電動航空機の夜明け

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-はじめに-

近年、温室効果ガスによる地球温暖化が原因と考えられる災害(注1)が全世界的に発生し、脱炭素社会の実現が急務であることが世界の共通認識になりつつあります
(注1)干ばつ、森林火災、洪水、巨大台風、北極・南極の氷溶解、永久凍土の溶解、海水面上昇、他

2021年11月、英国グラスゴーで開催されたCOP26(注2)においては、侃々諤々の議論が行われ、先進各国は「火力発電所の全廃」や「EV(Electric Vehicle/電気自動車)への切り替え」など脱炭素の取り組みの具体的時期を表明しました
一方、福島原子力事故以降多くの原子力発電所が停止し、その不足分を火力発電所が補っている日本も、火力発電所の削減や、EV化の推進については、困難ではあるものの、叡智を集めて先進国の一員としての責任を果たさねばならない状況になっていると考えられます
(注2)第26回気候変動枠組条約締約国会議(United Nations Climate Change conference);

企業独自の脱炭素化の動きは日本でも加速しつつあります。停滞する「物造り日本」を取り戻す絶好の機会であるばかりでなく、大企業は、ESG(注3)や SDG(注4)を意識して利益の追求だけではなく、地球環境や社会の持続性も企業目標に掲げなければ企業の永続的な発展が望めない時代となってきました
(注3)ESG:Environment Social Governance/環境・社会を考えた企業統治
(注4)SDG:Sustainable Deveropment Goals/持続可能な開発目標

以下は、新聞雑誌の記事やネット情報、定期購読している Aviation Week & Space Technologyの記事を読み、所々に私の勝手な意見を加えて纏めたものです

航空業界への波及

こうした事が背景にあって、国際民間航空機関(ICAO/International Civil Aviation Organization)は2020年以降にCO2排出量を増やさないとする国際目標を導入しました。また、2021年10月4日に開催された年次総会では2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロとする目標を採択しました
一方、現在の商用航空機は殆ど全てと言っていいほど化石燃料に頼って運航を行っています。現在、最も近道と思われる植物由来の代替燃料の開発が行われていますが、燃料コストが数倍になると共に、十分な量を確保することも難しく、航空業界全体で代替燃料の活用の見通しが立っている訳ではありません。因みに、現在の燃費効率の良い長距離ジェット機で東京=ロサンゼルス間を運航した場合、240トンの二酸化炭素が発生すると言われています
<参考:植物由来の航空燃料開発の現状>
①「ユーグレナのバイオ燃料
②「ANA・JAL、国産の持続可能燃料を定期便に
③「エールフランスが_食用油入り5000㎞飛行
④「空の脱炭素へANA・JALが再生燃料争奪

燃費の改善以外には最も脱炭素化が難しいと思われていた航空機業界にも、電動航空機の開発が活況を呈してきました。最近、欧米先進国の大手航空会社もが電動航空機を開発している企業への投資や、大量発注に踏み切るところが出てきました(具体例については後段で詳述
但し、如何に電動航空機が発達したとしても、推進機構がプロペラに頼っていることから、ジェット機の速度に追い付くことは不可能なので、長距離路線については電動航空機にとって代わることは考えられず、ジェット機が消えるわけではありません(植物由来の代替燃料による運航など)

Follow_Up:2022年6月4日の日経記事「低炭素航空燃料、国内で供給網_空港の競争力を左右
Follow_Up:2022年6月_Aviation Week「世界のSAF調達情報

航空機の歴史(参考:詳しくは私のブログ「航空機の発達と規制の歴史」をご覧になって下さい)を振り返ると、1903年にライト兄弟が初めて動力付きの飛行機の初飛行に成功してから、たった7年後には日本においても、徳川好敏・日野熊蔵によって動力機の飛行が行われました。その7年後の第一次世界大戦では航空機が爆撃に使われ、第二次世界大戦前夜までには航空輸送が軍事だけではなく商用の交通手段としても一般化していました。第二次世界大戦最後の段階で登場したジェット機は戦争終了7年後には大型ジェット旅客機(英・コメット)が登場していました。航空の歴史は常に「夢の実現」の為にチャレンジを続けてきたことが分かります

電動航空機は無人のドローン以外は、まだ実用段階になっていませんが、近年のEVの急速な普及に伴う、電動モーター(以下「モーター」と略称)や蓄電池バッテリーと略称)などの要素技術の進歩が急速に進展しており有人の電動航空機の登場・普及は間近に迫っていると思われます

一方、電動航空機の一分野であるドローンについては、「空飛ぶ自動車」という覚え易い名称でメディアにはよく登場する様になりました
ライドシェアやフードデリバリー (Uber Eats)などで有名な米国の新興企業ウーバー・テクノロジーズ( Uber Technologies, Inc./カルフォルニア州)が、同社のサービスの一環として空のライドシェアに乗り出すことを発表し、一気に現実味を帯びるようになったのではないでしょうか。以下の動画には空の交通革命を齎す「夢」が詰まっているような気がします:Ubers elevate vision

バッテリー、モーターの技術革新

一昔前は、電動で航空機を飛ばすなどは、模型飛行機の世界の話でした。しかし、以下の要素技術の進歩には目を瞠るものがあります;
A.バッテリーの進歩
現在、パソコン、スマホ、EV、その他に搭載されているリチウムイオン電池を発明したのは日本人の吉野彰さん(2019年ノーベル化学賞受賞)でした
このバッテリーの充電能力単位重量当たりの充電量)と繰り返し充電・放電に耐える能力が従前の他のバッテリーに比べて格段に優れていることで急速にリチウムイオン電池は普及しました。唯一の欠点としては、何らかの理由(衝撃、振動、他)で熱暴走を起こす可能性がある事でした
パソコンの分野でソニーが初めてリチウムイオン電池をパソコンの電池として採用しましたが、発売後、暫くして発火事故を起こしてしまいました

極限までの軽量化が求められる航空の分野では、長らく充電能力に優れたニッケル・カドミウム電池が非常用電源として装備されていましたが、ボーイング社の最新鋭機である787型機に初めて非常用電源としてリチウムイオン電池が採用されました。しかし、日本において787型機が就航して間もなく(2013年1月)、JAL・ANA共に 787型機の バッテリーの火災事故が発生してしまいました
この火災原因が直ぐに究明できないこともあって、1月16日FAA(米国連邦航空局)は全世界で 787型機の運航停止命令を発動(34年振り)、国土交通省も同様の命令を発動しました。その後、火災発生の可能性のある個所を全て改修し、6月1日になってやっと定期便復帰を果たすことが出来ました(運航停止期間:136日)。詳しい経緯は私のブログ「航空機の発達と規制の歴史」の最後の方をご覧になって下さい

