕組みを要約すれば、事業所の営利的な目的から独立して規制の立場で判断を行うキーマンとしての「確認主任者」の存在とその責任の証としての「署名、捺印」の行為、業務に必要となる技量レベルを担保するための「資格制度」や「教育・訓練制度」、人間である以上避けられないヒューマンエラーを阻止するための「二重確認」や「ルールの可視化(文書化)」、「実施記録の義務化」、「委託との接点業務のルール化」の仕組み、自律的に組織としての“安全度”を高めていく為の「監査」や「経営の関与」の仕組み、ということになるかと思います

尚、全体をご覧になる時間の無い方は、関心のある項目のみクリックして参照して頂ければ結構です(参照した後に元に戻る時は、ブラウザの左上にある“”をクリックしてください)

1.施設・設備の条件
2.組織の権限及び責任分担
3.組織ごとの人員の能力及び配置数
4.確認主任者の配置
5.作業の実施方法
6.品質管理制度
7.検査の実施方法
8.安全管理体制
安全管理体制は、他の交通システムや原子力の安全管理にも共通する部分が多いので、ちょっと覗いてみることをお勧めします
9.業場認定を受けた者の責務
10.認定事業場の国への報告義務
マスコミに記事として登場する事象は、この報告内容がベースになっています

-技術上の基準に係る具体的審査内容-

1.施設・設備の条件;
 認定に係る作業場所の面積、照明、空調、部品・材料の保管場所が適切なものであること
㋺ 航空機の設計検査、装備品の設計・検査(1-)については、認定業務に繰返し使われる強度試験・燃焼試験設備、計測機器、試験機器、工具が適切なものであること
 上記㋺以外の認定業務(1-)については、航空機、及び装備品の設計者、製造者が指定する計測機器、試験機器、工具を使用していること
 審査の対象となる事務所には、作業者の控室の他、工程管理、技術部門の事務室、技術資料の管理室、等が含まれます

2.組織の権限及び責任分担
 航空機の設計検査、装備品の設計・検査(1-①、⑤)については、専門性が高いこともあり、国と事業場の間で設計後の検査に係る業務の進め方等について認識が一致していることが重要です。従って国との連絡・調整の組織、人員が、各設計プロジェクトにおいて設定されていることが必要です
 下記第4項の確認主任者”が国との連携・調整に関与する体制であること

3.組織ごとの人員の能力及び配置数
 人員の能力:各組織の業務を遂行する為に必要な能力については、国家資格社内資格、業務経験、教育訓練の受講暦などで保証する仕組みとなっていること。特殊工程に従事する者については、最新の公的規格(注)に準拠した資格制度で承認されていること;
(注)例えば、非破壊検査員資格の技量認定基準としては、JIS W-0905(日本)、NAS-410(米国)、EN4179(欧州)などがあります
 人員の配置数:業務を遂行するに必要な数を満たしていると同時に、業務が拡大する場合には人員数が問題となる例が多いことから、必要な人員を業務量に応じて定量的に把握することできるようになっていること(定員計画)

4.確認主任者の配置
 確認主任者選任基準必要な資格及び業務経験年数
下記a)~e)または国土交通大臣が同等と認めた者(防衛大学卒業者、または外国の大学卒業者、理学部卒業者、等は、業務規定で定めた同等認定を受けるための教育・訓練を受けた者が対象);
a) 航空機及び装備品の設計検査(1-
資格工学系の学卒、短大卒、高専卒
経験:学卒者/6年以上、短大卒・高専卒/8年以上
b) 航空機及び装備品の製造検査(1-
資格航空又は機械学科の学卒、短大卒、高専卒
経験:学卒者/3年以上、短大卒・高専卒/5年以上
c)  航空機の整備検査(1-
資格:認定業務に対応した等級整備士(機種別)、航空工場整備士(作業の種類別)
経験:3年以上
d) 航空機の整備・改造(1-
資格:認定業務に対応した等級整備士(機種別)、航空工場整備士(作業の種類別)
経験:3年以上
e) 装備品の修理・改造(1-
資格:認定業務に対応した航空工場整備士(作業の種類別)、又は工学系の学卒、短大卒、高専卒
経験:航空工場整備士・工学系の学卒者/3年以上、短大卒・高専卒/5年以上

 日本国内の事業所における確認主任者選任基準
a) 航空法規:航空法、航空法施行令、航空法施行規則、サーキュラー、等に関わる教育、訓練
b) 品質管理制度に係る教育・訓練:下記“6.品質管理制度の運用”にある各制度について教育・訓練を行う。またこれらの制度に変更があった場合は、最新の内容について周知する体制が必要となります

 海外の事業所における確認主任者選任基準
1990年代以降の規制緩和の流れの中で、日本国籍機の整備や改造を海外の航空会社や整備会社に委託することが多くなりました。こうした事業所に対しては、国内の事業所における選任基準(上記㋺)に係らず、当該国の整備士制度またはそれと同等の制度について国土交通大臣が日本と同等以上と判断した場合は、資格、経験、教育・訓練等の要件について同等と認定することができます

 確認主任者の業務の指定
整備、改造に関わる確認主任者を選任・任命する場合、確認を行うことができる業務の能力、範囲、航空機・装備品の型式、作業の内容(小修理、大修理、改造)等について指定する必要があります
設計検査認定に係る確認主任者選任・任命する場合、専門性が高いことに鑑み、事業場認定の業務の範囲を細分化(機体構造、システム、エンジン、電気・電子、試験の立会い検査、等)し、業務の実態に応じて各事業場が独自に指定することができます。一方、設計に係る確認主任者は、設計の妥当性を判断する責任を有していることから、コンサルタントや短期雇用契約の者を任命・選任することはできません

5.作業の実施方法
 設計・検査に係る事業場においては、設計作業の実施方法(試験供試体の作成、試験のセットアップ、試験の実施を含む)について文書化して確実に維持管理を行うとともに、この方針につき業務規程で定められていることが必要です

㋺ 製造・整備・改造等に係る事業場においては、作業の実施方法は、航空機・装備品の設計者が指定する最新の方式(マニュアル類、SBService Bulletin、設計者のファックス等も含む)に準拠して文書化することが原則であり、この方法に従わない場合は、業務規程に定めて予め国の認可を得ておくことが必要です
尚、航空会社が整備又は改造を実施する場合は、業務規程において整備規程に従って実施することを規定し、且つ業務規定に規定する品質管理体制に従って作業を実施することが必要です

