2018年10月29日午前6時20分、ジャカルタ郊外のスカルノ・ハッタ空港を離陸したB737MAX(2018年8月受領)は、離陸後約10分で消息を絶ちジャカルタ北部の海上に墜落、乗員・乗客189名全員が死亡しました。墜落付近の海域で、Flight Data Recorder(パイロットによる航空機の操作や機体の位置、気圧高度、速度、など機体の運動状態、その他多くのデータを記録しています) と Cockpit Voice Recorder(操縦室内の会話を記録しています)が回収されています。インドネシア航空当局から、「①Flight Data Recorder からの情報で機体のAOA(迎え角:以下 AOAと表記します;Angle of Attack)センサーのデータが左右で20度食い違っていたこと、②副操縦士から管制官に飛行高度を確認するように要請があり、飛行制御に問題があるとの報告があったこと」が発表されています
2.エチオピア航空302便墜落事故;
2019年3月10日午前8時38分、アジスアベバのボレ国際空港を離陸したB737MAX(2018年11月受領)は約6分後に墜落し、乗員・乗客157名全員が死亡しました。墜落機のパイロットは、墜落数分前に管制官に対して運航上のトラブルを報告し、空港に引き返す許可を求めていました。墜落現場付近で、Flight Data Recorder と Cockpit Voice Recorder が回収されており、エチオピア航空当局からの依頼でフランスが解析を実施しています
事故機の飛行記録から事故原因を推定する
上表は、ライオンエアの事故については、回収されたFlight Data Recorder から得られたデータを使用していますが、右のエチオピア航空の事故については、ADS-B(下記”参考1”参照)というシステムから得られるデータを使用しています。尚、上表で比較を行う場合、縦軸のスケールが違うことに注意してください
上表で明らかなように、墜落前の両機の飛行状況は非常に似通っています。また離陸直後の速度が低い状況下で短周期で上昇・沈下を繰り返しており、極めて不安定な飛行状態であったことが分かります
1.Flight Data Recorder、Voice Recorder の解析を担当しているエチオピア航空当局(ボーイング社、FAA/連邦航空局、NTSB/連邦事故調査委員会、EUの航空当局、フランスの航空当局も協力して事故調査を行っています)は、事故機のパイロットはボーイング社のマニュアル通りの操作を行っていたと述べています(⇔この件は、ボーイング社による事故の賠償金額に大きく影響するはず)
1944年11月、シカゴで第二次大戦の戦勝国を中心として、52ヶ国が参加して開催された国際民間航空会議(Convention on International Civil Aviation)で合意に至った多国間の民間航空輸送の基本的な取り決めを「シカゴ条約」と呼んでいます。正式名称は「国際民間航空条約」といいます
条約の狙い;
① 航空機の管理システムを確立し、運航の安全確保、航空機の技術的な問題に関する締約国家間の協力を図ること
② 航空運送に関わる以下の2種類の協定の制定を締約国に促すこと
*国際航空運送協定(路線、輸送力に関する協定の締結)
*国際航空業務通過協定(上空通過と技術着陸のみを行う場合の協定 ⇒ この協定を選択する場合は別途二国間協定が必要
Chapter-2(条約締約国の領空における飛行);
① 条約締約国同士では定期便以外の領空通過、技術着陸を事前の許可無く行うことができます
② 定期便については、「国際航空運送協定」、あるいは「2国間協定」がない限り領空通過、着陸を行うことができません
*国際航空業務通過協定:第1及び第2の自由についての取り決め
*国際航空運送協定:第1~第5の自由についての取り決め
③ 各条約締約国は、他の締約国による自国内地点間の運航、運送(カボタージュ/Cabotage ⇔ 国内運航の権利)を行うことを拒否することができます。但し、全ての締約国に対し等しい例外許可条件を設ければ許可することが可能
④ 使用する空港を指定することができます