現在でもパソコンやスマホでは火災事故が時折発生していますが、当初に比べれば格段に事故は少なくなっています。また、EVが、一回の充電で走ることが出来る距離を競う中で、次々と新しい技術が開発されつつあります<参考>
EV特許の競争力、②マグネシウム・イオン電池、③リチウム硫黄電池

これからの技術開発競争は、EV化の急速な進展、電動航空機の登場、などの刺激を受けて加速することは間違いないと思われます

B.燃料電池(Fuel Cell)の実用化
燃料電池というのは、水素を燃料として空気中の酸素と化合させて発電するものです充電する代わりに水素(高圧の水素、又は液体水素)を補給することになります。既に日本の自動車業界ではトヨタとホンダが燃料電池車(FCV/Fuel Cell Vehicle)を発売しています;
簡単な動作原理と実物の燃料電池の写真は以下をご覧ください(画像をクリックすれば画面が拡大します)

燃料電池の可能性は、重量(体積)当たりのエネルギー効率が高いことにあります。以下の図表はネット上で見つけたもので数値の正確さについては確認していませんが、バッテリーに比べると燃料電池の重量当たりのエネルギー密度が非常に高いことは間違いないようです。また、消費することで重量が減っていくことなど長距離の電動航空機にはうってつけであると思われますFollow_Up:軽量の液体水素タンクの開発により、化石燃料を凌ぐエネルギー密度を実現できる見通し⇒ 電動航空機の方が航続距離が長くなる
① (米国)2022年5月1日のAviation Weekの記事:Lighter Hydrogen Tanks Promise Longer Range
② (フランス):2022年5月29日のAviation Weekの記事:France Advances Hydrogen Tank Manufactureing

C.モーターの進歩
直流モーターは、私が電気少年であった昔に知っていた知識を遥かに越える技術革新がありました
我々が持っていた知識は、直流モーターについては電車などで使われる直巻モーター(回転子と固定子の巻線が直結されている)と分巻モーター(回転子と固定子の巻線が並列に結合されている)の区別があり、交流モーターについては、産業界の主要な動力として使われる三相交流モーターと、主に家庭電化製品で使われる単相交流モーターがあるという程度でした
しかし、EVなどで使われる現在のモーターは、実は直流の電気を半導体を使ったインバーター(inverter)という回路を通して交流に変換し、三相交流モーターと似たような仕組みで回転させる様になっています;
<参考>  インバーターで直流から交流を作る仕掛け;
インバーターは直流を半導体のスイッチング回路で矩形波のパルスに変え、これをコンデンサー、抵抗、インダクター(inductor/コイル)、などの部品で平滑化することによって任意の周波数の疑似的な正弦波に変えることが出来ます。パルスに変える方法にはPMW(Pulse Width Modulation)変調と、PFM(Pulse Frequency Modulation)変調の二つの方法があります。詳しい説明は電気少年!しか興味が無いと思いますので省略します
この仕組みは、今や多くの電子回路でも使われております。因みに、最近の日本のエアコンは、省エネの為に100ボルトの交流を一度直流に変え、インバーターを使ってモーターの駆動をコントロールしています
また、パソコンや家電製品の電子回路には、多くの構成ユニットの動作電圧の違いに対してメインの供給電圧をその電圧に昇圧・降圧する為に同じ仕組みのインバーターを使っています。私の電子工作にも下の写真の様なインバータを使っています(中国製でたった200円!)
<参考> 直流モーターと三相交流モーターの回転する仕組みの違い;

直流モーターの変遷(原理)

上図右の現在のEVモーターでは、回転子に現在資源獲得競争で話題のネオジウムの合金(極めて強力な磁石となる)を使用し、固定子にはインバーターで直流を三相交流に変換させた電流で回転磁界を作り回転子を回すという原理(三相交流モーターと原理は同じ)で作動しています
回転数は固定子に流す交流の周波数で決まり、トルクはここに流す電流によって決まります。これらのコントロールは何れも半導体を使ったコントローラーで行います

動力としてのモーターとガソリンエンジンやタービンエンジンの最大の違いは、モーターは部品点数が極めて!少ないことと、低温で作動することです。この結果、航空機にモーターを使えば、定期点検や定期交換などの整備の負荷が大幅に減ることと、ベアリングなどの回転部分を除けば壊れる箇所が少ないので、極限の信頼性を要求される航空機の構成部品としてはうってつけであると考えられます

Follow_Up:2022年1月11日、ネット上で以下の情報を入手
DENSO の電動航空機用モータ-開発
Follow_Up:2022年6月「東芝エネルギーシステムズ・最高出力2000㌔㍗の試作機を開発

電動航空機の分類

電動航空機は、幾つかのカテゴリーに分類できると思われます。電動と言うからには、少なくとも推進装置にモーターが使われていることは共通しています。ただ、モーターを駆動するエネルギーによって以下の様に分類できます(前提として炭酸ガスを出さないエネルギーに限ります)
A.モーターを駆動するエネルギー源による分類;
1.バッテリーによってモーターを駆動する電動航空機
*一般に、バッテリーは重量当たり貯められるエネルギー量は化石燃料を燃焼させた場合と比べ格段に少ないので、バッテリーで長距離の飛行機や重い航空機を飛ばすことは現在の技術では難しいと言えます

2.水素を燃料として発電し、その電気を使ってモーターを駆動する電動航空機

*既に自動車の分野ではFCV(Fuel Cell Vehicle;水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を発生させ、この電気でモーターを駆動させる)として販売されています
水素を燃料としてタービン又は内燃機関を駆動し、その動力を使って発電しモーターを駆動させる。この方式はハイブリットの自動車と同様に、発生した電気を一時的にバッテリーに蓄電してモーターを駆動することになります(この技術は未だ開発中)

B.揚力を得る手段による分類;
1.ヘリコプターの様に回転翼のみを使って浮上し、回転翼面を傾け、前方への分力を使って前進する電動航空機(通称 eVTOL/electric Vertical Takeoff & Landing Airplane)
*ヘリコプター同様、滑走路は不要。但しエネルギー消費量は多い

2.離・着陸時に回転翼を使い、巡航時の揚力は普通の航空機と同じ翼を使う航空機
*ヘリコプター同様、滑走路は不要。巡航時に翼を使うのでエネルギー消費量は少なくて済む
2.2.離・着陸時に回転翼を使って短い滑走距離で離着陸し、巡航時の揚力は普通の航空機と同じ翼を使う航空機(通称 eSTOL/electric Short Takeoff & Landing Airplane)
3.推進機構のみをモーターで駆動し、揚力は通常の航空機と同じく翼で得る航空機(通称 eCTOL/electric Conventional Takeoff & Landing Airplane)
離着陸に滑走路が必要となる(空港発着が原則)。エネルギー消費量は少なくて済む