6.品質管理制度
㋑ 施設・設備の維持管理に係る品質管理の仕組み;
維持管理に係る組織の責任及び分担が明確であり、且つ設計者が指定した方法で行なうことが必要です。もし他の類似の方法で独自に設定する場合は、その適切性を検証し、点検検査結果につき文書による記録を残すことが必要になります。
精度管理が必要な設備・工具等については、基準原器へのトレーサビリティーが明確であり、且つ校正の間隔・方法がその設備・工具等の設計者が指定する方法で行われることが必要です。校正の際に許容値から外れていることが判明した場合には、これらを使用して実施された全ての作業が適切であったかどうか確認する方法を予め定めていることが必要です
計測機器等については、校正の間隔、有効期間などが使用者に判るように機器に表示されていることが必要となります
設備・工具等の保有数については、文書等により管理されるとともに定期的な照合が行われていることが必要です

㋺ 人員の教育及び訓練に係る品質管理の仕組み;
教育・訓練には、業務に従事しながら行う“On the Job Training”も含まれます。また教育・訓練を委託することも可能ですが、委託側との間で責任と権限の分担、訓練内容、及び教育・訓練を担当する者の要件が明確であることが必要です
また、教育・訓練は以下の要件を満たす必要があります;
*整備従事者間、及び整備従事者と乗務員とのヒューマンファクターに関する教育が含まれていること
*教育・訓練資料は最新で、且つ組織として認知されたものであること
*教育訓練は「初期訓練」の他「定期訓練」も行うこと
*「定期訓練」の対象には確認主任者、検査員、監査員のほか整備員も含めること
*確認主任者や社内資格等の要件と教育・訓練の関係が明確であること
*実施された教育・訓練は各人毎に評価が行われること

㋩ 作業の実施方法の改訂に係る品質管理の仕組み;
作業の実施方法を改定するには、改定に関わる組織の責任及び権限の分担が行われていることが必要になります。また、変更する内容は最新のものはもとより、変更により無効になった実施方法が業務に適用されないことが保証されなければなりません

 技術資料の入手、管理及び運用に係る品質管理の仕組み;
以下に掲げる技術資料は、常に最新の状態に維持することが必要です
*航空法、及び関連する政令、省令、通達、告示(耐空性改善命令)等
*型式証明、型式設計変更承認、追加型型式設計承認、型式承認、仕様承認、耐空性審査要領、その他これに準ずる資料
*設計国又は製造国の航空当局から発行される耐空性改善命令(AD等)
*設計者又は製造者の資料:製造図面、試験方法、Flight Manual、Maintenance Manual、Component Overhaul Manual、Service Bulletin 、Service Information、等
*航空運送事業者の整備規程、等
*航空機、装備品等のメーカーからの技術情報
*関連する規格(JIS、NAS、MIL、ISO、TSO、等)に関する技術資料

また、技術資料の管理業務は煩雑、且つ膨大な作業量となるので、最近は委託されるケースが多いのですが、この場合、委託先が以下の基準を満足していることが必要になります;
*組織毎に責任及び権限の分担が行われていること
*最新の技術資料が入手できる体制にあること
*資料を使用する人員全てに最新のものが提供される(勿論、資料が改定され無効となったものは業務に使われないこと)ように、配布先の明確化を行うと共に、配布先の管理担当者を定め、改訂に伴う差替えを遅滞無く行うこと。また事業場が管理していない資料は作業現場に持込まないこと

㋭ 材料、部品、装備品等の管理に係る品質管理の仕組み;
材料、部品、装備品等の管理の管理業務は、上記技術資料同様、煩雑、且つ膨大な作業量となるので、最近は委託されるケースが多いのですが、この場合、委託先が以下の基準を満足していることが必要になります;
*組織毎に責任及び権限の分担が行われていること
設計者の指定する保管方法に従っていること。保管方法が特別なものについては当該品またはその容器に保管方法が表示されていること
*使用できない材料、部品、装備品等が流用されることが無いように明確に分離され、且つ使用できない旨当該品に明示すること
*在庫管理は文書またはコンピューターで行われ、定期的な在庫照合が行われること
*保管期限が設定されている品目については、保管期限管理の方法を設定すると共に当該品またはその容器に有効期限が表示されていること
*航空会社から材料、部品、装備品等が支給される場合、その取扱にについて明確にすると共に、混同を防ぐ方法が講じられていること。また、支給品を認定業務に使用する場合の品質管理は事業場の責任で実施すること

㋬_1 材料・部品・装備品等の領収検査(設計・検査認定以外)係る品質管理の仕組み;
領収検査は以下の規準に従って、原則として認定事業者が自ら実施しなければなりません(委託する場合は、下記“㋠委託管理に関する制度”基づく管理を厳格に行わなければなりません)。また、同一組織内の認定事業場以外の部門から材料・部品・装備品等を受領する場合にも領収検査は必要となります;
*組織毎に責任及び権限の分担が行われていること
*領収検査の基準は、“5.作業の実施方法”で指定されているものとし、材料・部品・装備品等については、必要となる証明等(FAA Form8130-3JAA Form One、材料検査の証明書類、等)を確認すること。尚、航空機の整備・改造の認定を受けている事業場については、原則として予備品証明が必要となります
*領収検査を行う者はその能力を有していること。尚、領収検査を行う者と、作業を行う者は兼務であっても許されます
*領収検査を行った結果“不適合”と判定されたものは適合品から明確に分離し、明確な表示を行った上で絶対に流用されることの無いようにすること

㋬_2 航空機又は装備品の受領検査、中間検査及び完成検査(必要な場合、機能検査、飛行検査、等を含む)に係る品質管理の仕組み;
認定業務における航空機、又は装備品等の受領検査(受入れ検査)、中間検査、完成検査の以下の基準に従って行うことが必要です;
*組織毎に責任及び権限の分担が行われていること
*受領検査においては、作業対象の履歴(不具合の内容、処置状況、使用時間、耐空性改善通報の実施状況、等)を使用者から入手すること*検査の基準は、“5.作業の実施方法”で指定されているものとします。損傷等のあるものの受領検査の際は、損傷周辺についても充分な検査を行うこと。
*作業の中で実施される各検査については、ワークシート等により検査の時期を含めて明確に指示され、且つ限界値等の判定基準が示されていることが必要です。
*領収検査を行う者はその能力を有していること。尚、領収検査を行う者と、作業を行う者は兼務であっても許されます
*検査結果は記録し、関連する人員に提供されること。また、検査の結果“不適合”となったものは、必要な修正処置を行うか、不適合として明確に分離されること
*航空機製造検査認定を受けた事業場における装備品等の検査は、認定事業場自らが製造するものについては、自らの検査制度の中で適切な検査を行い、認定事業場以外の製造者が製造するものについては、認定事業場からの委託として取扱い、適切な領収検査を行うこと