⑤ 貨物・旅客の出入国管理・通関・権益に関する法規は当該国のものを遵守しなければなりません
⑥ 航空に適用される法規も、航空機の国籍の如何に関わらず当該国のものを遵守しなければなりません
⑦ 料金については自国機と差別することはできません
Chapter-3(航空機の国籍);
① 航空機は登録国の法規に従って登録を受けた国の国籍をもっています
② 締約国全てに対して、航空機の登録情報の開示、及び航空機に登録国の表示を義務付けています
<参考> 航空機登録番号の割当て
Chapter-4(航空輸送を促進する手段);
① 締約国は、航空機で使用する燃料、潤滑油、予備部品、貯蔵品、装備品については免税措置を行う義務があります
② 締約国は、航空機の国籍に係らず、遭難した航空機の救援措置を行う義務があります。また、遭難したと思われる航空機の捜索活動に協力する義務があります
③ 締約国は、重大事故(死傷者を伴うもの、航空機、施設に欠陥を示唆するものがあるもの)が発生した場合、ICAOが勧告する方式(ICAO Annex 13:Accident and Incident Investigation)に従って事故の調査を行う義務があります
尚、重大事故が発生した場合、航空機の登録国にも調査に立ち会う権利を付与されると共に、随時調査内容の報告を受ける権利があります
④ 締約国は、ICAOの勧告に従って、国内に空港・無線施設・気象施設・他、の航空施設を作る義務があります
⑤ 締約国は、通信手段・符号・信号・証明、その他運航上の実施方式や規則に関わるICAOの標準様式を採用する義務があります
⑥ 締約国は、航空地図、チャート(例:Aeronautical Charts_USA;ICAO EN-ROUTE CHART_日本)の刊行に際し、国際的な取り決めに協力する義務があります
Chapter-5(航空機が備えるべき要件);
締約国は、航空機を運航する際、以下の書類を常に搭載している義務があります;
① 航空機の登録証明書、② 航空機の耐空証明書、③ 各乗務員のライセンス、④ 航空日誌(ログブック)、⑤ 航空機局免許状
② 搭乗している旅客の氏名、乗機地、目的地を記載したもの
③ 搭載している貨物の積荷目録及び細目申告書(軍需品、軍用機材は搭載してはなりません) Chapter-6(国際標準)
① 航空運送を容易にする為に統一が有用と考えられる事項は最大限の協力を図ること(例:航空機、航空従事者、航空路、等)
② 耐空証明については国際標準に一致しない場合は、その差異の詳細が裏書されること
③ 航空従事者についても国際標準に一致しない場合は、その差異の詳細が裏書されること Chapter-7 ~22 省略
国際民間航空条約・付属書(ICAO ANNEX) の構成
以下は、ICAO理事会で採択された基準や推奨手順のタイトルです。それぞれのタイトルの意味に係る詳しい説明は「ICAO ANNEX_各タイトルの説明」(英語)をご覧ください。尚、それぞれのタイトル毎の内容は相当量あり、ICAOのサイトで出版されています(下記①の例:ICAO ANNEX1 Personal Licensing );
① Personnel Licensing(航空従事者技能証明)
② Rules of the Air(運航上の規則)
③ Meteorological Service for International Air Navigation(航空気象)
④ Aeronautical Chart(航空地図、チャート)
⑤ Units of Measurement to be used in Air and Ground Operation(航空機の運航に必要となる情報の単位)
⑥ Operation of Aircraft(航空機の運航:商業輸送、ジェネラルエイヴィエイション、ヘリコプター)
⑦ Aircraft Nationality and Registration Marks(航空機の国籍及び登録記号)
⑧ Airworthiness of Aircraft(航空機の耐空性)
⑨ Facilitation(国際空港に必要とされる施設、機能)
⑩ Aeronautical Telecommunications(航空通信)