C.無人機か有人機かによる分類
1.無人で地上からの操縦による電動航空機(ドローン)
*無人のドローンについては既に実用化の段階に入っています

2.パイロットが操縦する電動航空機
*現在の航空機同様にパイロットが操縦し、旅客・貨物を輸送する
航空業界が導入を検討している機体は、現在全てパイロット操縦を前提にしています
*将来AIを装備した航法機器と地上からの運航サポートにより無人の自律運航が可能になるかも知れません

無人電動航空機(ドローン)の普及

ドローン(Drone)とは我々の学生時代では空戦訓練時の銃撃やミサイルの標的用の無人機を意味していましたが、最近メディアなどでは無人の eVTOLのことを通常ドローンと言い慣わしている様です(但しモーターではなくガソリンエンジンを動力に使っているものも無人であればドローンと呼んでいます)。ここでもその定義でいきたいと思います
以下の報道を見ると、2015年から現在までの6年間でドローンが完全に実用段階に移行したことが分かります
1.電動ドローンの進歩と利用範囲の拡大;
*16年8月、空撮技研・農薬用ドローン販売
*17年11月、四国電力・設備転換にドローン活用
*18年1月、ドローン測量の主役に
*18年5月、ドローンの自律飛行に保険
*18年7月、ドローン物流が新段階
*18年10月、「空の物流革命」先陣争い
*19年4月、ゼンリン・空の地図と交通量統制構想
*19年10月、NEDO実証実験_1㎢に37機同時飛行

以下のJAL及び三菱重工が関わったの2件は、ドローン自体は電動ではないものの、無人ドローンの遠隔管理に必要な運航管理技術遠隔操作技術のノウハウを持った会社がドローンビジネスに関わり始めた事例です
*20年11月、JAL印の「無人ヘリ」が離島間を飛び回る!
*20年11月、三菱重工・千キロ先のドローン操作実現
以下の2件の事例は、携帯会社が自身が持つ通信網を使って、飛行中の現在地の確認やリアルタイムの映像を見ながらの操作を行うため通信インフラ提供でドローンビジネスに関わり始めた事例です
*21年11月、JR東・KDDI・JAL出来立ての食事ドローンでお届け
*21年11月、携帯会社が狙うドローンビジネス
Follow_Up:2022年2月17日JAL・KDDドローンで医薬品配送_都内で実験
Follow_Up:2022年4月12日ドローン「空の道」管理、覇権争い

2.商用ドローンに関わる規制の歴史;
*2015年9月、ドローン規制法成立
*15年10月、大型無人機を産業利用へ法整備
*15年12月、商用ドローンの環境整備・総務省が規制緩和検討
*16年3月、ドローンで農薬散布の認定制度_農水省
*17年3月、民間のドローン技能講習・公認制度導入_国交省
*19年4月、国交相ドローン向け飛行情報提供開始
*19年8月、ドローン商業ルール整備、登録制、安全基準設定
*20年3月、国交相ドローン免許創設
*国土交通省資料「ドローンの安全飛行の為のガイドライン
Follow_Up:2022年6月、国交省・ドローンの登録義務化開始 、違反なら罰則も

3.技能講習;
*17年12月、産業用ドローン操縦者スクールを開設
サイニチ・ドローンスクール

商用電動航空機の開発状況

私は JALを退社して以降、航空・宇宙関連の雑誌である「Aviation Week & Space Technology」を購読し続けていますが、ここ数年、頻繁に電動航空機の記事が掲載されるようになりました。これは恐らく脱炭素化社会の実現が世界共通の目標となり、未だ化石燃料による航空機が大半である航空業界にとっても喫緊の課題になりつつあることがその背景にあると思われます
現在、電動航空機の用途としては、航続距離、速度、搭載重量、などがジェット機の能力には遠く及ばないことから、以下の様な用途に使うことが目標になっていると思われます;
大都市内の新たな輸送手段UAM/Urban Air Mobility)
*混雑する大都市内の自動車に替わる輸送手段;空のライドシェア(urban aerial ride-shareing)、エアタクシー
*eVTOLを使えば世界のトップ100の空港と都市中心部を結ぶ路線の93%は20分以内で結ぶことが出来、大きな需要があると考えられます
*日本では:JAL「空飛ぶクルマ」で旅客輸送
大都市内にヘリポートを作るのは騒音の問題などで設置が難しいのですが、Vertical Aerospace_VA-X4の騒音はヘリコプターの数百分の一なので、新たなVertiport(eVTOLの離着陸用の施設)の設置には周辺住民の抵抗は少ない可能性があります

地域輸送(regional transportation)
*航空業界ではハブ空港から地方空港への旅客・貨物の輸送には、現在は主に30人~50人乗りのターボプロップ機が使われており、使用機材も更新時期に入っているものが多いと言われています
短距離であるがアクセスが困難な観光地への輸送手段としての利用も需要があると考えられます。米国には各州にこうしたアクセスに時間のかかる観光地が沢山あるとのこと

高速貨物輸送(express logistics)
*サプライチェーン革命
により、在庫を多く持たない事業者が多く、この分野の需要は大きいと考えられています
医療関連の輸送
*臓器移植や輸血用血液の輸送などが考えられます
軍事輸送
沿岸の都市間を結ぶ旅客・貨物輸送

以下は、開発中の電動航空機の設計仕様の主要な部分の紹介ですが、これらは以下の「Aviation Week & Space Technology」の特集記事と日経新聞、雑誌の記事、ネット情報などを集約し、実用性がありそうだと私が判断したものを取り纏めています。尚、引用している動画は YouTubeが多いので、開始前にCMが入るものがありますがお許しいただければ幸いです!;
*Urban Air Mobility_A&W_2019年6月16日(原文は紛失!)
What Do Airlines Want From eVTOLs
_A&W_2021年7月11日
*Joby Hits Range and Noise Targets on Road to Certification_ A&W_2021年8月29日
Fixed Focus_A&W・2021年9月26日
 *AAM Leaders Ramp Up Development Spending on eVTOL Air Taxi_A&W_2021年12月5日

尚、以下の説明で、「耐空証明」、「型式証明」という用語が沢山出てきますが、この制度について詳しく知りたい方は私のブログ「3_耐空証明制度・型式証明制度の概要」をご覧になって下さい。また、以下の説明に頻繁に登場するFAA、EASAという略語は、日本の航空局に相当する行政組織で、夫々米国の規制当局(Federal Aviation Adminitration)、EUの規制当局(European Aviation Safety Agency)を意味します