㋣ 工程管理に係る品質管理の仕組み;
設計検査認定においては、検査・確認を含めた設計業務全体の工程が適切に設定され、且つその進捗管理が適切に管理されることが必要です。特に特定分野の作業に遅れが発生した場合に他の工程に与える影響も含めて適切に管理されることが必要となります;
設計検査認定以外の工程管理については、“5.作業の実施方法”で規定している方法に従うこと。尚、工程間の作業の引継ぎ、あるいは同じ工程内の作業人員の交替時の取り扱いについてはミスの発生しない方法をとること

㋠ 委託管理にに係る品質管理の仕組み;
規制緩和の流れの中で広範に行われるようになった委託については、自社と委託の境界領域においてミスが発生する可能性が高い事から、以下の様な厳しい基準が設けられています;
設計検査認定係る航空法規上の責任は全て委託元が負うことになります。従って、認定事業場としての検査・確認を実施できるのは原則として委託元のみとなり、確認主任者は確認実施後に設計基準適合証、適合性判定書、適合検査記録書、試験立会記録書に署名、押印を行うことになります。認定事業場間で共同開発を行う場合、様々な状況が想定されるため事例毎に判断することになっています。尚、型式証明対象の装備品については、委託管理制度の対象として取り扱う必要はありません
設計検査認定に関わる委託管理の基準は以下の通りです;
*組織毎に責任及び権限の分担が行われていること
*委託先を選定するに当たっては、委託先の施設、組織・人員、資材、制度、等が委託業務実施に充分であることを審査する基準が明確であること。また、委託先が認定事業場であっても、委託元の定める選定基準と委託先の技術上の基準との相違部分の審査を行うこと
*委託業務の内容が明確に規定されていること
*委託する個々の業務の内容が委託先に正しく通知される体制にあること(例:作業発注書、委託業務指定書/SB等の指定)
領収検査は委託元が自ら実施し、検査の基準、及び検査の方法が明確であること。
*委託先の能力が適切であることを監査するに当たって、審査基準を明確に規定すると共に、審査方法及び審査の頻度を適切に設定すること
*委託先の監査及び領収検査を行う者について、その能力を保証する仕組みがあること

設計検査認定以外であっても委託に係る航空法規上の責任は全て委託元が負うことになります。従って、認定事業場としての検査・確認を実施できるのは原則として委託元のみとなりとなり、確認主任者は確認実施後に航空機基準適合証、装備品基準適合証、搭載用航空日誌に署名、押印することになります。海外事業場に委託を行う場合も同様です。尚、予備品証明を有する装備品及び認定事業場で確認され基準適合証が発行された装備品はこの基準の対象外である

設計検査認定以外の委託管理に係る基準は以下の通りです;
*組織毎に責任及び権限の分担が行われていること
*委託先を選定するに当たっては、委託先の施設、組織・人員、資材、制度、等が委託業務に実施に充分であることを審査する基準が明確であること。また、委託先が認定事業場の場合、委託業務が委託先の認定の範囲、限定に含まれていることを審査すること。また委託元の定める選定基準と委託先の技術上の基準との相違部分の審査を行うこと
*委託業務の内容が明確に規定されていること
*委託する個々の業務の内容が委託先に正しく通知される体制にあること。例えば、作業発注書、委託業務指定書/SB等を指定すること
領収検査は委託元が自ら実施し、検査の基準、及び検査の方法が明確であること。認定事業場に委託する場合は確認に係る検査の基準、検査の方法が明確であること。
*委託先が航空機の整備・改造に係る認定事業場であり、ここに定例整備等における一部の作業を委託した場合、委託先は作業完了後の出発確認(航空機が全体として耐空性を有していることの確認)を行うことはできません。尚、領収検査は委託先認定事業場以外の場所で実施することが可能です
*委託先の能力が適切であることを監査するに当たって、審査基準が明確であること、審査方法及び審査の頻度が適切であることが必要です
委託先が認定事業場であって委託先の認定の範囲、限定に含まれている業務を委託する場合は監査を省略することができます。但し、委託元の基準と委託先の基準に相違があり、その相違点について委託先の内部監査が行われていない場合は委託元による監査が必要となります
*委託先の監査及び領収検査を行う者について、その能力を保証する仕組みがあること

㋷ 業務の記録の管理に関する品質管理の仕組み;
業務の記録に管理に係る適切性の基準は以下の通りです。尚、委託を行う場合は委託先が以下の基準を満たしていることを確認する必要があります;
*組織毎に責任及び権限の分担が行われていること
*記録の範囲、内容は認定業務が適切に行われていることを保証するものであること
*記録の提示が求められた時に速やかに提示できる体制である事
*確認主任者による確認の記録については、確認の日から2年間保管する事
*航空機の大修理、改造に係る記録は、当該航空機の登録抹消まで保管すること(永久保存)
設計検査認定における設計に係る記録は、当該型式の航空機または装備品が使用されている期間保管すること。但し、航空機使用者や型式証明・型式承認保持者の記録は対象外となります
*記録の保管は電子媒体も可能です

㋦ 独立した組織による監査の制度
航空機関連分野は技術進歩が急速な為、当局による検査だけでは認定業務の法令等への適合性を維持するのは難しいため、認定事業場自らが繰返し監査を行うことによって安全性が担保されています。
監査実施体制に係る基準は以下の通りです;
*制度の運用について責任及び権限の分担が明確であること。監査を行う組織は常設でなくてもいいが、監査計画については当該組織の下で常時管理されていること
*監査の範囲は認定を受けている業務全てをカバーすること
*監査は計画的かつ定期的に実施されること。主要施設にあっては1年の間に、その他の施設にあっては2年以内に監査が行われること。また、認定業務の変更等、必要な場合は上記以外でも臨時に監査を行うこと
*監査の要点は関係法令に対する適合性です。監査する事項を具体的に記載したチェックリスト、等を作成することが必要となります
*監査を行う者は監査の対象となる組織から独立した組織に所属し、対象業務について充分な知識・経験を有すると共に、品質保証制度、監査手法について教育・訓練を受けていること
*監査の結果は記録し、報告は監査の責任者に直接行なうこと
*監査において発見された不適合事項については、認定事業場の最高責任者の責任で是正処置をとること。是正処置の効果について、必要により再度監査を行うこと
*監査結果、是正処置については記録し、国から要求があった場合は提供すること
*監査業務の実務を認定事業場外の人員に委託する場合、これらの人員の能力の審査、及び監査の方法の指定は認定事業場の責任で実施すること