⑪ Air Traffic Service(航空管制)
⑫ Search and Rescue(行方不明機の捜索・救難業務)
⑬ Aircraft Accident and Incident Investigation(航空機事故調査)
⑭ Aerodromes(飛行場)
⑮ Aeronautical Information Services(航空情報業務)
⑯ Environmental Protection(環境保護)
⑰ Security-Safeguarding International Civil Aviation Against Acts of Unlawful Interference(セキュリティー対策)
⑲ Safety Management(安全管理)
バミューダ協定;
第二次世界大戦終了後の1946年、戦勝国であるものの戦災で経済が破綻状態となってしまったイギリスと、戦勝国で唯一実質的に戦災が無く、経済が絶好調であった米国との間で、シカゴ条約の下で最初の航空交渉が行われ、両国の間で二国間航空協定が締結されました。交渉が大西洋上のイギリス領バミューダで行われた為、通称「バミューダ協定」呼ばれています
この協定は、以下の基本的な権利関係をベースとしているため、以後の二国間航空協定の見本となりました;
① 互恵平等の原則
② 運航路線、便数の相互指定
③ 運航する航空企業の特定(指定航空企業)
協定の中で取り決めが行われる主な内容;
① 参入路線、便数:経済力や国土の大小、人口の多寡に関わりなく均衡が図られることが普通です
② 運賃:両国の認可が必要な場合が多い(基本的に発地国建てであるため、為替の変動により内外価格差ができます)。また、IATAの協定運賃(詳しくは「エアラインの営業とは」をご覧ください)を採用する場合もあります
③ 路線運営を行う航空会社:両国で同数の航空会社を指定する(“指定航空企業”)ことが多い
* 航空自由化(オープンスカイ)とは、上記の参入路線・便数、運賃、路線運営を行う航空会社、などの制限を撤廃することです
その後、2011年12月1日に、翌年3月末日からの夏季スケジュール以降、以下の内容で合意し、大幅な自由化が図られました;
1.日本側企業に係る運航の枠組み;
① シベリア上空通過便に係る制約の大幅緩和(通過便数の大幅拡大など)
② コードシェアの大幅拡大(あらゆる種類のコードシェアを可能とする;コードシェア便数の上限撤廃)
③ 日本・ロシア間の中間地点の設定(ロシア内の経由地)
2.ロシア側企業に係る運航の枠組み;
① 成田路線のロシア側輸送力の拡大
② 日本側の①~③をロシア側にも設定
【合意の概要】
1.日中間の段階的なオープンスカイの実現
① 北京及び上海、成田及び羽田を除く、日中間輸送のオープンスカイ(航空自由化)の実現(合意時に直ちに実施)。
② 上記4空港に係る航空自由化については引き続き検討。
③ 北京、上海、成田関連路線の増便に適切に対応できるよう枠組みを拡大(合意後直ちに実施)する。
2.羽田路線の増便
(1)羽田空港の昼間時間帯
① 2013年3月末から下記を実施
・羽田=上海(浦東空港/上海中心部に近い空港):日中双方2便/日ずつ。但し、将来的に上海(虹橋空港)の国際枠が増加する場合には、上海(浦東空港)から上海(虹橋空港)への振替が可能
・羽田=広州:日中双方2便/日ずつ
② 国際線の発着枠が3万回から6万回に増加する段階から下記を実施
・羽田=北京:日中双方2便/日ずつ
① 白村江の戦い(663年)
660年、唐・新羅の連合軍との戦いによって百済は滅亡しましたが、百済の遺臣鬼室副信(きひつふくしん)は百済再興を目ざして挙兵するとともに使者を日本に派遣して救援を求めました
大和朝廷は直ちにそれに応じ、661年斉明天皇みずから西征し筑紫に到着しました。しかし、同年7月天皇が崩御したため渡海は延期されました。その後、斉明天皇の後を引き継いだ中大兄皇子(大化の改新の主役、後の天智天皇)は、翌年正月、阿曇比邏夫連(あずみひらぶむらに)らを船師(船頭)170艘を使って渡海させ、鬼室副信らを救援しました。
さらに663年には、2万7千人の増援軍を派遣しました。これに対して新羅は唐に増援軍を求めた結果、唐から7千人が派遣されました