Follow_UP;以下の記事に最新の動向が記載されていましたので、増補・修正(増補・修正部分は青字で表示しています)しました:「Playing to Win_A&W_2022年1月10日~23日
この記事の中で、現時点での開発状況をランク付けしております。以下のランキングはこの記事からコピーしたものですが、2020年に比べ2021年末までの開発状況が一変していることが分かります。また開発の進展に従って、資金調達の為に相当努力している事が窺えます;

上表タイトルの「Baker’s Dozen」とはパン屋の1ダース(13個)という意味で、英米でよく使われているそうです。その他の資金調達関連の略語は、必要により以下の記事の中で補足説明しています

1.Jovy Aviation
米国カリフォルニアを本社とし、800人を超えるエンジニアと専門家のチームを持っている。2020年、トヨタ社
約3億9400万ドルを出資ウーバーテクノロジーも出資している。飛行テストの動画
<性能>
*2021年7月初旬、垂直離着陸を含むTest Flight実施、1回の充電で154.6マイル(286.32km)平均時速223km/hキロ達成
*エアキャリアとしての許容騒音レベル達成
<機体仕様>
*搭乗人員はパイロットを含め5人
*固定翼
*プロペラ6基;プロペラは全てチルトタイプ(Tilt Type)になっており、プロペラ部分を傾けることにより垂直離着陸と巡航時の推進用の両方を兼ねている
*バッテリーはリチウムイオン電池

<開発体制>
自社開発体制維持
*2021年2月24日、SPAC Reinvent Technology Partners社と正式な企業合併契約を締結し、IPOを行うとに発表。合併後の会社はJoby Aviationの名前が引き継がれ、ニューヨーク証券取引所に上場されました
*このIPOにより12億ドルの資金調達を行った
(参考)SPAC(Special Purpose Acquisition Company/特定目的買収会社)とは;自身では事業を営まず、未公開企業や他社の事業を買収することを目的とした会社
(参考)IPO(Initial Public Offering)とは:企業が資金調達のために発行株式を公開すること
<開発目標>
Part135エアキャリア(チャーターベースの旅客輸送を行う航空会社)として必要な5段階のプロセスは今年7月までに終了することを目指している。型式証明を得るための機体は、2022年の前半に飛行させる予定。尚、型式証明取得用の機体がロールアウトしてから、トラブルが無くなる飛行が出来るまで通常約10ヶ月掛かると言われている
2024年に米国でエアタクシーのサービスを開始する為に、2023年末までに型式証明を取得することを目指している
Part23タイプの型式証明(19席または最大離陸重量19,000ポンド未満の小型航空機としての耐空証明)とその製造免許取得を目指している

<受注機数>
*Joby社は、自身でAOC(Air Operators Certificate/航空会社としての資格)を取得しウェットリース(パイロット付きで機体をリースするビジネス)を行うことを目指していると思われる ⇔ 2026年までに850機をJoby社自身が所有する計画
*2019年12月に米・ウーバー社とサービス提供契約を締結

<特記事項>
*尾翼の桁(V字型をしていて両翼端に推進機構が付いている)、バッテリーの電圧降下、落雷、客室のバードストライクのテストを開始している

*操縦室デザインのパイロットによる評価、Flight Control Computerの悪天候下でのテストは完了
*システムの統合に関わる実験設備は建設中であり、最初の主要な機体構造、複合材のパネルについてFAAの基準適合性検査(Conformity testing)が進行中である
*出資しているトヨタと協力してカルフォルニア州での製造拠点作りを行っている
*動力伝達系のシステムについては、カルフォルニア州サンカルロスの工場で引渡しを始めた
*2台目の自動炭素繊維部品の製造機(Automated fiber placement machine)の導入により、カルフォルニア州のマリーナ工場で当初の製造量を賄えるに十分となった
*現在飛行している2機のプロトタイプの機体では、航続距離150マイル(278km)以上で10,000フライトサイクルのバッテリー(EV用のグレード)寿命を実現している

Follow_Up:2022年2月15日、ANAHD「空飛ぶタクシー」参入 関空から大阪駅15分

2.Beta Alia

Beta Technologies社は、米国バーモント州に本拠を置くスタートアップ企業で。eVTOLに関しては、キーとなるイノベーションである電動推進機構にフォーカスし、残りの部分は出来るだけ従来の固定翼航空機の考え方を踏襲し、FAA(米国連邦航空局)の認可を得るためのハードルを可能な限り低くしている。これは、ティルトタイプを選択しているJovy AviationやArcher Aviationとは別の道を歩んでいます
<性能>
*最大離陸重量は7000ポンド(約3.18トン)
600ポンド(約272kg)の搭載量航続距離250マイル(約463km);1500ポンド(約680kg)の搭載量では航続距離200マイル(約370km)
*巡航速度は時速145マイル(約269km/h)
*リチウムイオンバッテリーの容量330kwh充電時間は約1時間)
*上記の性能は、エネルギー消費の激しい離着陸の時間を、通常の操作では40秒間に制限していることから得られる
<機体仕様>
搭乗人員はパイロットを含み6人、貨物仕様の場合は200立方フィートの貨物の搭載が可能
*垂直離着陸用の4つのプロペラは巡航時には前後方向に揃えられて停止し、空気抵抗を最小化していると
*推進系には、ナセル構造はなし。プロペラは固定ピッチ
翼を使った巡航飛行には胴体後部のプッシュタイプのプロペラが使われる
*滑走スペースさえあれば離陸と着陸、又はそのどちらかをエネルギー消費のはげしい垂直離着陸をしないで離着陸ができる
<開発体制>
*既に5.11億ドルの投資を得て350人を採用して開発を継続しており、他社との合併・提携は不要。投資している企業には、アマゾンClimate Pledge基金の他、Aliaを発注しているUPSUnited Therapeutics 、Blade Air Mobilityなどがある
*Beta社は、モーター、インバーター、バッテリー、フライトコントロール・システム、機体仕様(aircraft configulation)などに関わるベストな会社を選定し、自社でこれらを統合することを行っている
<開発目標>
*最初の耐空証明取得を目指す機体は、2022年に初飛行を行い、2024年の終わりにFAR Part23(コミュータータイプの航空機区分)の耐空証明の取得を目指している
*Beta社は、パイロット二人乗りの実験機を制作し、2020年2月から予備的なテスト開始している;この実験機は2ペア(4台)のティルトするバリアブル・ピッチのローターを装備しており、フライトコントロールのテスト機として使用している。これで、バッテリ・マネージメント、fly-by-wireシステム(コントロール信号の伝達を電気で行うシステム)の評価、離着陸から巡航飛行の間の遷移状態の評価(オスプレーの事故は大半この遷移状態で起きている)などを行っている
<受注機数>
*Aliaは最初の顧客として旅客輸送ではなく、貨物輸送に絞っている
*受注している会社:①United Therapeutics(米国の臓器製造などを行っている企業/60機;②Blade Air Moblity(ヘリコプターを使ったライドシェアの会社/臓器輸送の為にAliaを使用する計画/20機;③UPS/オプションを含め160機予約(内10機は2024年に受領)
<特記事項>
Aliaは、エアタクシーではなく、テスラの急速充電ネットワーク・スタイル(Tesla Supercharger-style)の航空機版のビジネスモデルを目指している
-「冗長性確保」によるフェイルセーフの設計仕様の採用-
垂直離着陸用の4つプロペラは各プロペラが2台のモーターで駆動され、更に各モーターの巻線は二重になっている
推進用のプロペラはモーター2台で駆動され、各モーターは二重巻線となっている
垂直離着陸用の4つのプロペラと巡航飛行用のプロペラは、夫々5つの独立したバッテリーで駆動している
*既にワシントンにあるAliaのシュミレータ(飛行テストで得られた実際のデータが入れられている)で A&W社の熟練パイロットが操作を行った感想は、「この機体が殆どの飛行モードで如何に在来機の操縦と変わらないかということと、在来機との違いはどこのあるかが分かった」二つのタッチスクリーンと合成画像(synthetic vision)のPFD(Primary Flight Display/飛行に必要な情報を集中して表示する装置/現在の大型旅客機には必ず装備されています)は通常の飛行データに加え、バッテリーとモーターに関わる情報が表示できるように変更を行っている
*インフラへの投資;
当面、空港やVirtiport(空港以外のVTOL機の離発着場所)に必要なインフラが整って無いことから、空港における燃料搭載用のトラックに似た「充電トラック」を開発。また、
機体が離着陸できる高いデッキ乗員休養室飛行計画室(planning room)、充電設備(機体と車両)を備えた「airport in a box」を開発し、発注した顧客には配置する計画