㋸ 航空機及び装備品の設計検査認定に於ける以下の制度の適切性の基準;
設計書類(試験方案、試験報告等を含む)の管理については、以下の基準を守る必要があります。尚、管理を委託する場合は委託先が以下の基準を満たしていることを委託元が保証する必要があります;
*制度の運用について責任及び権限の分担が明確であること
*保管方法が明確であること
*使用しない設計書類は明確に分離され、誤って使用されること無いようにすること。また使用できない旨設計書類に明示する方法を設定すること。特に設計書類の改訂管理に注意を払い、最新版のみが使用される様に管理すること
*保管期限が設定されている書類については、保管期限管理を行う方法を設定すると共に、当該書類には保管期限を表示する

また、設計書類の検査については、以下の基準を守る必要があります;
*制度の運用について責任及び権限の分担が明確であること
*“5.作業の実施法”で述べた基準( 設計・検査に係る事業場においては、設計作業の実施方法/試験供試体の作成、試験のセットアップ、試験の実施を含む)について文書化し、維持管理を行うとともに、この方針につき業務規程で定められていることに沿って検査を行うこと
*検査を行う者の能力を保証する仕組みを有すること。また検査に係る点検・承認等を行う場合は、作成者とは異なる者がこれを行うこと
*検査の結果は明瞭に記録されること。不適合となったものに対しては、修正処置等を指示すること

㋾ 設計検査認定に於ける、供試体の維持・管理を図る仕組みの適切性の基準;
試験に使用する供試体の管理ついては、以下の基準を守る必要があります。尚、管理を委託する場合は委託先が以下の基準を満たしていることを委託元が保証する必要があります;
*制度の運用について責任及び権限の分担が明確であること
*保管の方法が明確であること。保管温度、湿度等が規定されている品目については、その品目または容器等にその旨記入すること
*使用しない供試体は明確に分離され、誤って使用されることの無いように当該品に明示する方法を設定すること
*保管期限が設定されている品目については、保管期限管理を行う方法を設定すると共に、当該品、又はその容器などに保管期限を表示すること
*航空機使用者からの供試体の支給がある場合、取扱を明確化すると共に、混同を防止する方法が講じられていること。また、これらを認定事業場で使用する際の品質管理は当該事業場の責任で実施すること

また、試験に使用する供試体及び試験セットアップの検査ついては、以下の基準を守る必要があります;
*制度の運用について責任及び権限の分担が明確であること
*“5.作業の実施法”で述べた基準( 設計・検査に係る事業場においては、設計作業の実施方法(試験供試体の作成、試験のセットアップ、試験の実施を含む)について文書化し、維持管理を行うとともに、この方針につき業務規程で定められていること)に沿って作成されていることの検査を行うこと。また検査の基準、方法については、“㋸ 航空機及び装備品の設計検査認定に於ける制度の適切性の基準”で定めた検査を受けた設計書類の指示するものであること
*検査を行う者の能力を保証する仕組みを有すること
*検査の結果は明瞭に記録されること。不適合となったものにたいしては、修正処置等を指示すること

7.検査の実施方法
設計、製造、整備後に行う検査の具体的実施方法については、以下の基準を守る必要があります;
㋑ 航空機の設計検査・装備品の設計検査
設計検査認定においては、国と事業場が役割分担を行うことになりますので、事業場が行う検査も国と同等の役割を果たすことになることを認識する必要があります(⇔事業者の都合によって検査結果が左右されることがあってはなりません)。
検査の対象となる項目は適合性証明計画における要検査項目とし、項目・証明の方法(設計書類・実証試験・その他の方法)、検査の担当(国または事業場)につき、必要により国の承認を得る必要があります。尚、検査の方法は国、事業場いずれが検査を行う場合でも同一であるべきことは言うまでもないことですこと(具体的には“サーキュラーNo.1-003、004”に書かれてあります)。尚、事業場が行う検査は確認主任者が直接行うことになっています

㋺ 航空機の製造検査
航空機の製造後の検査の項目及びその実施方法は、設計者が新規製造時に指定した地上試験及び飛行試験と同一のものであることが求められています。
設計者以外の者による追加型設計変更(STC:詳しくは、“3_耐空証明制度・型式証明制度の概要”を参照してください)がある場合は、必要により設計変更を行った者が指定する地上試験及び飛行試験を実施することが必要となります。
尚、この内容は、型式証明、あるいは設計変更で定められた“飛行試験手順書”、“Production Flight Test Procedure(PFTP)”等で設定されています

㋩ 装備品の製造検査
装備品の製造後の検査の項目及びその実施方法は、設計者が新規製造時に指定した機能試験等と同一のものであることが求められています。尚、装備品の製造検査認定を受けることができる装備品は、日本の型式証明を受けた航空機に装備されている装備品、または装備品単独で型式・仕様承認を受けた装備品に限定されます。
型式証明を受けた航空機の装備品については、型式証明の際に設定された完成検査の項目を実施する必要があり、具体的には“装備品等型式(仕様)承認書”に指定された「認定検査の種類」に規定された項目を実施することになっています。
仕様承認(詳しくは、“3_耐空証明制度・型式証明制度の概要”を参照してください)を受けた装備品については、承認書及びその附属書に「認定検査の種類」は規定されていませんが、設計者の指定する項目を法定検査として設定することが求められています(内容的には装備品の完成検査の項目に該当します)
設計者以外の者による設計変更(STC等による変更)がある場合は、必要により設計変更を行った者が指定する方法で実施する必要があります。

㋥ 航空機整備検査
航空機整備後の検査の項目及びその実施方法は、設計者が新規製造時に適応すべく指定した地上試験及び飛行試験に準拠した方法であることが求められています(これらの項目には、“サーキュラーTCI-2-002に設定されている項目を含んでいなければなりません)。
設計者以外の者による設計変更(STC等による変更)がある場合は、必要により設計変更を行った者が指定する地上試験及び飛行試験を実施する必要があります。

8.安全管理体制
㋑ 安全管理体制の概要
航空機の安全性を高めるには、法令順守を柱とし事故・トラブルが発生した場合に原因を究明し再発を防止するという謂わば“Reactive”の対応に加え、事故・トラブルの予兆となるハザード(不安全要因)を把握し、そのリスクを低減させるという“Proactive”な対応をシステマティックに行う必要があります