③ 倭寇の跋扈(13~16世紀)
倭寇は、朝鮮、中国の海岸で活動した海賊で、主として九州沿岸の日本人であったといわれています。倭寇の活動期は、13~14世紀の前期と、15世紀後半から16世紀の後期に分けられます。倭寇は海賊行為だけではなく、明の海禁政策(海上貿易の禁止)の中で貿易の利益をあげようという、中国商人と日本商人の私貿易、密貿易の側面もありました。前期と後期の間の期間は足利幕府と明との間で勘合貿易(両政府の交易許可証を使った正式な貿易)が行われた為、倭寇の活動は抑止されていました
1965年の日韓基本条約・經濟協力協定締結後も、歴代首相、天皇・皇太子は以下の様に韓国への「お詫び」を繰り返しています(中国、その他の東南アジア諸国への“お詫び”を除く);
① 1984年9月、全斗煥大統領が国賓として初訪日した際の歓迎の宮中晩餐会に於ける昭和天皇の発言 「、、今世紀の一時期において、両国の間に不幸な過去が存したことは誠に遺憾であり、再び繰り返されてはならないと思います」
② 1984年9月、全斗煥大統領歓迎の首相主催の晩餐会における曽根康弘首相の発言「、、貴国および貴国民に多大な困難をもたらした、、、深い遺憾の念を覚える、、、」
③ 1990年5月、盧泰愚大統領が国賓として初訪日した際の歓迎の宮中晩餐会で、平成天皇は、①の昭和天皇の言葉を引用しつつ「我が国によってもたらされたこの不幸な時期に、貴国の人々が味わわれた苦しみを思い、私は痛惜の念を禁じえません」と発言しています
④ 1990年5月、盧泰愚大統領歓迎の首相主催の晩餐会で、海部俊樹首相の発言「私は、大統領閣下をお迎えしたこの機会に、過去の一時期,朝鮮半島の方々が我が国の行為により耐え難い苦しみと悲しみを体験されたことについて謙虚に反省し、率直にお詫びの気持を申し述べたいと存じます」
大韓民国憲法; 第6条 ① この憲法に基づいて締結、公布された条約及び一般的に承認された国際法規は、国内法と同等の効力を有する。
② 外国人は、国際法及び条約が定めるところにより、その地位が保障される 第73条大統領は、条約を締結し、批准し、外交使節を信任し、接受し、又は派遣し、宣戦布告及び講和を行う
<法規制上の位置付け> エアラインビジネスは主として航空法(詳しくは“航空法抜粋”参照)の適用を受け、航空運送事業として、以下が義務付けられています;
① 輸送の安全確保の責任
② 運賃、及び料金の設定と国土交通大臣への届け出(認可ではない!)
③ お客様とエアラインの権利・義務関係に係る運送約款(例:ジャル国内線運送約款;ジャル国際線運送約款)を定め、国土交通大臣の認可を受けること
④ 国土交通大臣への事業計画の届け出と実行の責任
1.DC8/B707/B727の時代(1960年代まで)
① この頃、航空券の販売は航空会社自らが実施していました。従って、お客様の利便性を確保するため、日本国内や海外の主要都市、主要ホテルには大きなコストをかけてエアラインのチケッティング・カウンターを設置していました
② クラス別の正規運賃が主流であったため、 実収単価は非常に高く、搭乗率(Load Factor)は多少低くても採算がとれる環境にありました
③ 国際線の運賃は、多くの主要な航空会社が加盟する国際民間航空連盟(IATA“International Air-Transport Association”)の協定運賃であり、航空会社間の価格競争はそれほど厳しいものではありませんでした
④ この時代、ビジネスのお客様が主流であって、観光は限られた人の贅沢なものとされていました
4.厳しいリストラの時代(1990~2,000年代)
1990年代、日本経済はバブルが崩壊し未曾有の危機に直面しました。航空需要も低迷し、航空ビジネスは以下の様な対応策で再構築を行うことを迫られることとなりました;
① 航空機の “ダウンサイジング/Down Sizing”;
B747、MD11サイズの航空機を運航している路線を、より小さなサイズの航空機(B767/200~250人)で運航することを意味します
この時期に経営企画室にいた私は、既に大量に購入契約を結んでいたB747-400をより小さい新機種の777に契約を切り替えることに苦労していたことを思い出します
