肥満指数(BMI)についての”はてな?”

最近、NHKテレビで“血糖値スパイクが危ない”(NHKスペシャル:NHKのサイト)を見る機会を得ました。健康診断などで血糖値がリミットを越えていなくても血糖値スパイクが起こると、脳梗塞心筋梗塞などによる突然死のリスクが高まることの他、がんを引き起こしたり、認知症を招く恐れがある」という衝撃的な内容で、私たち老夫婦には大変参考になる番組でした。番組の最後の方で、血糖値スパイクのリスクを数値化する8つの指標の中でBMIの数値が入っていた為、昔感じていたBMIという指標に対する疑問が再び頭をもたげてきました。

BMIとは、“Body Mass Index”のことで、以下で定義されている指数のことです(インターネットのサイトにも色々説明されています:);

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但し、体重はキログラム単位、身長はメートル単位で計算します。しかしこの式が意味する所は、中学校の数学で最初の頃に学ぶことですが、“体重は身長の二乗に比例する”と同義です。でもこれは本当でしょうか?
例えば、20cm山女魚(ヤマメ)を釣った時の重さと、30cmの山女魚を釣った時の重さを比べた時、重さの違いは2倍ちょっとどころか3倍以上に感じられるはずです

その理由は以下の説明でお分かりいただけると思います。体重体積密度を掛けたものですが、簡単のため、密度を水と同じ“1”とし、山女魚を体長(a)、体高(b)、厚み(c)の直方体とすれば、山女魚の重さは、a x b x c となります。また大・小の魚同士は、中学校で勉強したはずの“相似形”(⇔小さい山女魚も大きい山女魚も見た形が同じ)であることを勘案すると;

小さい山女魚の重さ = a xx c (以下“abc”と表示します)
30センチメートル ÷ 20センチメートル = 1.5 であることを考慮すると;
大きい山女魚の重さ = 1.5a x 1.5b x 1.5c5.06abc

従って、30cmの魚は、20cmの魚の約5倍になることが分かります。これは、言い換えれば“体重は身長の3乗に比例する”ということになります

現物の魚は“直方体ではないではないか”という理屈を言う人がいるかもしれませんが、頭の中で“現物の魚を小さな、小さな、立方体の集合体”と考えていただければ、私の言う理屈に納得して頂けるのではないかと思います
また、実験で確かめたいという人は、縁一杯まで水を張った水槽に魚を沈め、こぼれた水の量を比較していただければ上記理屈を証明できるはずです。尤も、肥満した魚と、餌が少なくてやせた魚がいて上記の理論値と若干異なる値となるかもしれませんが、これはまさしく“肥満指数”の基になる現象です

体重は身長の3乗に比例する”ことを前提として、新しい肥満度指数:“New BMI”を定義すると;

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となります。
New BMI の上限、下限を求めるには、身長に対する適正体重を、統計的に(あるいは医学的な見地から)決めてあげればいいと思います。
尚、“体重は身長の3乗に比例する”ということの具体的な意味は、身長の高い人も、低い人も、身体的な見かけ上のバランス(身長に対する横幅や厚み)が同じ比率になっているという意味になります。分かり易く言えば、現在のBMIに基づいた適正体重は、背の低い人は見かけ上“太って”見え、背の高い人が見かけ上“瘦せて”見えるということになります

統計的なデータが手に入らないので、BMIで推奨されている身長と体重の一部のデータが New BMI にも当てはまるという仮説をベースに、BMI と New BMI 違いを数値化してみたいと思います;

仮説 :日本人の平均身長(男性/170.9㎝、女性/157.8㎝;平均/164.4㎝)における適正体重の下限と上限を New BMI でも適正な下限と上限と仮定する。
BMIの下限は18.5、上限は25.0であることから ⇒
身長/164.4㎝の人の
下限体重は:18.5 x 1.64 x 1.64 = 49.8キロ
上限体重は:25.0 x 1.64 x 1.64 = 67.2キロ

これを New BMI に当てはめると;
New BMI の下限は:49.8 ÷ 1.64 ÷ 1.64 ÷ 1.64 = 11.3
New BMI の上限は:67.2 ÷ 1.64 ÷ 1.64 ÷ 1.64 = 15.2

この New MBI を使って、150㎝と人と195㎝の人の下限値、上限値を求めてみると;
150㎝の人では;
下限体重:11.3 x1.5 x1.5 x1.5 = 38.1キロ(BMIでは、41.6キロ
上限体重:15.2 x1.5 x1.5 x1.5 = 51.3キロ(BMIでは、56.3キロ
*上限体重と下限体重の差13.2キロ(BMIでは、14.7キロ)
*上限、下限の平均値(理想的な体重?):39.9キロ(BMIでは、49.0キロ

195㎝の人では;
下限体重:11.3 x1.95 x1.95 x1.95 = 83.8キロ(BMIでは、70.3キロ
上限体重:15.2 x1.95 x1.95 x1.95 = 112.7キロ(BMIでは、95.1キロ
上限体重と下限体重の差28.9キロ(BMIでは、17.6キロ)
*上限、下限の平均値(理想的な体重?):98.3キロ(BMIでは、82.7キロ

