地方創生とエアラインビジネス

500キロメートル程度の飛行距離でジェット機よりも経済性で優位にある

幕藩体制が崩壊した明治維新後の日本は、経済の発展と歩調を合わせるように人口の大都市集中が起こり、先の大戦後は益々その傾向が顕著になっています。戦後、経済基盤と人の地方分散を狙った様々な政策が実行されましたが、残念ながらこの傾向に歯止めをかける状況にまで至っていません。また昨今話題となっている大都市在住の若年層の高い失業率や貧困の問題、地方都市の人口減と高齢化の問題は人口の大都市集中と無縁ではないと思われます

考えてみれば、肥大化した大都市人口のかなりの部分が地方都市出身者であり、彼らはふるさとに残した親、親戚、友人との強い絆を持ったまま、大都市の一角にその住まいを構えているのではないでしょうか。宅配便の発達で“物”の交流については著しい進歩がありました。しかし、地方都市出身者や地方に残した人々が本当に求めているものは“人”の自由な交流ではないでしょうか。地方都市と大都市圏を結ぶ“人”の交流を阻んでいるものは、言うまでも無く交通費と所要時間の問題です。遠いふるさとを訪ねたいと思った時に、隣町に行く様な気軽さで行ける事になれば、その心理的な距離は著しく近くなるに違いありません

戦後、国と地方が一体となって努力してきた結果、既に各地方都市には立派な空港が整備されています。また航空自由化の進展によって幾つかの新しい航空会社が誕生し、既存の航空会社や、新幹線との競争が激しくなり、航空運賃の低下がある程度は実現しています。しかし競争が厳しくなればなるほど採算性が重視されることは経済の原則です。この結果、競争による運賃の低下や発着便数の増加は需要の多い幹線や準幹線では顕著になっているものの、せっかく整備した地方空港への便については必ずしも競争による恩恵を受けているとは言い難いのではないでしょうか

いま日本の航空輸送の大半を担っているジェット機は、そのスピードと大きな旅客収容能力によって経済性を発揮しています。従ってジェット機を需要の少ない路線や短距離路線に投入すれば必然的に経済性は悪化し、結果として地方都市への路線運営は後回しになってしまいます。これに対し、ターボプロップ機は500キロメートル程度の圏内であればジェット機に比べ経済性が高く、またこの圏内であればスピードの違いも目的地への飛行時間に与える影響はそれほど大きくはありません。従って500キロメートル圏内の比較的小規模な需要の路線にターボプロップ機を投入すれば、便数頻度や発着時間帯の面でジェット機に対する優位性を発揮することは充分に可能であると考えられます
また、空港へのアクセスの面では、大都市圏の基幹空港は利用者が多く競争原理が働くために利便性が高く航空会社は特別な配慮も行っておらずまたその必要もありません。しかし多くの地方空港では、そのアクセスに問題があり鉄道輸送との競争において圧倒的なスピード差があるにも拘らず劣勢に立たされているのが現状であると思います。本来空港へのアクセスにおいては何らかの地上輸送と接続し一貫した輸送体系を築くべきですが、ジェット機を使用する場合その大きな旅客収容能力と低い便数頻度によってこの一貫した輸送体系を築くのを困難にしています。これに対しターボプロップ機は、旅客収容能力がバス1~2台分であり主要な鉄道のターミナル駅とバス輸送と接続することにより、言わば鉄道の駅を“空港化”することが可能であると考えられます

シナジー効果

大都市圏と地方都市との間には以下の様な環境の差があります;

① 土地・建物等の不動産価格の差(⇔余剰不動産の差)
② 人件費単価の差(⇔失業率の差)
③ Living Costの差
④ 産業誘致に対する自治体の優遇措置(熱意)の差
⑤ 子育て環境の差
⑥ 高等教育施設の質、量の差
⑦ 遊戯施設、文化施設の差
⑧ 自然環境の差

これらの差は人の流れを作り出すポテンシャルを持っており、500キロ圏内の人の移動時間(30分~1時間)、移動コスト(5千円~1万円)をうまく結びつければ新しいビジネスを生み出すことができる

新しいビジネス(ビジネス・モデル)の例
1.通勤型“出稼ぎ”支援ビジネス
地方都市から大都市圏に週間1往復の通勤を行う(金帰月来)。ウィークデイは大都市圏の簡素な宿泊施設(単身者用)に宿泊し、週末は地方都市の自宅で過ごすライフ・スタイルを可能にする「通勤費」プラス「宿泊施設提供」を一体化して提供するビジネス
*地方都市から大都市圏への通勤費:52週x2x(5千円~1万円)、及び単身用宿泊施設から会社までの交通費の大半を会社負担とすることを想定する ← 通勤時間が1時間30分を越す比較的遠距離通勤を行っている会社員の会社支給の通勤費と大差ないと考えられる
*割引の週間通勤定期(52回/年)運賃を設定する。この定期を使って家族の一員も大都市圏に出かけることを可能とする
*成長軌道に乗り始めた日本の経済を勘案すると、大都市圏で人手不足となる企業が増加する可能性が高い
*2020年のオリンピックに向け、首都圏で土木・建設作業者の不足が懸念されてい