② 人件費コストを削減する為に、外人パイロットの導入、有期雇用CA(客室乗務員)の採用を行う
③ お客様の“囲い込み”を狙ったFFP(Frequent Flyer Program/マイレージ・プログラムとも言います)の導入を行う(⇒ご利用の多いお客様に実質的な値引きを行うことになるので、実収単価の低下を齎すことになります)
3.運賃戦略の実際
価格弾力性という指標は、あくまでマーケットの状況を価格を変数として定性的に説明するものでしかありません
実際の各種運賃(次項参照)の設定や、それらの運賃種別ごとの予約コントロールは; ① 路線毎の需要状況:ゴールデンウィーク、夏休み期間、年末年始などの繁忙期、閑散期、各種のイベント、キャンペーンなどの実施計画、などで大きく変動します
② 路線ごとの供給計画:競合他社の供給計画(想定)と自社の供給計画(臨時便を含む)のバランスにより需給状況は大きく変動します
③ 過去の路線運営に係る経験(暗黙知)
1.エアラインが提供する国内線運賃; ① クラス別普通運賃;
有効期間が長く、予約の変更やキャンセルの自由度が高いという特徴があります。また、緊急に利用エアラインの変更をしたい場合でも、追加的な費用なしに空港での簡単な手続き(“Endorsement”/裏書)で可能なので、ビジネスのお客様などには便利な運賃です
② 割引運賃:
割引率の違いにより、売り出し開始時期、有効期間、予約キャンセルの自由度により大きな差を設けています。エアラインは単価の高い普通運賃に、こうした各種の割引運賃を組み合わせてイールドマネージメントを行っています
<参考>現在の国内線各社の運賃は、以下のように驚くほど多様になっています
*JAL国内線運賃一覧
*ANA国内線運賃一覧
*Skymark国内線運賃一覧
*Airdo国内線割引運賃
② クラス別普通運賃:アライアンス内協定運賃
アライアンス内のエアライン間で協議の上設定される(勿論、二国間の条約、協定で認められることが前提)もので、航空会社独自の多種多様な運賃(キャリア運賃)の設定が可能になっています。ただこの運賃では、アライアンス内のエアライン同士以外の連帯運送は簡単にはできません
③ クラス別普通運賃:二国間協定運賃
二国間の条約、航空協定等で指定された航空会社間が対象となる運賃です。この指定されている航空会社間で協議の上決定される運賃です。勿論、IATA協定運賃の採用も可能となっています
4.旅行会社が提供する運賃;
航空会社は、旅行会社にホテル、等の地上手配を組み合わせることを前提とした包括旅行運賃を設定(航空会社による国土交通大臣への届け出が必要)し、一定席数まとめて提供しています
かつては団体での旅行を前提とした「団体包括旅行運賃」として旅行会社に売られていましたが、個人旅行が主流となってきたことから、1994年に個人包括旅行割引運賃(Individual Inclusive Tour Fare/IIT/)の導入が行われ、団体包括旅行運賃は廃止されました <狙い>
航空会社は安い運賃の席を卸すかわりに、お客様を集めるのが難しい閑散期にまとまった席数分の収入が保障されます
一方、閑散期に多くの席を販売してくれる旅行会社には、以下の様なインセンティブ(販売奨励施策)を付加することも行っています;
① 販売席数に応じたキックバック(⇔実収単価が多少下がります)
② 繁忙期の席数割り当て増(⇔繁忙期におけるエアラインの実収入が多少下がります)
このインセンティブによって、旅行会社は席を安い料金で仕入れ、新たな需要を生み出す安い旅行商品を作ることが可能になります。ただこの仕組みは、エアラインにとっては、ある意味航空券の“先物取引”の性格を持っており、実収単価の高い普通運賃のお客様を取りこぼすリスクも孕んでいます。従って、前項で説明した“イールド・マネージメント”を精度高く行うことがが不可欠となります
現在、多くのフラッグ・キャリア(National Flag Carrier/国を代表するエアライン)や大手のエアラインが参加しているアライアンスは、国際線エアライン・ビジネスのやり方を大きく変えたといってもいいと思います。一方、LCCは低価格によってお客様を獲得する戦略なので、通常アライアンスには加盟しません 1.アライアンスの目的