上記の数値を比較して分かる定性的なことは、“New BMI では上限、下限の体重の幅が、身長の高い人ほど大きくなる”ということです。若い頃バレーボールをやっていて、身長の高い人に囲まれていた私の経験では、身長の高い人にとって、この程度の体重の幅は、見た目で“健康”な体重の範囲と思われますが、如何でしょうか?
因みに、メジャーリーグで活躍しているダルビッシュの身長は、196㎝、体重は100キロです

以上

航空機の鳥衝突による安全性について

-はじめに-

最近上記のポスターで宣伝している映画、「ハドソン川の奇跡」を見る機会を得ました。私の大好きなクリント・イーストウッド(監督)と、トム・ハンクス(主演)がコンビを組んでいますので、観ないわけにはいかなかった!のですが、思いがけず非常時におけるパイロットの行動(会話に航空専門用語が多く使われており、一般の方には分かり難いとおもいます)や、映画ではめったに観られない米国のNTSB(National Transportation Safety Board/日本の運輸安全委員会に相当)による審問の場面が多く、私の様な航空オタクにとっては最高に面白い映画になっていました。

恐らくこの映画が米国でヒットしたことで、航空機の鳥衝突(Bird Strike)事故が 一般大衆の話題になった為と思われますが、数日前に届いた‟Aviationweek & Space Technology”の最新号に航空機の鳥衝突事故の記事が出ていましたので紹介いたします

-鳥衝突(Bird Strike)の被害状況と対策の概要-
添付資料:Bird-Strikeの被害状況と対策

<鳥衝突のデータ>
米連邦航空局の‟National Wildlife Strike Database” によれば野生動物の衝突事故(米国内;鳥以外を含む)は;
* 1990年1月1日~2015年12月31日:177,269回/26年間 ⇒ 6、818回/年
* 2015年1年間:13,162回/年 ⇒ 2009年1年間:9,540回/年
* 鳥が航空機に衝突する箇所の内、一番多いのはエンジンで全体の29%(鳥以外の野生動物の衝突を除く)を占めている。航空機の他のダメージ箇所については添付資料参照)

鳥衝突によるファンブレードの損傷
鳥衝突によるファンブレードの損傷の例

* 2011年~2014年に於ける鳥衝突件数の最も多い空港はダラス空港。他の空港(ベスト10空港)については添付資料参照

ICAO(International Civil Aviation Organization/国際民間航空機関)の統計における世界の鳥衝突回数の統計(米国のデータは主要10空港のみ);
* 2011年~2014年:65,139回/4年間 ⇒ 16,285回/年

<鳥衝突に関わるエンジンメーカー、航空会社の対応>
 P&W(プラット・アンド・ホイットニー)社の設計主任者によれば;
* 殆どの鳥衝突はエンジンにダメージを与えない。またダメージの多くはエンジンファンケース内側の吸音パネルに亀裂やへこみを与える程度である(←吸い込まれた鳥が、ファンの回転により遠心力でファンケースの内側に叩きつけられる為)

PW4000シリーズのエンジン
PW4000シリーズのエンジン

* 大型の鳥が高速で衝突した場合、ファンブレードのリーディングエッジに損傷を与えることがある。しかし、この場合でもエンジンを止めないで着陸するまで運転を継続することが可能で、着陸後にダメージを受けたファンブレードの交換を行うことでエンジン本体の交換は不要な場合が多い

鳥衝突に強い最新のファンブレード
鳥衝突に強い最新のファンブレード

* 最近のエンジンのファンブレードは幅広(Wide Chord)になっており、また旧タイプのエンジンのファンブレードに設けられていた‟Part Span Shroud“(ファンブレードの振動を軽減する、等の目的で設けられていた)が無い為、鳥衝突による衝撃をファンブレードの変形で逃がすことができ、破損リスクを軽減させている

* MRJから装着されている最新技術のGTF(Geared Turbofan/Fanの回転を歯車で減速し効率を上げている)エンジンでは、ファンの回転速度が低くなっており、鳥衝突による破損リスクを更に軽減させている

GE(ジェネラル・エレクトリック社の技術顧問によれば;
* 最新のエンジンのファンブレードでは、カーボン・ファイバーのファン本体のチタン製のリーディングエッジを取り付け、鳥衝突による破損リスクを飛躍的に軽減させている
* 最新のエンジンでは、これまでのところ鳥衝突による大きな損傷は報告されていない。報告されている損傷の内容は、ファンブレードのへこみや、エンジンファンケース内側の吸音パネルのへこみなど軽度のもののみである

SWA(サウスウェスト航空)の品質管理の責任者によれば;
* 鳥衝突による損傷の内容は、ファンブレードや圧縮機のブレードの損傷や、エンジンから圧縮空気(Pneumatic Air)を取り出すパイプの詰まりが代表的なもので、目視で見えない部分は“Bore Scope Inspection”(内視鏡によるエンジン内部の検査)で損傷の有無を確認する。
* 殆どの鳥衝突による損傷は、損傷した部品のみを交換する(24時間~48時間で作業完了可能)ことで航空機を運航に供することが可能であり、エンジンの交換を要する事例は1年間で1件程度である(SWAの保有機数は700機弱!)