*地方都市で介護が必要となる老親を抱えている社員が増加傾向にあり、これらの社員に「退社」、「嫌がる老親の大都市への呼び寄せ」、「老親介護の放棄」以外の選択肢を提供する
*地方出身の若い夫婦の子育てを親の実家で行うことが可能となる
*地方都市における税収(県民税、市民税)が増えると同時に人口減に歯止めが掛かる為、地方自治体から何らかのバックアップが期待できる

2.スマート・オフイス提供ビジネス
IT関連企業に代表される様な、インターネット環境さえ整えれば場所を問わない企業にネット環境を整えたオフイス及び簡素な宿泊施設を賃貸するビジネス
*対象企業の社員は大都市圏から週間1往復程度の通勤、及び大都市にある本社で行われる諸会議に参加することを前提として企業、社員の心理的なバリアーを下げると共に、本社とオフイス間の距離に起因する効率低下を防止することが可能
**企業が負担する通勤費:(52週+諸会議回数)x2x(5千円~1万円)
**割引の週間通勤定期(52回プラス諸会議回数/年)運賃を設定する。
**一般にIT関連企業は業務量のPeak/Valleyが激しく、業務のPeak時には労働 準法を越える残業が行われているとも言われているが、このスマート・オフイスを使うことによりこうした悪しき労働環境を改善していくことが可能となるほか、比較的大きなプロジェクトを、所謂“合宿環境”の中で効率的にグループ業務を行うことにより納期遵守、短縮、等が期待できる
*地方都市における税収(固定資産税)増、通勤社員による消費増、及びスマート・オフイスを賃貸した企業が地方採用の社員を雇用する可能性があり、地方自治体から何らかのバックアップが期待できる

3. 都市生活者への農地提供ビジネス
地方都市周辺の耕作放棄地及び空き家を廉価で賃借し、10アール(100平米)程度の単位で宿泊施設付きで賃貸するビジネス
* 最近、大都市在住者の中に農業を志向する人が増加している。しかし住宅密集地では猫の額の様な菜園ですら確保することも難しく、また賃貸料も高い。また、車での移動を前提とし大都市周辺地区で比較的広い面積の農地を確保する方法も、農地の賃貸料が高い(都市圏への野菜提供農業が盛ん;住宅地に転用できれば高く売れる)為に余り行われていない。一方、地方都市では農業放棄地が急速に増加しつつあり、こうした農地の確保には全く問題無い
*個人負担の交通費:5回程度x2x(5千円~1万円)←根菜類、穀類、果樹、手間の掛からない野菜栽培を想定。
*収穫物の輸送は50キログラム/1回まで無料サービス
*人力では負担の大きい付帯業務(耕す、元肥漉き込み、等)は遊休の大型農業機械を使って比較的安価で委託可能:1アール当り5千円程度?/1年(除く肥料代)
*地方都市周辺の耕作放棄地の有効活用、種苗・肥料・殺虫剤、等の売上増、遊休大型農業機械の有効活用が期待でき、地方自治体、農協などから何らかのサポートが期待できる

4.大都市圏と地方都市を結ぶ路線に特化したビジネス
以下の様な大都市圏と地方都市との間に存在するやや特殊な旅行需要に焦点を絞った旅行ビジネス;
①墓参り、法事、等に伴う帰省
②大都市圏の地方出身大学生の帰省、保護者等親族の大都市圏への旅行
③大都市圏在住の小・中・高校生を対象とした春休み、夏休み期間の田舎生活体験ツアー(廃校活用、高齢者農家による民宿、等;滞在期間:1~2週間)
④地方都市の若年層を対象とした格安のテーマパーク、コンサート参加ツアー(夕方発、空港での仮眠)
⑤地方都市在住の文化愛好者を対象とした展覧会、コンサート(クラッシック)参
加ツアー
⑥子育てを親の居る故郷で行う(父親は大都市圏で単身生活。週末に故郷を往復する)
⑦早朝・深夜便を使った日帰り観光(宿泊費節約)

*割引回数券の設定(①、②対象;高速バスと鉄道運賃との中間の運賃設定)
*チェックイン貨物の無料化(②の保護者等親族の旅行の場合;50キログラム以内)
*団体割引運賃の設定(③、④)
*テーマパーク料金込みのパック料金の設定
*地方都市の活性化に繋がる為、地方自治体のサポートが期待できる

<参考>宅配便ビジネスの隆盛に伴い新たに生まれたビジネス・モデル、新規需要、等
*料金代引サービス活用によるビジネスの活性化:各種通信販売ビジネス、メーカーのアフターサービス(修理品回収、返品、補修部品送付)
*各種産直ビジネス
*航空ビジネスとの連携:自宅⇔空港間の手荷物輸送、全国宅配ネットワーク活用による航空貨物部門との連携(ANAカーゴとヤマト運輸とのパートナーシップ)
*重い道具が必要なスポーツ活動との連携:ゴルフ、スキー・スノーボード、サーフィン

以上