因みに、“ICAO(国際民間航空機関)Safety Management Manual  (Doc.9859, 1st Edition 2006)”によれば;
安全管理体制とは、以下の様な仕組みを作ることと同義であると言っています;
*業務運営方針の組織内徹底
*組織の責任分担の明確化
*経営・現場・各部門間の意思疎通の円滑化
*経営トップから現場まで一丸となった取り組み体制の構築

㋺ 認定事業場の安全管理体制
認定事業場は以下に掲げる事項を文書により適切に定め、これに従って業務を行うことが求められています(安全管理に定める事項は“業務規定”には含まれていません)。
業務の運営方針;
認定事業場の運営責任者(最高責任者)は、以下を周知・徹底させること;
*安全に関する基本方針
*全員一丸となって安全管理体制を有効に機能させること
*認定業務遂行に当たっては関係法令を遵守するとともに、不適合が発見された場合は速やかに報告、是正措置を取ること
*安全目標の設定、達成度の評価、これに基づく目標の再設定を行うこと

業務の実施、管理体制;
責任体制
認定事業場の運営責任者(最高責任者)は、安全管理体制を適切に実施することに関する最終責任を持つとともに、安全に関する権限・責任の明確化、報告系統や指揮命令系統の明確化、リスク管理体制の整備につき責務を負う
安全管理に責任を有する者の選任
認定事業場は、認定事業場の運営責任者(最高責任者)に直接助言・報告を行う責任者を選任すること。尚、この認定事業場の運営責任者(最高責任者)がこれを兼務してもよいことになっています。航空会社にあっては、その会社の整備部門が認定事業場の場合、“安全統括管理者”を安全管理に責任を持つ者として選任する必要があります

業務の実施、管理の具体的方法;
緊急事態への対応計画
認定事業場の認定業務(設計、製造、整備、等)に係る航空事故、重大インシデント等が発生した場合、必要な認定業務を継続しながら通常の業務体制から緊急体制に速やかに移行できる計画を予め確立しておくこと(例えば、緊急連絡体制、応急措置手順、原因究明体制、訓練・演習手順、等
ハザード(不安全要因)の特定:
認定業務全般に係る安全情報を基に、ハザード(例えば、人的要因、技術要因、組織要因、環境要因、等)の特定を行う手順を定める。ハザードの特定は“Reactive”な方法と“Proactive”な方法を組み合わせて行うこと。安全情報は、ヒヤリハット情報の報告、安全ミーティングでの報告、事故・トラブルの原因探求報告、内部監査報告、他航空会社からの報告、等から収集可能です
リスクの評価とその対策:
特定したハザードについてのリスクの分析(発生頻度、影響度、等)、及びこれに伴う施策の実施、実施後の妥当性評価、等のリスク管理の手順を定めること
認定業務の実施、管理状況の確認:
認定業務が定められた手順に従って実施されているかどうかを定期的にチェックし、継続的に監視すること(内部監査、等)。尚、内部監査については認定事業場の業務規定に実施を義務付けられており、安全管理体制について定めた文書の中でこれを明らかにしておくこと必要があります
認定業務に実施及びその管理の改善:
安全管理体制を構築する要素につき、有効に機能しているかどうかの評価を定期的に行い、必要により改善措置を講ずる手順を定めておくこと
教育・訓練に関する事項:
安全管理体制を社内に浸透させるために、教育、安全啓発セミナー、ヒューマンファクター訓練、等を行うこと。もって組織内の安全文化の醸成を図ること

9.事業場認定を受けた者の責務
認定を受けた者は、技術上の基準に適合性を維持すると共に、公正且つ業務規程に従って業務が実施されるよう運営しなければなりません。基準に適合していることが充分に確認されていないにも拘らず、進捗管理・納期管理等の理由で確認主任者に指示・強要する等、不当な圧力かけないよう業務規程に定めなければなりません

Follow_Up:2,019ねん9月、国交省は相次ぐ検査不正を受け、監督方法の見直しを行った(国交省・相次ぐ検査不正で航空機整備の監督強化

確認主任者の確認の方法
㋑ 設計検査認定における検査の確認の方法
国の検査官または確認主任者によって予め承認された“適合性証明計画”で検査の確認を要求している事項(図面・設計書・試験方案・試験供試体・試験報告書、等)については、確認主任者自らが検査を実施する必要があります。全ての検査が終了した後、検査結果を記録している書類に署名または記名・押印します。尚、以下の証明、承認については国の検査の一部を行わないことがあります;
*耐空証明
*型式証明及びその変更
*追加型式証明の承認及びその変更
*修理改造検査
*予備品証明
*型式・仕様承認に係る設計の変更

また、確認主任者が確認すべき事項と、必要事項の記入、及び署名または記名・押印する書類は以下の通り;
図面・設計書の検査:航空機、装備品が所要の基準に適合していることを当該図面・設計書が示していることの確認を行います。必要事項を記入し、署名または記名・押印する書類は“適合性判定書”となります
試験方案の検査:内容が試験の目的に適っていることの確認を行います。必要事項を記入し、署名または記名・押印する書類は“適合性判定書”となります
試験供試体の検査:設計書類通りに製作されたことの確認を行います。必要事項を記入し、署名または記名・押印する書類は“適合検査記録書”となります
試験セットアップの検査:試験方案通りにセットアップされたことの確認を行います。必要事項を記入し、署名または記名・押印する書類は“適合検査記録書”となります
試験の立会:試験方案通りに試験を実施して場に立会い、試験結果及び試験中に発生した事象が正確に既得されたことを確認します。必要事項を記入し、署名または記名・押印する書類は“試験立会記録書”となります
試験報告書の検査:航空機、装備品が所要の基準に適合していることを当該試験報告書が示していることの確認を行います。必要事項を記入し、署名または記名・押印する書類は“適合性判定書”となります

尚、確認を行う者は以下の重複条件を満たさなければなりません
*設計書類の検査・確認を実施する者は、検査・確認の対象となる設計を担当した者であってはならない
*試験供試体、試験セットアップを行う者は、その検査・確認を行う者であってはならない
*試験を実施する者は、その検査・確認を行う者であってはならない
*確認を行う確認主任者は、航空機、装備品の設計検査を担当した者でなければなりません