エアライン同士が、以下の様な高品質で共通なサービスの提供を行うことにより、コストを下げ、実収単価の高いビジネス旅客の囲い込みを行う
① FFP(Frequent Flyer Program/マイレージ・プログラム)におけるマイルの共通化(FFP協定)
② 空港での高品質のサービスの提供とコストダウン:空港のVIPラウンジの共有、 空港でのチェックイン・カウンターの相互利用
③ コードシェア便の相互提供による路線網の拡充と自社路線集約によるコストダウン
④ 運賃協定による価格競争力の強化(運賃のプール制、など)
3.アライアンスの枠を越えたエアライン同士の提携
最近、アライアンスの枠を肥えた提携が始まっています
① ワンワールドに加盟しているJALと、スカイチームに加盟している中国東方航空が提携しました。詳しくは以下の日経新聞の記事をご覧ください:180727_中国東方航空と共同事業
② ワンワールドに加盟しているJALと、スカイチームに加盟しているガルーダ・インドネシア航空が提携しました。詳しくは以下の日経新聞の記事をご覧ください:180906_日航とガルーダ、共同運航など包括提携を発表
③ スターアライアンスに加盟しているANAとスカイチームに加盟しているアリタリア航空が提携しました。詳しくは以下の日経新聞の記事をご覧ください:180322_ANA・アリタリアと共同運航
<大手エアライン、生き残りの足跡>
米国は、上記のように可能な限り自由競争を原則とする政策をとってきたため、コスト競争に敗れれば、“即破産!”の道を歩むことになります。尚、各社共通で被った強烈な経済的なインパクトは; A.2001年の同時多発テロ以降の航空需要の低迷と燃油費の高騰
でありまた、これを乗り切るために殆どの会社が; B. チャプター11(通称“破産法”;日本では“会社更生法”、“民事再生法”がこれに相当しますが、内容は日本と同じではありません)に基づく再建を米連邦政府に申請しました。米国ではパイロット、CA(客室乗務員)、整備士は極めて強力な職種別組合に加盟しており、労働条件の変更は極めて難しく、これがチャプター11による再建(⇔コスト削減)を目指す原因になっています
また、利益性の高い路線権の獲得、重複する路線の整理統合などの目的で; C. 企業の買収、経営統合を行うケースも目立ちます
1.昭和45年閣議了解(1972年7月1日/主に参入規制)
① 日本国内航空と東亜航空を合併させ、東亜国内航空を発足させる。この会社には当面ローカル線のみの運航を認める
② 需要の多いローカル線は2社で運航させるが、過当競争は排除する
③ 国際線定期便は日本航空が一元的に運航する
④ 近距離国際線チャーター便は日本航空と全日空が運航する
2.昭和47年運輸大臣通達(1972年7月1日) [事業分野]
① 日本航空:国際線、国内幹線(札幌、東京、大阪、福岡、那覇)
② 全日空:国内線、近距離国際チャーター便
③ 東亜国内航空:国内ローカルル線、一部路線のジェット化の認可 [輸送力の調整(共存・共栄の為の競争の制限)] 増便の認可基準を以下の通りとする;
④ 国内幹線: 搭乗率65%以上
⑤ 国内ローカル線:搭乗率70%以上
⑥ 国内幹線への大型ジェット機の投入制限(日本航空と全日空の大型ジェット機の投入は1974年以降とする。但し沖縄線は1972年から投入する) [協力関係] ⑦ 幹線に於ける運賃のプール制と先発企業による後発企業(東亜国内航空)の育成
[運輸政策審議会答申“今後の国際航空政策のあり方について”](1991年)
① 新運賃制度の導入:新Yクラス運賃(Y2);国際乗り継ぎ運賃;ゾーン運賃;基準運賃改定方式;国際貨物運賃につき包括的に幅を持って認可する制度の導入
② 多様な運航形態の導入:外国人パイロットの導入促進;運航委託;ウェットリース;コードシェア;チェンジ・オブ・ゲージ
[航空審議会答申“我が国航空企業に於ける競争促進政策の推進について”](1994年)
③ 技術規制の見直し:定例整備の海外委託;パイロット訓練のシミュレーター化促進)
④ 運航形態規制の見直し:ウェットリース、共同運送、コードシェア