3.Volocopter
Volocopter社は、ドイツに本拠を置くベンチャー企業。2011年、航空業界に参入し、空飛ぶ自動運転タクシーの開発を進めている
<性能>
*航続距離:約35km
*最高飛行速度:約70マイル(約130km/h)

<機体仕様>
*搭乗人員はパイロットを含め3名
*18ローターのeVTOL

<開発体制>
2016年、ドイツ当局から2名乗りボロコプターの暫定ライセンスを取得。また、ドイツの自動車大手、ダイムラーからの出資も受けている
*ドイツのメディアによれば、SPACを通じて買収される話はキャンセルとなった。現在、あらゆる種類の投資家にオープンになっている
。従って、同社は、資金繰りには未だ問題を残している
VoloCityのテストフライトに成功すれば、他のライバルに先駆けてエアタクシーサービスを開始することが出来る
従業員400名を確保し、2021年7月、DG Fugzeugbau (ドイツのグライダー製造会社)を買収し、eVTOLに関わるEASAの製造認可(Production Organization Approval)を取得した
<開発目標>
*ドイツの物流会社DB Schenker(出資社でもある)と共同作業を行い、無人の貨物eVTOLであるVoloDrone を計画しており。CertificationはVoloCityに続いて行うことにしている
*2021年に飛行するとされていたVoloCityは、未だグラウンドテストの状況で、Certification取得は2023年にずれ込んでいる
*2021年、より航続距離の長いVoloConnect(2席、翼付き)をローンチさせた。2026年に型式証明を取得する計画

*2020年代半ばには、エアタクシーサービスを以下の国でローンチするアグリーメントを締結:中国、フランス、イタリア、日本、サウジアラビア、韓国

<受注機数>
*自動車メーカーのGeelyとのジョイントベンチャーを作り、150機のオーダーを得ている
JALは100機の導入を行い、大阪万博で運用されることになっている
<特記事項>

*ボロコプター社は、ルフトハンザと共に、VoloIQ booking というアプリケーションとデジタル・バックボーンの開発を行っている
*フライトシミュレーターの会社であるCAEとeVTOLのPilot Training Programの開発を行っている
SkyportsなどのパートナーとVoloPort Landing Infrastructureの開発も行っている
2024パリオリンピックでは、トライアルでエアタクシーのサービスを計画している
シンガポールローマ、及びサウジアラビアのNoem Smart cityでエアタクシーのサービスを計画している
*同社は今回、ドバイ当局と協力し、空飛ぶ自動運転タクシー初のフライトテストを実施。フライトテストは、ドバイの厳しい気候条件の下で、信頼性を確認するのが目的。ドバイの航空関係当局が求める前提条件を満たしたため、テストが許可されている(ドバイでのテストフライトの動画

4.Lilium

Lilium社はドイツのミュンヘンをベースとする会社で、見るからにユニークな姿をした電動航空機を開発しています。既にその姿はウェッブサイトに載っていますので垂直離着陸の様子をご覧になって下さい
<性能>
*航続距離:250km以上
*巡航速度:280km/h
<機体仕様>
搭乗人員はパイロットを含め7
*推進用モーターが装備された主翼・前翼と胴体後方下面のカナード翼(主翼とは別の小さな翼)
*推進用モーターは36ヶあり、離着陸の時はこの推進装置全体が翼の所で
折れ曲がる
*推進システムは独自の「Ducted-Fan Vectored-Thrust」を採用している;
<開発目標>
*以下の様な野心的な生産目標を掲げています、が実現するか?

<開発体制>
*2020年にEASAとの間で、このeVTOLはVTOLに関わる特別条件(Special Condition)でCertificationを取得することに合意している
*2022年、パイロットを乗せた7席のPDR(Preliminary Design Review)を行うとともに、無人の5席の技術実証機(Technology Demonstrator)の飛行テストも継続する
*2021年は750人で開発を行っていたが、2022年には950に増員する計画
*資金流出は続くものの、9月に発表されたSPAC Quell Acqusition社との合併で得た5.84億ドルを得て、2024年末に予定しているLaunchに必要な資金は確保
*Lilium Jetの詳細なデザインは、2022年に始まり2023年に初飛行を目指している
*コックピット・アビオニックス、及び飛行制御システムはHoneywellから提供を受け、胴体と主翼は、東レから複合材料の提供を受けてスペインのAcituri社が製造する
*PDR(Preliminary Design Review)を行った後、Liliumは、他のサブシステムに関しては、機体構造製造に関わる一次プライアー^Supplier(Tier1)と手を組むことになっているが、パンデミック後のサプライチェーンの混乱とインフレが購入価格とリードタイムに与える影響を慎重に見極めている
*Jovyが自動車用のバッテリーを使っているのに対し、LiliumはドイツのCustom Cells社の新開発の高性能なバッテリー(High-energy-dencity Silicon-anode battery)を採用し、Lilium Jetの野心的な性能目標を達成しようとしている。この高性能な蓄電池の最初のデリバリーは2022年を予定しているが、現在モジュールレベルのテストを行っている段階にある
<受注機数>
*AZUL Brazilian Airlines社から220機受注