㋺ 耐空性の基準に適合することの確認の方法;
航空機製造検査認定:製造過程及び完成後の現状が基準に適合することを以下の方法で確認します;
<製造過程>
*航空機が“業務規定”に規定されている品質管理制度、作業の実施方法に従って製造されていること
*航空機及び装備品に適用となっている“耐空性改善通報”が指定された方法に従って検査が実施されていること
<完成後の現状>
*航空機が“業務規定”に規定されている品質管理制度、検査の実施方法に従て検査され、これに合格していること。
*完成後の検査に関する記録が“業務規定”に従って作成されていること
<署名または記名・押印する書類>
*航空機基準適合証
*搭載用航空日誌

航空機整備検査認定:整備及び整備後の現状が基準に適合することを以下の方法で確認します;
<整備>
*航空機が“業務規定”に規定されている品質管理制度、作業の実施方法に従って検査前整備、またはそれに代わる整備が実施されていること
*航空機及び装備品に適用となっている“耐空性改善通報”が指定された方法に従って実施されていること
*不具合が発見された場合には、是正措置が適切に実施され耐空性の確認が行われていること
<整備後の検査>
*航空機が“業務規定”に規定されている品質管理制度、検査の実施方法に従って検査され、これに合格していること。
*検査によって発見された不具合の是正措置が適切に実施されていること
*前回耐空検査を受けた以後に実施された整備、改造について適切に行われていることを航空日誌により確認すること
*航空機及び装備品に適用となっている“耐空性改善通報”が指定された方法に従って実施されていることを航空日誌により確認すること
*整備及び整備後の検査に関する記録が“業務規定”に従って作成されている
こと
<署名または記名・押印する書類>
*航空機基準適合証
搭載用航空日誌

航空機設計検査認定、装備品設計検査認定:型式証明又は追加型式設計の承認を受けた航空機の設計変更について基準に適合することを以下の方法で確認します;
<作業の実施方法>
*設計変更の作業が“業務規定”に規定されている品質管理制度、検査の実施方法に従って適切に検査されていること
<検査の実施方法・確認の方法>
*設計変更に係る図面・解説書・試験供試体・試験方案・試験報告書等につき、“業務規定”に規定されている検査の実施方法、検査の確認の方法に従い検査を行い、これに合格していること
*最終的な結果を総合し、耐空性の基準(騒音、排出物を含む)を満たしていること
*設計及び設計後の検査に関する記録が“業務規定”に従って作成されている
こと
<署名または記名・押印する書類>
設計基準適合証

装備品製造検査認定・航空機製造検査認定:装備品の製造過程及び完成後の現状が基準に適合することを以下の方法で確認します;
<製造過程>
*装備品が“業務規定”に規定されている品質管理制度、作業の実施方法に従って製造されていること
*当該装備品に適用となっている“耐空性改善通報”が指定された方法に従って実施されていること
<完成後の現状>
*当該装備品が“業務規定”に規定されている品質管理制度、検査の実施方法
に従って検査され、これに合格していること。
*完成後の検査に関する記録が“業務規定”に従って作成されていること
<署名または記名・押印する書類>
*装備品基準適合証
*搭載用航空日誌

装備品修理改造認定:修理または改造の計画、過程、完了後の現状について基準に適合することを以下の方法で確認します;
<計画・過程>
*装備品の修理、改造が“業務規定”に規定されている品質管理制度、作業の実施方法に従って計画され、実施されていること
<現状>
*計画通り実施され、修理、改造に係る記録が“業務規定”に沿って作成されていること
<署名または記名・押印する書類>
装備品基準適合証

航空機整備改造認定:整備または改造の計画、過程、完了後の現状について耐空性の基準(騒音、排出物を含む)に適合することを以下の方法で確認します;
<計画・過程>
*以下の作業の実施方法に従い、“業務規定”に規定されている品質管理制度に基づき実施されていること;
具体的には、認定事業場(航空機の整備又は改造の能力)における作業の実施方法、または設計者が指定する方法(SB/Service Bulletin、等)に基づき作成された作業書等に従って作業を行うこと。但し、実施する作業の内容が簡潔かつ明確であり、記録が適切に残される場合はこの限りでありません。当該作業書等を作成する場合は、事業場において承認されたものでなければならりません。
改造の実施方法は、以下のいずれかでなければなりません;
(a) 型式設計の変更の承認を受けた改造(一般にSB等により改造の方法が示される)
(b) 追加型型式設計承認(STC)を受けた改造(一般に改造指示書等により改造の方法が示される)
(c) 日本の型式証明を受けていない航空機についての同等追加型型式設計承認を受けた改造(一般に改造指示書等により改造の方法が示される)
<現状>
*計画通り実施され、修理、改造に係る記録が“業務規定”に沿って作成されていること
<署名または記名・押印する書類>
搭載用航空日誌

既に承認を受けている装備品部品の型式、仕様の設計変更について適合性の確認
<署名または記名・押印する書類>
装備品基準適合証

㋩ 確認主任者の確認の手法
認定事業場は選任した確認主任者に現物確認か書類確認のどちらか、又はその組合せについて明確に規定しておかねばなりません。但し、設計検査認定については現物確認に限ることになっています
現物確認とは
確認主任者が現物確認を実施する場合、確認を行う項目、確認の手法、確認の基準を明確にしておくこと、及び当該業務に必要な能力を有していることが必要です
書類確認とは
個々の作業及び検査が、その業務を行うに足る充分な能力を有している者により“業務規定”に沿って行われていることを書類において確認することです

10.認定事業場の国への報告義務
安全性に大きな影響を与える以下の不具合事象については、認定事業場の主たる所在地を管轄する地方航空局航空機検査官室に報告を行わなければなりません;
a) システム又は装備の不具合による火災
b) エンジン、機体、装備品等に被害が生じたエンジン排出システムの不具合
c) 操縦室又は客室への有害ガスの発生
d) プロペラコントロールシステムの不具合
e) プロペラ、又はローターのハブ、又はブレードの不具合
f) 火花が発生する場所への可燃性液体の流失
g) 使用中に発生した構造又は材料の不具合によるブレーキの故障
h) 機体の一次構造における重大な不具合(疲労亀裂、コロージョン等)
i) 構造又はシステムの不具合に起因する異常振動、バフェット
j) エンジンフェイル
k) 航空機の飛行性能に影響するような構造やシステムの不具合
l) 使用中における2以上の電気又は油圧系統の喪失
m) 使用中における2以上の姿勢、速度、高度計の不具合
n) 上記事象に結びつく可能性のある装備品等の重大な不具合
o) 上記事象に結びつく可能性のある設計上の不具合(設計検査認定のみ)
p) 認定業務実施中に発生した“業務規定”違反の事例