⑤ 国内線競争促進施策の推進:後発企業への一定の便数の確保
⑥ 運賃規制の緩和:一定の範囲内の営業割引運賃の届け出制
<チャーター便規制関連>
1982年に制定されたルールでは、以下の3種類のみが認可の対象となっていました;
① 団体貸切(Own Use ):団体が一括して費用負担(⇔単一用機者要件)
② 団体貸切(Affinity):団体構成員が費用負担(⇔単一用機者要件)
③ 包括旅行(Inclusive Tour):地上手配を含め旅行会社などが航空機を貸し切りにすること
収入と費用が等しくなるところは、 Break Even Point(損益分離点)といいます。
損益分岐点以上の収入があれば利益、以下となれば損失が発生することになり、経営上最も重要な指標となります。なかでも、損益分岐搭乗率(Break Even Load Factor)は、日々の営業活動で営業の第一線で働いている人が最も意識する指標であり、また経営者にとっても収支の健全性をチェックする意味で、常に意識していなければならない経営指標です
損益分岐点:収入(実収単価x搭乗者数)=費用(席当り費用x全席数)
両辺を(実収単価x全席数)で割ると、
⇒ 搭乗者数÷全席数=席当り費用÷実収単価
⇒ Break Even Load Factor
C.コスト管理に係る経営指標(支出面)
1.航空機の稼働に係る経営指標:航空機の稼働率
航空機はエアライン・ビジネスにとっては必須であるものの、非常に高価な資産です。因みに、ボーイング社の最新の旅客機である787 Dreamliner であれば約230億円、エアバス社の最新のA350XWB であれば約300億円もします(参考:Airbus and Boeing Average List Prices 2017)。勿論、為替レートによって円表示価格は変わります。また、航空会社の交渉力(発注機数やエアラインの規模が大きな力を発揮します)が大きければ一般に開示されない値引きもあります。新規開発機種を最初に発注するエアライン(「launch Customer」といいます)は、更に大幅な値引きがあることが普通ですが、これは発注した新機種が、必ずしも人気機種になるとは限らないからです。大手エアラインはこうした「launch Customer」になることが多く、相当安い価格で入手しているといわれています。因みに、三菱航空機が新しく開発しているMRJの「launch Customer」はANAです
② 実施しなければならない作業項目のうち、運航に供されている航空機の駐機中に行われる作業は、特に整備のために運航を止める必要はありませんが、運航を長期間止めて整備する項目(重整備と呼びます)については、この整備のための引当機が必要になります(イメージとしてはマイカー車検整備中の代車のようなもの)。古い航空機、新しい航空機、機種、などで違いがありますが、これらを取り混ぜて、約5%の引当機が必要(⇔1年間365日の内、365日x5%→1機当たり年間18日は重整備のために運航できないことを意味します)というのが私の経験です。これは、航空機を20機保有していれば、その内1機は重整備引当機として確保する必要があることになります(→稼働できる航空機は19機となります)。これはとりもなおさず航空機の保有に係るコストの内5%は整備のために必要となることを意味します。極めて巨額ではありますが、必要不可欠であるということから、経営の舵取りとはあまり関係のない費用となります
③ 航空機は多くの部品で構成されており、定期的に交換される部品、故障のために交換される部品、等があり、エアラインとして部品交換のために航空機を運航から外すことは極力避けなければなりません。従って、こうした部品はスペア部品として保有しなければならないことになりますが、どの程度のスペアを持つか(スペア・レベルといいます)は、定時性や整備の持越し基準(整備によるキャンセル率と関連)をどうするかという経営判断の範疇に入ります。エンジンや降着装置など高額な部品の保有は高額な保有コストを招きますが、同じ機種を多く持つことでスペア部品の保有コストは相対的に低くすることができ、大手のエアラインに有利になる傾向があります