<特記事項
開発中の高性能な蓄電池の採用に関しては、価格や製造できる量などに疑問が残る
*Lilium社はUAM(Urban Air Mo)よりも地域航空で使われることを狙っている;旅客・貨物の既存の航空会社への販売の他、2025年にドイツの空港及びフロリダ州のインフラの会社であるFerrovial社のサポートを得て地域航空のネットワークを作る。尚、Ferrovial社はスペインと米国でVirtiportを建設することを計画している

5.Archer Aviation

カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くオンライン求人マーケットプレイス「Vettery」も創業したAdcockとGoldsteinの2人が2018年にArcher社を立ち上げました。会社の概要はArcher Aviationのホームページをご覧ください
<性能>

*航続距離:60マイル(約111km)
*巡航速度:150マイル(278km/h)
<機体仕様>
*搭乗人員はパイロットを含め5人
*固定翼
*プロペラ6基;プロペラは全てチルトタイプ(Tilt Type)になっており、プロペラ部分を傾けることにより垂直離着陸と巡航時の推進用の両方を兼ねている
*プロペラを駆動するモーターは12ヶ(各プロペラは2モーター)
*バッテリーはリチウムイオン電池

<開発体制>
*2021年9月7日、FAAの型式証明取得の第一段階であるG-1認証を受領。FAAとの間ではPart23ベースの認証を取得することで合意している
*デモンストレーター機による最初の浮上飛行は2021年12月に行われた
*現在量産機の設計段階にあり2023年には公表予定
*2021年9月、SPAC Atlas Crest Investment社と合併し、8.58億ドルの資金を得た
*現在200人以上の開発要員を擁しており、動力伝達機構(Powertrain)と飛行制御機構(Flight Control)のソフトウェアを開発中。
*サプライチェーンについては、自動車メーカーのStellantis社と共同作業を行っており、製造プラントの選定は2022年に行われる
開発目標>
2024年後半までにこのeVTOLでPart135エアキャリアの認可を取得しエアタクシーを自社で運営する(1回の短時間の充電で、往復25マイル(約46キロ)程度の飛行を想定している)
*Mobile Booking(スマホなどによる予約)のアプリについては2023年に公表する計画
<受注機数>
*United Airlines:200機+オプション100機
<特記事項>
*この機体の用途としては自社で運営するエアタクシーの他に、航空会社にも販売する
*機体が頭上を通過しても殆ど聞こえない様な低騒音(45DBA;DBAとは通常使われる音圧の単位「デシベル」を人間の周波数別の感度で補正した単位)を実現

6.Vertical Aerospace VA-X4

Vertical Aerospace社社は、英西部ブリストルを本拠とし、人工知能(AI)を駆使して電力事業を展開するOVOエナジーの創業者のステファン・フィッツパトリック氏が2016年に設立しました(宣伝用の動画
<性能>
*最高速度:325km/h
*航続距離:160km

<機体仕様>
*搭乗人員:パイロットを含め5人
固定翼
*離陸用に8個のプロペラ;推進用に4個のプロペラ
<開発体制>
*2021年、
SPAC Broadstone Acquisitionに約3億ドル(内2億ドルはDebt Financing/債権金融)で吸収合併されたのち、12月16日に米国証券取引所に上場された。
*競争他社のSPAC取引に比べればやや見劣りするものの、VA-X4エアタクシーの認可取得と、2024年末までに生産を始めるに必要な2.5億ドルは確保できている
*このSPAC取引では、9千4百万ドルの投資家の中に、サプライヤーであるHoneywellロールスロイスマイクロソフトと、顧客となるアメリカン航空と、航空機リース会社であるAvolonが含まれている
*計画に入っている資本コストが実質的に少なくて済んでいるのは、サプライヤーとなる企業が負担する技術開発費が5億ドルに相当するからである
*現在260人以上の開発要員は、バッテリープロペラのシステムに焦点を当てて開発している
*ロールスロイス社は電動推進システムを供給し、Honeywel社はコクピット・アビオニックスとフライトコントロースシステムを供給してくれることになっている
GKN Aerospace社は、ワイヤリングシステムと主翼を担当する。主翼の材料についてはSolvay社からの複合材を使用することになっている。他のサプライヤーについてもいずれ明らかにされる
2022年には製造拠点を選定することになっており、場所はブリテン島か、北アイルランドか、アイルランド(共和国)になると思われ、2026年には年間生産機数を1000とする野心的な目標を掲げている

<開発目標>
*2018年にVA-X1(1人乗り;Ducted Fan)、2019年にVA-X2(2人乗り;マルチコプター)の技術実証機(Demonstrator)を飛行させた
*2024年にFAA(米国連邦航空局)から型式証明を取得する計画
*フライトテスト用のVX4は少なくとも最初は無人機となる予定
*型式証明を取得するための原型機は2023年に飛行を予定している
<受注状況>
*2021年11月時点で1350機
*主な受注先:アメリカン航空(250機+option/100機)、バージンアトランティック航空(50機+option/100機)、JAL(50機+option/50機)、Avolon(アイルランドのリース会社;310機+option/190機)、丸紅(200機予約注文)
*JALは50機まで購入またはリース、更に追加で最大50機導入可能(2021年10月22日日経新聞情報)
Follow_Up:2022年4月9日日経新聞記事_マレーシアのLSS・キャピタルAがAvolon社より100機以上のリース導入で基本合意
<特記事項>
騒音は実測でヘリコプターの数百分の

7.EHang
EHang(イーハン/亿航)は2014年中国広東省広州市で設立され、航空撮影、写真、緊急対応、調査ミッションのために自律型のドローン、eVTOLを開発・製造している企業。自律型二人乗りの原型機EH216はデモンストレーション飛行を行っています(動画
<性能・機体仕様>
EH216;
VT-30;
<開発体制・開発目標>
*2021年になってEHang社はビジネスプランの変更を行い、機体を製造し販売する業務を売却し、機体を運用するビジネスに切り替えた
EHang社はビジネスを変えたために、機体の販売はEH216Fという無人消防機のバージョンであり、顧客は長期契約の政府機関である
EHan社は、2021年に開発した主翼付きのeVTOLで航続距離の長いVT-30の飛行テストを始めた
*2021年12月までに、中国内7ヶ所(広東ー香港ーマカオを含むグレーター・ベイエリア)で、2800回の運用トライアルを実施した。トライアルは、引き続き広州、深圳で続けられており、今後、珠海、珠江デルタエリアでも実施される