以上

高齢スキーヤーが疲れないスキーを行うには

はじめに

再びスキーシーズンが巡ってまいりました。雪が消えると共に萎んでしまったスキーへの情熱が、雪の便りと共に再びムクムクと頭をもたげてきました。前回の投稿は昨シーズンが終った頃、“高齢スキーヤーが安全なターンを行うには”というテーマで以下の様な持論を展開いたしました;
① スピードを一定にして滑ること。また、スピードをコントロールするにはスキーのズレをうまく使うこと
② 筋力とバランス感覚が衰えた高齢スキーヤーには、腿を立てた滑降姿勢に合理性があること
③ スキーの性能を生かした所謂‟カービングスキー”のテクニックは緩斜面のみ!で駆使すること
④ 上記を理解して頂くために、滑降中のスキーヤーに働く力(重力雪面からの抵抗力遠心力)の説明をしました。尚、‟遠心力”とはスキーヤーが方向を変えることによって体感する架空の力で、物体の運動は力を加えない限り同じ方向・速度で進むという、高校時代に習ったニュートンの「慣性の法則」から来ているものです

これらを踏まえた上で、今回のテーマは怪我の原因の一つとなる“疲れ”の原因と、その対策について、簡単なシミュレーションを行ないながら論じてみたいと思います

疲れの原因

滑降中に姿勢を維持するだけで疲れてしまうことを防ぐ為に、前回の投稿では“腿を立てて滑る”ことの必要性を述べました。これから述べるテーマは、腿を立てた状態で滑ることを前提として、滑走中にどういう力が加わって、疲れに繋がるかを検証してみたいと思います

当たり前の事ですが、筋力が同じであれば体重が重い程疲れも増します。若い人はちょっと鍛えるだけで筋力を増強させることができるためにあまり問題とはなりませんが、高齢者にあっては筋力は年々衰えることはあっても、増すことは考えられませんので、筋力をあまり使わないで済む滑りを目指すことが重要であることは自明のことです
一方筋力は、最低限  体重を支えるため、及び ② バランスを維持するために必要となります。乏しい筋力で疲れない滑りを行うには、この①、②を地面を歩く、あるいはジョギングする程度に抑えることが必要になります

① については、静止していれば体重そのものですが、滑走していれば、体重プラス動的な力が加わります
② については、前後方向のバランスのズレ滑走速度の変化で発生し、これを修正するには,主として体の前面の大きな筋肉(脛の前の筋肉、大腿四頭筋、腹筋)を使う必要があります。バランスを取れないまま(後傾したまま)滑走を続けると、疲れの大きな原因になります。バランスのズレを早く感知できれば何のことは無いのですが、残念ながら高齢者はこの能力もかなり衰えてます
また、左右のバランスのズレは、スキーの横方向から擾乱を受けた時に発生します。ズレた結果、片側の足に加重が偏り、片足で体重を支え切れない(椅子に座った状態から片足で立てない)高齢者は、そのままズレた側に大木が倒れていくようにくずおれてゆきます。チョット見っとも無いですね!倒れる前に何とか堪えようとする時に脚はもとより、全身の筋肉が緊張し非常に疲れます。高齢者がバランスのズレを早目に感知できないのは前後方向のズレの場合と同じです

①、②がどの程度のものか、またこれを減らすにはどうしたらいいかについて、以下にシミュレーションを交え、簡単な説明を試みたいと思います

カービングターンの力学と疲れ

カービングターン
カービングターン

カービングターンのカービングとは、“曲がる”という意味の“Curve”ではなく、“彫るまたは彫刻する”という意味の“Carve”のことです。従ってカービングターンとは、読んで字のごとく、雪をスキーで彫りながら(スキーを雪に食い込ませながら)、極めてズレの少ない回転をすることを意味します。綺麗なカービングターンを行っているスキーヤーの滑ったうしろにはくっきりとした二本のレール状の軌跡が残っているのですぐに分かります

カービングターンは、スキー板の性能向上、具体的にはスキーの長手方向の捩り剛性の向上(航空機の翼に求められるの性能と原理的には同じ)とサイドカーブ(スキー板の横幅の部分の曲線)の強調によって可能となりました。しかし、一方においてこの性能を極限まで使う上級スキーヤーの肉体には過酷な荷重が加わることとなりました。因みに、ワールドカップクラスのスキーヤーにも過大な捩り荷重に伴う怪我が多発した時期もありました。また一般スキーヤーも、最も視界が狭まるターン途中に於いて高速滑降が実現できる(⇔上級スキーヤーにとっての快感の源泉!)こととなった為、最大傾斜線を越えた直後に突然視界に入ってくる一般スキーヤーやボーダーとの衝突事故が多発することとなりました

勿論、高齢スキーヤーは無謀にスピードを出すことは無いでしょうから、ここでは“疲れ”に関連するカービングスキーの性能について、大胆な!前提を置いて解析してみたいと思います

カービングターンを行った時の見かけの体重増=“脚にかかる荷重”についての計算;
前提;
① ターンに入る前の滑走速度:20キロ/時
② スキーヤーの質量:M
③ ターンの回転半径:r
ケース_: r =20メートル( ⇔ 普通に売られているオールラウンドのスキーでカービングターンを行った時の回転半径)
ケース_B : r =10メートル( ⇔ 回転競技用で売られているスキーでカービングターンを行った時の回転半径)

仮定(シミュレーションを簡単にするため)
④ ターンに入ると最大傾斜線を越えるまで重力の作用で加速し、その後減速して20キロ/時でターンを終了することとし、最大傾斜線付近の最大速度を30キロ/時と想定する(勿論、この速度は斜度及び雪面の状況により大きく変化しますので、あくまで仮定です)
30キロ/時 ⇒ 30x1000メートル ÷ 60分 ÷ 60秒 = 8.3メートル/秒
<参考> 徒歩:4キロ/時、ジョギング:7~10キロ/時、自転車:10~20キロ/時
⑤ 比較的緩やかな斜度を想定 ⇔ 雪面にかかる荷重がほぼ体重と同じと見做し得る

スキーヤーにかかる遠心力:C の計算;
遠心力:C=(質量:M)x(速度の2乗)÷(回転半径:r
ケース_:C = Mx8.3x8.3 ÷ 20 = Mx3.4
ケース_B :C = Mx8.3x8.3 ÷ 10 = Mx6.9
一方、スキーヤーにかかる重力:w は、
=(質量)x(重力加速度)= M x 9.8
重力、遠心力、脚にかかる荷重:W との関係は下図をご覧ください;