MTU(ドイツのエンジン製造、及び整備を行う会社)の性能技術の責任者によれば;
* 吸い込まれた鳥は、ファンの排気口(外側;最近のバイパス比の大きいエンジンでは大半のエアがここから排気される)に向かう気流と、エンジンの中心部から、低圧圧縮機→高圧圧縮機→燃焼室→高圧タービン→低圧タービン→排気、に向かう気流に分かれる。
* 衝突した鳥が、上記の気流に乗った場合は、一般に損傷も小さいし、また損傷を受けても修理は容易である
* 衝突した鳥が、上記の気流に乗った場合は、エンジンに深刻な損傷を与えることがある。特に、低圧圧縮機のブレードが破損し、それが後段に連鎖的に損傷を与えた場合、エンジンの機能が完全に失われることがある(こうしたエンジンを分解すると圧縮機やタービンのブレードが全て根本近くから喪失し、トウモロコシ‟Corncob”状のようになることがあり、損害額は数億円に上ることがある)
* 衝突する鳥が少ない為にパイロットが気づかないことも多い。この場合でも、エンジン性能に関わる指標の変化(振動や性能劣化など)があれば、“Bore Scope Inspection”などで損傷の有無を詳細に確認する

<鳥衝突に関わるFAAの規定>
添付資料:far_bird-ingestion

群れで飛ぶ鳥に対するエンジンの耐空性試験は、以下の3つのカテゴリーに分けて実際の鳥(安楽死させた!鳥を使用)を衝突させて行う;
① 小型の鳥(例:米国千鳥、北米マキバドリ)の群れ:3オンス(約85グラム)の鳥
中型の鳥(例:カモメ)の群れ:0.77~2.53ポンド(0.35~2.53キログラム)の重さの鳥の組み合わせ
①、及び②の試験では、エンジンの口径により細かく決められている重さと数の鳥をエンジンに打ち込み、吸い込んだ後20分間75%以上の出力を維持し安全に運航を継続できなければならない

大型の鳥(例:ハクガン)の群れ:エンジンの口径により決められている重さ(4.08ポンド/1.85キログラム、又は4.63ポンド/2.10ポンド、または5.51ポンド/2.50キログラム)の鳥を1羽エンジンに打ち込み、、鳥を吸い込んだ後50%以上の出力を維持し安全に運航を継続できなければならない(←離陸して鳥に衝突した後、空港に安全に引き返すために必要な時間)

動画:ロールスロイス・トレントエンジンの鳥衝突試験

2007年、エンジンの耐空性試験に大型の鳥の衝突に係る以下の規定が新設された;
* 実際の大型の鳥の衝突試験を行う。エンジンの口径により決められている重さ(4.07ポンド/1.85キログラム、又は6.05ポンド/2.75キログラム、又は8.03ポンド/3.65キログラム)の鳥を1羽エンジンに打ち込む。鳥を吸い込んだあと、エンジンを安全に停止させることができ、且つ航空機に何等損傷を与えないことを証明する必要がある

鳥衝突によるレーダードームのへこみ
鳥衝突によるレーダードームのへこみ

レーダードーム(胴体の先端部)、操縦室(コックピット)前面のガラス窓の鳥衝突に関わる耐久性試試験は、NTS(National Technical Systems Inc.)で一括して行われている。
実施方法は以下の通り;
* 4ポンド/1.8キログラムの実際の鳥(安楽死させた!ばかりの鳥を使用)を10~20フィート(3~6メートル)の距離から空気銃(Pneumatic Cannon)を使って350ノット(時速513キロ)で打ち出して衝突させ、破壊されないことを確認する
* 操縦室については、ガラス窓の耐久力だけでなく、現物の操縦室内の各所に加速度計と歪み計を設置し、鳥の衝突によって電子機器類が誤動作しないことを確認する

<参考>
日本で馴染みのある鳥の平均の重さ;
スズメ/約30グラム;海猫/約550グラム;マガモ/1.1キログラム;ニワトリ/1.8キログラム;大白鳥9キログラム
尚、北米では‟Canadian Goose”という大型の渡り鳥が多く生息していますが、この鳥は3.9~10.9キログラムもあり、FARの耐空性試験でもカバーされていません

-日本に於ける鳥衝突事故の現状-

日本は海岸沿いの空港が多く、鳥衝突事故が多く発生しています。航空局に於いても被害状況の調査と、その対策を積極的に実施しています。
詳しくは航空局が公開している添付資料:鳥衝突データ by 航空局 をご覧ください

尚、衝突件数を米国のデータやICAOのデータと比較することは、データ採取のメッシュが異なると思いますので行わないでください

以上