二人乗りの自動運転のEH216は、2022年には中国規制当局(CAAC/Civil Aviation Administration of China)のCertificationを取得できると思われる。尚、CAACは既に「旅客ドローン」に関する規則を発行している
*他の国々のおいて既に無人飛行のデモンストレーションを行ったものの、商用飛行の認可を得るには米国や欧州の規制当局の型式証明取得に相当長期間が必要と思われる
*CAACの承認を得てEH216の型式証明取得のトライアルを実施することに併せ、EHang社による最初の商用サービスを実施する100の路線を公表した
*航続距離の長いVT-30 を使って、グレーター・ベイエリアで都市間(最大300km)のエアタクシーサービスを開始する計画

<特記事項>
*EHangは明らかにUAM(Urban Air Mobility)界のリーダーと言えるものの、それは中国内だけのこと。中国以外の国で商用航空機として運用する為にはFAAまたはEASAの型式証明が必要となり、規制の枠組みが異なるために取得は難しい
*仮にEHang社がCAACのCertificationを取得したとしても、EHan社は、Volocopterが成都に設立した中国の自動車メーカーGeelyの投資会社との合弁会社と競争しなければならない。また、Liliumも投資会社Tencentの助けを借りて中国に進出する計画を持っている

8.Eve
米国に本社のあるEve社は、2020年10月に航空機製造会社であるエンブラエル社からAAM(Advanced Air Mobility)開発部門が独立(spinoff)した会社
(参考)エンブラエル社は1969年創業の航空機製造の会社で、JALもエンブラエル社製の小型ジェット機E170型機、E190型機を運航しています(Eve社のホームページ
<性能> ネット情報より
*最大離陸重量 :2200 ポンド(約1トン)
*運用コスト:50%減(対ヘリコプター)
*騒音:80%減(対ヘリコプター)
<機体仕様> ネット上の画像より
*搭乗人員:パイロットが含め5人
*固定翼
*垂直離着陸用プロペラ4基、推進用プロペラ2基
<開発体制・開発目標・>
2021年12月21日、Eve社は、2022年にSPAC Zanite Acqisition社と合併を行った。この合併によって調達資金は5.12億ドとなったが、ここにはRepublic AirwaysSkyWest AirlinesAzorra(航空機リース会社)、Falco regional Aircraft(航空機リース会社)、BAE Systems、ロールスロイス、などからの3.05億ドルが含まれている
*この取引によりEve社は24億ドルの企業価値を得、取引の後には5.12億ドルのキャッシュを手に入れることになった。これによりeVTOLのエアタクシー事業を2026年までに開始する計画に十分な資金を調達できたことになる
(参考) Zanite社はKenneth C. Ricci氏に率いられており、彼は、小型機のチャーター会社であるDirectional Aviation社を率いている。
*合併後もエンブラエル社はEve社の株式の82%を保有しており、ブラジルの技術規制当局(ANAC)との間の型式証明取得に関わる強力な関係、製造やコスト面でのメリットが期待できる
(参考)Eve社はブラジルの規制当局であるANACに自由にアクセスできる。この結果、FAAとEASAの規制当局間の相互承認の恩恵が受けられることになる

*機体の生産は市場の大きい地域には組立キットにして提供し、現地生産でオペレーターのコストを低減することを計画している
*Eve社のビジネスプランは以下の4本の柱で構成されている;
機体の製造及び販売(2026年に初号機引き渡しを始める)
他社のeVTOLを含めてのサービス及びサポートの実施
③ UAM(Urban Air Mobility)
に関わるマネージメントシステムの提供
Eve社は自身で機体を運用しないが
、eVTOLを使ったオペレーターの運航管理、リスク管理に関わるサポートを行う
BAE Systemsロールスロイスに加え、Eve社がオーストリアの機体構造の会社であるFACCとの協力関係を築いている。但し、FACCとはサプライヤーセレクションの段階である

<受注機数>
*Eve社は、既に17の顧客から1735機の予約注文(LOI/Letter of Intent)を受けている。この発注数はAAM
市場で最大。顧客は、エアライン、ヘリコプター運航会社、航空機リース会社、ライドシェアの会社(アジア、ブラジル、フランス、英国、米国)に亘っている
Halo Aviation(ブラジルのヘリコプター運用会社、ニューヨークとロンドンに拠点を持っている) 200機、Helisul Aviation(ブラジルの会社で、ラテンアメリカで最大のヘリコプターオペレーター) 50機
*2021年12月6日、オーストラリアのSydney Seaplanes 50機

9.City Airbus

*2021年9月、Airbus社は関連会社であるCityAirbus社のeVTOL「CityAirbus NextGen(上の写真)」を発表した。この機体は主翼付きのマルチローターで、都市内で運航することに焦点をあてて開発された
<性能>
*航続距離:80km
*巡航速度:120km / h
*騒音レベル:上空通過時/65DBA未満、着陸時/70DBA未満
<機体仕様>
*パイロットを含め5人乗り
*固定翼、V字型の尾翼
*8基の電動ローター(Tiltタイプではない)
<開発体制>
*2019年からShrauded-roterの原型機で地上のテストと飛行テスト(合計1,000km)を行っていた
*2021年からCityAirbus NextGenの詳細設計フェーズに入り、プロトタイプの最初の飛行は2023年に計画(宣伝用の動画

<開発目標>
初飛行は2023を予定しており、2025年に発行されるVTOLに関わるヨーロッパの特別規定(Special Condition)に準拠して型式証明を取得する計画になっている
*この機体の性能目標(航続距離、巡航速度など)は、他社の翼のあるeVTOLより下回っているものの、簡素化された設計により、UAMミッションの95%に十分な性能が提供されると考えている

10.Wisk  Aero
2019年米グーグル共同創業者のラリー・ペイジ氏が出資する米キティホークとボーイングが2019年に共同で設立
wisk社のホームページ
Follow_Up_2022年2月13日(日本で「空飛ぶタクシー」 ボーイングなど出資の新興
<性能・機体仕様>
*自律飛行、3から4人乗り
*航続距離:100kmプラス
<開発目標>
*大都市のエアタクシーとしての利用を目指す。目標とする料金は、1km当り1.25USD(←ライドシェアのウーバーより安い!)
*事業開始から5年後に2,000機を投入し、年間約4,000万人の利用を目指す
<開発体制>
ボーイング社のエンジニア訳100人も開発に参加ボーイングが経験を持つ自動運航やFAAの認証取得に関してアドバンテッジがある