重力・遠心力・見かけの重力
重力・遠心力・見かけの重力の関係

重力遠心力脚にかかる荷重との間の関係は、ピタゴラスの定理を使えば;
W の2乗) =(w の2乗)+(C の2乗
となり、見かけの重力は、重力の2乗と遠心力の2乗の和の平方根の値になります

上記を基に、見脚にかかる荷重と、体を倒す角度:θ を計算すると;
ケース_A :W={(3.4x質量)の2乗+(9.8x質量)の2乗}の平方根 ⇒ M x 10.4
重力脚にかかる荷重の比は:(M x 10.4) ÷( Mx9.8)= 1.06 ⇒ 体重が6%増えたと同じ
体を倒す角度:θ = arccos(1÷1.06)= 19° ( ← 三角関数の逆関数)

ケース_B :W={(6.9x質量)の2乗+(9.8x質量)の2乗}の平方根 ⇒ M x 12.0
重力脚にかかる荷重の比は:(M x 12.0) ÷( Mx9.8)= 1.22 ⇒ 体重が22%増えたと同じ
体を倒す角度 : θ = arccos(1÷1.22)= 35°( ← 三角関数の逆関数)

上記のシミュレーションにより、カービングターンを行うと、次の様な高齢スキーヤーにとっては過酷な!状況が発生することが分かります;
* ターンを始めると最大傾斜線まで一気に加速します。高齢スキーヤーにとっては、この速度変化に伴う前後のバランスのズレを感知してから、筋肉が修正行動を起こすまでのタイムラグが大きいので、破綻する可能性が大きくなります
* ターンを始めて速度が変わっていくのに合わせて左右のバランスを維持するためには、体の傾き(上記の“θ”)を変化させていく必要があります。この傾きの補正が適正でなければ、左右の足にかかる荷重がアンバランスとなり、荷重が多くかかる足の負担が大きくなります。片足で自分の全体重を支えられなくなった高齢スキーヤーにとっては相当過酷な状況が現出します
* また左右の荷重バランスが崩れると、荷重が多くかかったスキーが雪に大きく食い込み(逆に荷重が減ったスキーの雪への食い込みが浅くなり)、結果として左右のスキーの回転半径を協調させることが困難 となり破綻するリスクが高まります(過去、私が高速で転倒して怪我を負ったのはこのケースだったと思っています)

展示用!カービングターン
展示用!カービングターン

上写真は、高速のカービングターンですが、上記のシミュレーションでわかる通り、速度を上げるか、回転半径を小さくするかで実現します。また、シミュレーションでは斜面の斜度を無視しましたが、急斜面で滑れば雪面に直角な方向の重力の分力は小さくなりますので、同じ速度、同じ回転半径でも体の傾き(“θ”)は大きくなります。
これほど体を傾けられれば、見た目は格好いいとは思いますが、足には体重の倍近い荷重がかかってくると共に、速度が早いのでバランスのズレに伴う破綻のリスクが相当高くなりますので、高齢者にはとても薦められないスキースタイルだと思われます

外向・外傾ーンの力学と疲れ

外向・外傾ターン
外向・外傾ターン

上の写真は、今から丁度30年前に撮影された私のスキー仲間の集団滑降写真です。この頃はカービングスキーが市場に登場する前で、上級者と言えばスキーのズレを自在に操り、所謂“外向・外傾”のターンを完璧に体現している人々でした。“外向”とは、スキーの進行方向に対してやや外側に向く姿勢の事です、また“外傾”とは、チョット分かり難いかもしれませんが、雪面に対して身体全体がバランスを保っている“軸”よりも上半身(あるいは“膝より上”⇔ショートターンをしている場合)を回転の外側に傾けているということを意味します。これは、スキーヤーの前方、乃至後方から見ると、平仮名の“く”の字に見えることから、“くの字姿勢”とも呼ばれていました。上の写真(外向・外傾ターン)でもターンの途中で“くの字姿勢”が良く見て取れると思います。因みに、展示用!カービングターンの写真には、全くこの姿勢が入っていません

外向”の姿勢は、ターンする方向に予め体が向いているので、結果としてターンの先行動作となっていること、また、ターンのスピードをコントロールする為にスキーをズラす時、体がスキーの進行方向を向くためにズレをコントロールすることが容易になると考えられます。一方、“外傾”の姿勢は、“くの字”姿勢の“く”の角度を変えることによって横からの擾乱に対するバランスが容易になると考えられます

次に外向・外傾ターンについて以下に簡単なシミュレーションを試みてみようと思います;
カービングターンのシミュレーションの時に使った前提の ①~③、及び仮定の ④ は外向・外傾ターンも同じとします
仮定のは、スキーをズラすことによって回転している間は速度を変えないこととしますので、ターンに入る前の20キロ/時をターンの終わりまで維持することとします。従って、
④’ 20キロ/時 ⇒ 20x1000メートル ÷ 60分 ÷ 60秒 = 5.6メートル/秒

遠心力:C’は、
ケース_A’ : C’ = Mx5.6x5.6 ÷ 20 = Mx1.6
ケース_B’ : C’ = Mx5.6x5.6 ÷ 10 = Mx3.0

以上より脚にかかる荷重 :W’ と体を倒す角度:θ を計算すると;
ケース_A’ : W’={(1.6x質量)の2乗+(9.8x質量)の2乗}の平方根 ⇒ M x9.9
重力との比は:(M x 9.9) ÷( Mx9.8)= 1.01 ⇒ 体重が1%増えたと同じ
体を倒す角度:θ’ = arccos(1÷1.01)= 8° ( ← 三角関数の逆関数)

ケース_B’ :W’={(3.0x質量)の2乗+(9.8x質量)の2乗}の平方根 ⇒ M x 10.2
重力との比は:(M x 10.2) ÷( Mx9.8)= 1.04 ⇒ 体重が4%増えたと同じ
体を倒す角度:θ’ = arccos(1÷1.04)= 16°( ← 三角関数の逆関数)

簡略化したシミュレーションにより、外向・外傾ーンはカービングターンに比べて、足にかかる荷重:W’と、体の傾き:θ’が、高齢スキーヤーにとっては優しいことが分かります。また、“くの字”姿勢の“く”の角度を変えることによって横からの擾乱に対するバランスが容易になり、結果としてターン中の転倒のリスクを低減させることが可能と考えられる点も高齢スキーヤーに優しいのではないでしょうか、、、

高齢者の皆さん、昔すいすい滑っていた外向・外傾ターンで颯爽とゲレンデを闊歩しましょう。また緩斜面では、習い覚えたカービングターンを駆使して若い女性ボーダーを追い越していきましょう!

以上