11.Hundai
韓国の自動車メーカーであるHyundaiは、電動航空機のファミリーを開発する為に2021年11月に新会社のSupernal社を設立し、株主(となっている会社?)と共に、既存のトランジット旅客の一貫輸送(intermodal)ネットワークを構築する為のAAMの開発を行うことになった
<開発目標>
*米国を本拠とする「Supernal社」はそのeVTOLエアタクシーを2024年に型式証明を取得し、2028年に商用運航を始めることとしている

12.OverairOverair社のホームぺージ
<性能>
*航続距離:160km以上
*巡航速度:320km / h
*騒音レベル:30DBA以下
<開発目標>

13.Honda

本田技術研究所 新モビリティドメイン統括フェロー 川辺俊氏【インタビュー】

*目標:都市間の輸送を担うことから航続距離400kmを狙う。
川辺氏は、エネルギー供給源にタービンを想定しているが、脱炭素を実現するには水素を燃料とする必要があります。しかし、現在の技術ではLPGなどの燃料に比べると水素の燃焼速度が速いので、技術のハードルはかなり高いと思われます。ただ、三菱重工グループが発電用ではありますが、水素ガスタービン開発を行うようなので、将来的には可能性は十分あると思われます

Follow_Up:2022年3月4日、ヤマハとトヨタが「水素V8エンジン」を本気でつくった!という記事が出ていました()

*A&Wの記事でランクに入っていなかった電動航空機
〇Skai米国マサチューセッツ州のAlakai Technologiesが開発。NASAとパートナーシップを結んでSkaiを開発
性能
*最大離陸重量 :2267kg
*搭載可能重量: 454kg
航続距離 :300マイル
*巡航速度:時速 100マイル

機体仕様
*パイロットを含め5人
*6モーター駆動、燃料電池3台、
航法システムは3重装備
開発目標2020年末にFAAの認証(FAR Part21.17b)を目指していたが、未だ取得していない模様
特記事項
*リチウムイオン電池のエネルギー密度は
0.6MJ/kgに対し燃料電池のエネルギー密度は147MJ/kg(リチウムイオン電池の245倍
(注)MJ(メガジュール):エネルギーの単位
Alakai社はこの機体を製造するだけでなく、エアタクシーの事業も運営する計画
*席当たりのコストはアバスのヘリコプターAS350の1/8になると言っている

〇Advanced Air Mobility

Advancesd Air Mobilityに関しては、沢山の用途や機体の仕様が提案されているが、どのアイデアも成功するか否かは分からない状況にある

〇Autoflight

中国・上海ベースのAutoflight社は、2021年に1億ドルを調達し、4人乗りのeVTOLであるV1500Mの開発を開始した。この会社は、10月にプロトタイプを飛行させ、2024年に型式証明を取得する計画を立てている

〇HT Aero
HT Aero社は、中国のEVメーカーであるXPenが所有し、5億ドルを投じて2024年にeVTOLを市場に投入する計画。
この機体は商用エアタクシーではなく、2ローターの「空飛ぶスーパーカー」としての市販を目指している

Karem Aircraft韓国の防衛産業であOverair社は、Hunwha System社のバックアップを得てKarem Aircraft社を設立し、2023年早期にデモンストレーターを飛行させ、2026年にはButterfly quad-tiltrotorの機体のCertificationを取得することを目指している

〇日本の若き起業家による電動航空機開発へのチャレンジ
*スカイドライブ動画

*テトラ・アビエーション会社紹介のURL

その他のユニークな電動航空機

〇海面上を低空で飛行し地面効果による揚力増加で経済性を高めることを狙った電動航空機

長い海岸線に点在する多くの都市を持っている国では有用であると考えられる。但し、海上交通や沿岸漁業がが盛んな国は船舶との衝突リスクが無視できないと思われる

〇通常の航空機のエンジンのみを電動とした実験機(ロールス・ロイス製)

英国のロールス・ロイス社が、電動航空機による飛行速度記録の樹立を目的として開発されました。英国主催のCOP26開催前に初飛行に成功しています。航空機名は「Spirit of Innovation」
因みに、プロペラ機での最速速度記録は第二次大戦中ドイツで開発された戦闘機メッサーシュミット(ME109)です。時速755.13km/hを記録しています

〇超電導モーター推進の未来の航空機

超電導でモーターを使えば極めて大きなトルクを発生させることは可能ですが、超電導用の冷却装置を装備する必要があると考えられ、また燃料として液体水素を使うこととなれば燃料タンクの設計も中々ハードルが高いと思われる

おわりに

電動航空機の開発状況については、現役を離れて長い私にとっては情報収集に限界があり、開発をしている各社の現在の開発状況の記述が不揃いになってしまい残念でなりません。今後、新しい情報を得次第増補、修正をしたいと思っています

電動航空機が普及するには、運賃に直結する席当たり運航コスト(Seat mile cost/詳しくは私のブログ「エアラインというビジネス」をご覧ください)をできるだけ下げることが必要になります。ただ、既に大手航空会社を含む運航会社が大量機数の購入予約を始めていることは、ある程度の見通しが立っていることと思われます。しかし、これまで安定電源のベースになっていた火力発電と原子力発電の動向が電動航空機の燃料となる電気料金に大きく影響するのは間違いなく、購入予約を行った各社の一番の心配事ではないかと想像しています。
また燃料電池や水素を使ったタービンや内燃機関による電動航空機も、水素の値段や供給体制も未だ確たる未来の姿が定まっていないので、購入を躊躇する運航会社も多いと思われます

今後、開発の進んでいる会社が直面する大きな壁は、開発の最後のステージで取得しなければならない機体の型式証明の取得です。航空機の発展につれ、事故を起こさない為の型式証明の検査がより厳しくなる傾向にあり、この検査を通らない限り乗客を乗せての運航は出来ません。日本期待の三菱航空機「スペースジェット」もこの壁に阻まれて長期間開発が頓挫してしまいました

日本での電動航空機の導入には、多くの航空機とヘリコプター、無人ドローンが飛び交う空の交通ルールの整備が不可欠です。これから規制当局(JCAB)がルール設定をすることになりますが、過密度の高い日本の大都市ではライドシェアやエアタクシーの運航を可能にするルール設定はかなり難しいと想像しています
また、日本独自の電動航空機の開発はもう少し先になると思われますが、日本は電動航空機に関わる要素技術では最先端にあることは間違いないと思います。既に述べたバッテリーモーターなどの高い技術水準の他に、インバーターの心臓部に使われているSiC(シリコンカーバイト)製のパワー半導体機体の軽量化に必須の炭素繊維は日本のお家芸であり、日本が全世界の電動航空機普及の恩恵を受けるのは疑いの無いことだと思います

Follow_Up:2022年1月2日・日経新聞記事(脱炭素、本命担う先端技術は 薄型太陽電池や電動航空機

以上